日本の教育予算の貧困さは、どうやら高校無償化した程度ではOECDの標準的な水準にも追いつかないようです。
OECD:教育への公的支出、日本最低、家計負担は重く
毎日新聞 2010年9月7日 19時29分
経済協力開発機構(OECD)は7日、加盟各国の教育に関する予算や政策などのデータを比べた「図表でみる教育10年版」を公表した。07年の国内総生産(GDP)に占める、教育機関に対する公的支出の割合はOECD平均が4.8%。これに対し、日本は3.3%と比較可能な28カ国中最下位だった。
日本は06年がワースト2位、05年が最下位と毎年低迷している。公的支出の割合が最も高いのはアイスランドの7.0%で、以下、デンマーク(6.6%)、スウェーデン(6.1%)と続き、北欧諸国の教育に対する積極投資が際立った。
一方、日本の教育支出に占める家計負担(授業料など)の割合は、OECD平均(17.4%)の2倍近い33.3%で、24カ国中4番目に負担が重かった。特に幼稚園などの就学前教育段階(56.2%)と、大学などの高等教育段階(67.5%)の家計負担が重い。
日本以外に家計負担が50%を超えたのは、就学前教育段階がオーストラリア、韓国の2カ国、高等教育でもチリや韓国など5カ国だけだった。
また、08年の小学校1クラス当たりの児童数(OECD平均21.6人)を比べたところ、データがある27カ国のうち、日本は韓国、チリに次いで3番目に多い28人だった。中学校の生徒数(同23.7人)は33人で、韓国に次いで23カ国中2番目に多かった。
民主党は野党時代から「OECD並み教育の実現」を掲げ、今年度から高校無償化を実現したが、今回の調査結果に政権交代後の施策は反映されていない。OECDは「他の多くの国でも教育支出が増大しており、日本の政策変化が反映されてもOECD全体での相対的な位置がどうなるかは分からない」としている
菅政権はせっかくの高校無償化政策の一方でこんな愚挙をやろうとしているところからも、依然として政府は国家の教育への投資を軽視していることがよく分かります。
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土佐のまつりごと成長の原動力である大学が、一律カットで存立の危機菅政権が「無駄削減」として各省庁一律で2010年度比1割削減する方針をうちだしたせいです。
これは「無駄削減」ばかり叫ばれるとこういう大事な分野にしわ寄せが来るという証左でもありますね。
教育に公的支出を多く割き、誰でも高等教育を受けられる権利を保障することによって、全ての子どもは自分の人生を切り開ける可能性が広がるし、国にとっても優秀な人材を埋もれさせないメリットがあります。
教育は国が成長する知的基盤への投資でもあるのですから、教育への投資を渋るということは国の将来の成長は先細りになっても構わないということです。
しかし今も尚政府は、全ての子どもの学ぶ権利を保障することよりも、未来に投資して長期的な利益を計ることよりも、目先の利益(予算削減)の方が大事なようです。なんとも近視眼的で、お粗末な政治判断ですね。
今や貧困ビジネスと化している日本の奨学金制度が改善されないことにも、教育の公的支出の貧弱さが現れています。
確か民主党は奨学金も給付型にするってマニフェストで言ってなかったっけ?
政権交代直前の民主党の政策討論会で、直嶋さんが子育てだけでなく子育ちにも力を入れると力説していたのをふと思い出しましたが、今は昔の虚しさを感じます(しみじみ)。
では日本の教育に対する公的支出が如何に貧困か、スウェーデンと比べてみましょう。
(
スウェーデンの教育を見てみよう~その1・高校教育無償化によせてにも記してあります。)
スウェーデンはじめ北欧では、幼稚園、小学校、中学高校、大学に至るまで全て入学金、授業料とも無償です。
それだけではなく、必要な学用品(鉛筆、ノート等)、給食費、交通費も無償です。遠足等の行事の自己負担分も少なく設定されています。
大学では何と留学生まで学費無料で奨学金制度もあるようです。
勿論留学生は税金を納めていないのですが、それでも授業料無償の恩恵にあずかることができるので、スウェーデンの大学は留学先として人気が高いようです。
(税金を払っている永住外国人の高校無償化に反対するどこぞのケチくさい国とは大違いですね)
家庭が貧困だから学校へ行けない、というのは北欧では考えられないことです。
どんな人間にでも医療と教育は平等に無償で行き渡るよう努力するかどうかは、その社会の民主主義度や文化的精神的な成熟度を現すといえるでしょう。
日本は残念ながら文化的精神的成熟度がOECDで最下位と思われます。
日本の政府の教育費支出に対する意識はとてもお粗末なのですが、市民レベルでも「学費は全て無償であるべき」という意識が行き渡っていないことは残念だと思います。日本では、家庭が貧しい子は大学に行けなくても我慢すべきだと考えている人が過半数なのです。
この意識の低さは、高校は義務教育ではないのだからと無償化に反対する人が少なからずいることにも繋がっていると思います。
「教育(大学の高等教育も含む)は全ての国民に等しく手厚く保障されるべき」という意識が広く市民レベルで共有されれば、国の教育予算をアップさせる後押しになりましょう。
民主党は子ども政策の目玉として子ども手当にこだわってきました。以前も書きましたが、現在の日本では、子ども手当は裕福な世帯では単なるおこづかい、貧しい世帯では生活費又は貯金に消えてしまう可能性が高いです。
それよりも同じやるなら待機児童解消、教育予算増額のほうが、よほど子育て支援、子育ち支援に効果的ではないでしょうか。
(ちなみに
子ども手当にはこんな穴があることを村野瀬玲奈さんが指摘していらっしゃいます)
繰り返しますが、教育への公的支出の貧弱さはそのまま、文化的精神的に未熟であることの現れだと思います。政府はOCED最下位の汚名を返上すべく、最大の努力をすべきです。
予算がないというなら、大企業や金持ちに増税すればいいのです。
大企業や金持ちに増税しないのなら、例えばミサイル一つ、戦闘機一機を「仕分け」すればいいのです。それだけでどれだけ浮くのかちょっとわかりませんけれど・・
菅総理も小沢氏も無駄を削るのが大好きなようですから、毎年なんかかんか軍事費を削ってそれを教育の予算に回してみたらどうですか?
それで国防上何の支障も出なければ5兆円も軍事費に割く必要など無いのだということも証明できて一石二鳥でしょう。
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