今から2年前の2013年3月28日に、就任直後の黒田東彦日銀総裁が参議院の財政金融委員会に出席しました。そこで黒田総裁は、2%の物価目標を達成するためには、「大胆な金融緩和継続に対する強いコミットメントが必要」と述べ、金融緩和の必要性を訴えました。
それから2年立ち、黒田総裁はご存知の通り2度に渡る「異次元の金融緩和措置」を行いました。先月末に行われた日銀の金融政策決定会合では、議事録はまだ公表されていないものの、「(物価上昇率が)2%程度に達する時期は、(中略)2016年度前半頃になると予想される」と述べています。
世に言うところの「そば屋の出前」に聞こえてしまうのは気のせいでしょうか?黒田総裁は金融政策で2%の物価上昇はやれると踏んだわけですが、思うようには行きませんでした。一度総括すべきではないかと思います。
というのも、なぜ2%の物価上昇率が達成されていないかと言えば、難しい話は抜きにして、国民の実質所得が上がっていないからです。増税と物価上昇に比べて所得が伸びなければ、当然消費も伸びません。消費が上向かなければ需要が増えないため物価は上がらないのは当然です。安くしないと売れないからです。
大企業はベアアップ、満額回答と勇ましい雄叫びが聞こえるのですが、結果的には大企業と中小企業の格差が開いただけに過ぎません。大企業から中小企業への下請け価格が上がっていれば話は別ですが、マクロ的に見てそうではないことは結果が物語っています。
2%の物価上昇は達成せず、一方で日銀の国債保有高はうなぎのぼりです。黒田総裁就任時には保有高は85兆円で当時それでも過去最高と言われましたが、最新のデータでは225兆円を超えています。
私は、結果的にこの2年間の日銀の国債の大量買入れは、物価上昇ではなく実質的な財政ファイナンス(中央銀行が国の国債を直接買い受けて資金供給すること)をもたらしたと総括すべきと考えます。