白装束と歴史修正主義 | ほたるいかの書きつけ

白装束と歴史修正主義

まだ読み途中なのだが、幾つか「えっ」と思ったことがあったので、ご紹介。
だまし博士のだまされない知恵/安斎 育郎
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先に章立てだけ書くと、
I. 「エセ科学」の系譜
II. 霊能・占いの系譜
III. 詐欺の系譜
IV. 楽しみとしての騙しの系譜
となっている。元々は、「上方芸能」誌に掲載された文章をまとめたもので、血液型性格判断(次回エントリで取り上げたい)は1993年、このあと取り上げる白装束団については2003年とやや古い。しかし、内容的には充実している。

第1章では、マイナスイオン、白装束団、そして血液型性格判断が取り上げられている(2章で江原啓之にも触れている)。そのうち、白装束集団と歴史修正主義グループとの関わりが述べられているので、メモがわりに書いておきたい(ただし、「俵義文氏らの情報を総合すると」となってはいるが)。

白装束集団はパナウェーブ研究所という団体に属しているが、「スカラー電磁波による攻撃」を受けたと主張しているようにあからさまなトンデモである。このエントリを書くために初めてパナウェーブ研究所の web site をのぞいてみたが、まあ頭がクラクラするようなことが満載である。電磁場のベクトルポテンシャルが「スカラー波」だそうですよ。しかも「この(重力)ポテンシャルこそがスカラー波である」なんて書いてある。電磁場がいつのまに重力場に?
船井幸雄の「人間の魂が八次元まで行けるのは、魂の波動が電磁波ではなく重力波だからといえるでしょう。重力波はレベルの高い波動で、電磁波の十億倍のスピードで走ります。つまり光の速さの十億倍ですから、宇宙の果てまでわずか二秒で行くことができると考えていいものです。」(「波動で上手に生きる」)に匹敵するムチャクチャですわな(ちなみにこの文章、間違ってないところがないというある意味凄い文章ですね。普通はこんなの書けない)。

…ちょっと脱線した。このパナウェーブ研究所と密接な関係があるとされるのが「未来政経研究所」。国際勝共連合の機関紙「思想新聞」に、高橋正二(世田谷郷土大学学長)なる人物の講演内容が掲載されていて、「有事法制をつくれ」などとならんでスカラー電磁波対策に触れられているらしい(ちなみに高橋正二氏、陸士48期で三笠宮と同期だそうです)。

「未来政経研究所」は歴史修正主義グループと密接な関連を持つ。例えば、「日本歴史修正協議会」(鈴木彰英氏や深田匠氏を会長とする。田中正明の弟子筋で組織)が開催した田中正明や藤岡信勝らを講師陣とするセミナーの後援団体に、産経新聞や自由主義史観研究会と一緒に並んでいる。他にも「新しい歴史教科書をつくる会」との関係も指摘されている。

彼らがどこまで意図したかはともかく、パナウェーブ研究所のようなニセ科学団体がメディアを席捲し、有事法制のような日本と世界の未来にとって重要なことが脇にやられ、結果として右傾化が進むという構造が明瞭にある。ニセ科学とメディアの関係の別の側面として、注意しておくべきポイントではないかと思う。

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なお、パナウェーブ研究所と歴史修正主義グループとの関係については、ネット上では色々指摘されているようです。安斎氏のもともとの記事は、上にも書いたように2003年ですので、(どれくらい加筆されたのかわかりませんが)割と以前からこのような指摘はされていたのだと思います。とはいえ、重要だと思うので(というか自分のメモということですが)ここに記す次第です。

パナウェーブ自体は、思想的にはあまり大きい影響は与えていないと思うが、船井グループや江本グループの主張には随分と右翼的なものが含まれていると思う。そういったことも取り上げて行きたいと思っています。