日本でもハリウッド版ゴジラの公開が始まりました。
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このハリウッド版ゴジラの製作を手がけたのはアメリカに2005年に設立された「レジャンダリー・ピクチャーズ(Legendary Pictures)」という映画会社です。歴史の古いハリウッドに於いては十分”スタートアップ”と言える新しい会社なのですが、驚くべきことに手がける映画のほとんどがヒットし批評家や映画ファンからも高評価という打率の高さ。以下は設立後に手がけた映画ですが…
バットマン ビギンズ(2005)
スーパーマン リターンズ(2006)
レディ・イン・ザ・ウォーター(2006)
アントブリー (2006)
ビール・フェスタ 無修正版 ~世界対抗・一気飲み選手権(2006)
マシュー・マコノヒー マーシャルの奇跡 (2006)
300 (2007)
紀元前1万年 (2008)
ダークナイト(2008)
ウォッチメン(2009)
オブザーブ・アンド・レポート(2009)
ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い(2009)
ブライアン・シンガーの トリック・オア・トリート(2009)
かいじゅうたちのいるところ(2009)
ニンジャ・アサシン (2009)
タイタンの戦い(2010)
ジョナ・ヘックス(2010)
インセプション(2010)
ザ・タウン(2010)デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~(2010)
エンジェル ウォーズ(2011)
ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える(2011)
タイタンの逆襲(2012)
ダークナイト ライジング(2012)
ジャックと天空の巨人(2013)
42 ~世界を変えた男~(2013)
ハングオーバー!!! 最後の反省会(2013)
マン・オブ・スティール(2013)
パシフィック・リム(2013)
300~帝国の進撃~(2014)
GODZILLA(2014)
こうしてざっと見ると「怪獣映画」「アメコミ映画」「特撮映画」「バカ映画」とオタクに優しい作品がレジェンダリー・ピクチャーズの強みであることが見えてきます。あとたまにアニメとか実話を基にした伝記映画とか。また同社CEOのトーマス・タル氏はプロデューサーとしても作品に関わり資金調達も自身で行うアクティブな人で、メディアに取り上げられる発言も何かとアツく「この人も相当オタク趣味をこじらせてるな」ということが伺えます。例えばこのインタビュー記事では…
「私は子供の頃に愛していたもの、一生涯愛し続けるものを映画にしている。バットマン、スーパーマン、ウォッチメン、300、我が社はまさに私が観たいと思う映画を作っている。私は一生涯を通じてゴジラの大ファンだ。指針はただひとつ。観たいものを作ること。初めてギャレス・エドワーズを家に招待した時、我々は54年版ゴジラを一緒に観て、ゴジラとは何かを何時間も話し合った。」
こいつは信用できる。英文でも読んでいて分かりますw
ところがこのトーマス・タル氏、意外にも映画畑出身でもなければクリエイター畑出身でもなくビジネス畑出身の人です。氏はニューヨーク・エンドウェルの母子家庭に生まれ、オタク趣味に染まりつつも野球やアメフトに打ち込み、アメフトのスポーツ奨学生としてハミルトンカレッジに入学。当初は弁護士になるつもりでしたが途中で断念し、その代わりビジネス分野に進みコインランドリーのチェーン展開を始めます。そこで稼いだ金を元手にさらに金融・株業界にも進出し、経営危機に陥っている会社の債権や株式を買い取って実質的経営権を握り、会社を再生させてからまた高値で売るという所謂”ハゲタカファンド”を始めます。そこで様々な会社と出会い、やがてConvex Groupというエンタメ企業のプレジデントに就任したことにより「オタク趣味」に改めて向き合うこととなり、2005年に稼いだ金を全突っ込みする形でレジェンダリー・ピクチャーズを設立します。
こうしてまとめていて気付いたのですが、「夢の実現のためにまず金を稼ぐ」という彼の経歴はトロイア遺跡を発掘したシュリーマンによく似ています。「遺跡発掘したい→考古学者になろう」(映画を作りたい→クリエイターになろう)と考えるのではなく、金を稼いで”場”を作り、有能な人材を見つけ、仕事を割り振って任せるという方法。結局何をやるにせよ金は必要で、金はあればあるほど良い。それをちゃんと理解できる「金勘定ができるオタク」が映画を含む今後のエンタメ業界には必要なのではないでしょうか。
それにしても調べれば調べるほどトーマス・タル氏の経歴と手腕は見事です。稼いだ金を怪獣映画とアメコミ映画と特撮映画とバカ映画に全突っ込みするなんて成金の鏡!日本の成金も見習え!こういう人と会社が成功する映画業界であって欲しいと心から思います。- S.H.モンスターアーツ ゴジラ (2014)/バンダイ
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