土曜は以前から約束していた所用があり出かけ(帰りにやはり少し熱が出ましたが予想内です^^;)、首都圏のある県の私立校の先生から、「東京(の学校)は大変ですよねえ・・・」というお声かけをいただきました。


ところで、教育を子どものためのものとして取り戻そうとしているご近所の方から、


「杉並って今どうなっているの?」

「つくる会の教科書採用は良くないけど、がんばってもいるんだよね?」

「だって、先生の民間からの活用などが盛んだものね?」


という話が出ることがあります。


・・・そうしたとき、思いきり高速で首を横に振らざるを得ません。


そのひとつの典型例として、先日より、


「専門的なことは分からないけど、杉並区教育基本条例提言はなんだか気持ちが悪い」


というお話を聞いていました。


その条例提言では、国力の強化(と、そのための「人づくり」)、家族の役割の強化、規律・・・など、一見すると正しそうに見えて、しかし教育に持ち込まれたとき本当に恐ろしいものとなりうる概念が言葉として並んでいます。


まず、この杉並区教育基本条例提言がどれほど復古的で、人の内心に立ち入るものであるかについて、「つくる会」の教科書採択に反対する杉並・親の会 のブログでも題が挙げられています。


07/11/12

教育基本条例なんていらない!』

(ぜひお読み下さい)


あの悪夢のような、教育基本法の強行採決による改悪から1年経ち、このような形で、改悪教育基本法の理念、あるいは教育勅語に沿ったとすら言える内容を盛り込んだ条例が公然と提出されている、といった趣旨の指摘はまさにわたしも思うところです。(この9月にリリースされ年内成立を見据えているそうです)


本文はこちらにあります。


杉並区公式サイト

区政資料 > 会議録 > 教育 > 杉並区教育基本条例等に関する懇談会


教育基本条例等に関する提言 (PDFです)


以下に、「人づくり」に愛国心を鼓舞するかのように(わたしにはどうしても)読み取れる箇所を示します。


(クリックで拡大します)
杉並区教育基本条例提言から


杉並区議のすぐろ奈緒さん(無所属: あの教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会「あんころ」 でおなじみのすぐろさんです)のブログにも、この条例の問題点を示す詳しい説明があります。


すぐろ区議の『 すぐろ奈緒の「もっと政(まつりごと)!』

2007年09月27日 「教育基本条例」の提言


区長の諮問機関である
「杉並区教育基本条例等に関する懇談会」
が提言をまとめました。
10月1日の文教委員会で報告されます。


昨年12月に教育基本法が「改正」されましたが、
この提言もまさに新教基法に沿った内容で、復古的
かつ新自由主義を目指しつつ、地域や家庭、個人の心に
まで踏み込んだものになっています。
憲章や宣言ではなく、あえて条例にした理由は
法的拘束力を持たせるため。
教育=「人づくり」と定義されていて
「人づくり条例」という名称にしたいとの意見も。
そもそもの教育の認識に強い違和感を感じます。


この『教育基本条例』が成立することになれば
全国初となり、他の自治体に影響を及ぼすことになります。
こんなに重要な条例なのに、今年度中には成立を目指しています。


杉並区民の方はもちろん、区外の方も
ぜひ今後の動きに注目してください。

(略)

同じく、杉並区議である小松久子さん(生活者ネット)の情報によれば、当初は、子どもの権利条約の理念に沿って作られようとしていた提言が、いつしか経団連的な枠組みでの人づくりにさしかえられているようで、その審議プロセスも異なる、ということです。


(引用の中の強調色は原文ママ)

2007 年 10 月 17 日    
教育基本条例は策定を急がないほうがいい ~決算特別委員会の議論より ①~


(略)

このなかに「『杉並の教育を考える懇談会提言書』(H13年3月)に示された内容を基礎として」とあるので、4年前の資料を引っぱり出して開いてみて、・・・驚きました。基礎にしては、あまりにも印象が違いすぎ。まったく別物です。

一番違うのは「21世紀こそ、子どもの世紀に」という章を設けて、
子どもの立場から20世紀を世界的に振り返ってみると、その最大のものは「児童の権利に関する条約」が1989年に国連で成立したこと
と述べ、子どもの世紀にするために基本に置くべきものとして 
子どもの権利を認めたことにより、新しい子ども観の時代になる 
と第2番目に「権利」を指摘していることです。ちなみに1番目は「共生(共に生きる)」「自然と共に生きる、異文化の人と共に生きる、男女共に生きる・・・」。

区の資料の中で、こんなに「子どもの権利」という文言が出てくる文書を私はほかに知りません。ここでは子どもを「権利の主体」と明確に位置づけています。

提言をまとめるまでのプロセスも違います。傍聴者から意見を聞き、小中学校の子ども集会や生徒会サミットに参加し、保護者アンケートをとるなどして当事者の幅広い意見を聴取しています。このときの会長は小林登さんという、小児科医でした。

それに対し、今回の提言では「人づくり」が教育と同義語で、キーワードです。何かに役立つ「人材」を育成することが教育、と言っているようなのです。

子どもの権利条約 を、世界で158番目に、「いやいやながら」(管理人感想)批准した日本らしい、子どもの権利の骨抜きぶりで、この変わり身は人をばかにしているとしか言いようがありません。


こちらは国政レベルですが、同じような当事者(子ども)不在の進め方については、以下のような事例がよく知られています。

(このことに該当する事例は、たまたま、知人のご両親が事実婚だったことで8年ほど前に大変に苦労されていたのを周知していました。)


岩波新書(10月の新刊) 『家族と法 』から一部引用

p.11


 日本では、1996年2月に法制審議会が答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」(以下、民法改正要綱と略する)において、婚外子の相続分差別廃止が既定されたが、未だに成立していない。政府な右のような(管理人注: 国連・規約人権委員会、子どもの権利委員会からの)勧告にも耳を貸さず、現行法維持が多数意見であるという世論調査の結果を引用する。しかし、この反論は規約人権委員会で厳しく批判された。少数派の人権保障は、世論の多寡で決められるものではない。むしろ世論が反対すればするほど、少数派に対する抑圧は多きのだから、法制度で少数派を守る必要がある。

多数決似非民主主義と、法が本来あるべき姿について端的に明らかにされていると思います。


子どもに「多数派」であることしか許さない杉並の教育基本条例成立に反対です。


◆参考情報: 教育基本法改正情報センターのサイトから

「「希望の国、日本」日本経団連 2007年1月1日(教育関連部分抜粋)」



◆また、以下は杉並区の取り組みに対する参考記事です。

日経 <先望鏡>”教師の卵”養成塾人気、現場知る実践学がカギ
2007/10/29配信
 いい教師になろう――教育現場で自ら先生の“卵”を育てる試みが本格化した。京都市教育委員会が開講した「京都教師塾」がそのモデルだ。対象は小中学校教員志望の大学生ら。今秋第2期の塾開きをし、関西では堺市教委や滋賀県教委にも広がった。背景には団塊世代の大量退職をにらみ、いち早く優秀な人材を引き付けたい狙いがある。ただ大学側とは事情が異なり、すんなりスクラムをとはいかないようだ。

    □       □

 6日開講した京都教師塾は予想以上の人気だ。300人の定員に658人の応募があり、最終的には606人(昨年は551人)が入塾。多くは大学3年生が占めた。期間は10カ月。現場教師らの実践学講座や実地研修などが魅力で、今年の市教員採用試験で1期生の合格率が他の受験生の約2倍だった成果も人気底上げにつながった。

 塾旗揚げの1番の理由は教職志望者の実践指導力強化と層の拡大。例えば市小学校教員の採用数は2ケタ台が多かった90年代から一転、この3年来200人超の規模に膨らみ、10倍以上の倍率が3、4倍に。都市部の教育委員会はどこも同様の傾向にあるが、中には3倍を割り込む政令市も出て、一挙に危機感が表面化。京都市教委は昨秋、同じ先発組の東京都教委や東京・杉並師範館の方式と異なり、大規模定員で教員採用時に特別扱いしない独自の塾創設に踏み切った。

 「教員は現場が生命線。仕事は多忙かつ激変しており、きちんと実情把握していないと戦力にならない。大学の教職課程で単位取得して免許を取るだけで即、教師になれる時代は終わった」。門川大作・京都市教育長はこう言い切る。初等課程だと教育実習は通常4週間。ボランティアなどで学校現場を体験する手もあるが、欧米各国と比べ、教育実習は極端に短い。

 ただ、今は携帯・ネット社会で育つ児童らと向き合うにはベテラン教師でも絶えず研修が必要な時代。ノウハウ伝授が難しく、「オン・ザ・ジョブで先生やその卵を養成する学校現場自体の力が弱まっている。足元強化こそ急務」と岩田貢・龍谷大教授は指摘する。

 それに教職専攻科のない大学は所属学部のカリキュラム重視。授業で基礎体力をしっかり身に付けることが、将来いい教師になる条件との見方も大学関係者には根強い。学生は受験技術に走りがちで、授業より塾優先が心配というわけだ。

    □       □

 日ごろから教師が大学の教壇に立ち、教授も学生も学校現場に出向く。そういった体系的な仕組みがあれば実践力も現場感覚もそう問題にならない。「理屈でいじめや不登校は解決できない。教師塾が投じた一石は大きく、大学は学校との交流を含め現場重視に変わらざるを得ない」。陰山英男・立命館小学校副校長はこう先行きを予測する。

 教師の質が叫ばれながら、採用試験は民間の就職戦線がほぼ決着した7、8月。最近では景気の追い風を受け教職志望者が企業に流れる傾向に一層弾みが付く。いち早く人材を呼び込む教師塾はこうした風潮に待ったを掛けた。就職戦線を考えるうえでも、波紋がどう広がるか見守りたい。
(編集委員 佐藤徳夫)


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