比例議員定数削減は行うべきではない、というのは既に色々なブログで述べられています。
ここでは自由法曹団の意見書をリンクしておきましょう。少し長いのでお時間のあるときにじっくり読んでみてください
◆
自由法曹団の意見書より
・
衆議院比例区の定数削減案を批判する (1995/5)・
衆院比例定数の削減に反対する(2010/1/19)何故国会議員の定数削減がいけないか、簡単に要点だけまとめておきますと、
・国民の人口比で見れば国会議員数は決して多くない。議員数を減らすことは多様な民意を反映しにくくなってしまう。
・民意を反映するには小選挙区より比例代表の方が優れているのであるが、その比例代表の定数を削減し相対的に小選挙区選手議員を増やすと、少数政党に不利、大政党に有利になり、少数の民意の切り捨てに繋がる。
という問題点があり、多数による少数の抹殺になりかねません。
赤旗が分かりやすいので、それもこちらにリンクしておきましょう。
◆
比例定数削減公約 民主主義を土台から壊す暴挙 2009年8月2日(日)「しんぶん赤旗」
さて、このエントリーは議員定数削減について騙されて賛成しちゃう人用に書いています(何しろ記事題名が「騙される側の論理」ですから)
消費税は自分の財布に直結しますから増税を仕方ないかもと半ば諦めながらも、できれば辞めて貰いたい、やはり抵抗がある、と言う人が多いのではないかと思われます。(菅内閣の支持率が下がると同時に消費税反対が再び増えたようです)
しかし、国会議員の定数削減は財布に直結しない、いわば他人事ですから、それほど真剣に考えずに賛成に回る方が多いのではないでしょうか。
Ⅰ. 「国民の皆様の血税を無駄には使いません」なんていうフレーズに大概の人は弱いものです。事業仕分けが人気だったのと同じように公務員仕分けも根強い人気があります。
「議員自らも痛みを分かつ」にまんまとひっかかっている人も多いと思うのですが、それは、不況のどん底で安定した身分保障がある公務員に対するルサンチマンが根底にあるからではないでしょうか。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-39.html
公務員は怠けていても給料をもらえる税金泥棒、みたいなステレオタイプなイメージがなんとなく世間にはあります。
公務員の安定した地位を「既得権益」と、あたかも悪しき慣習のように呼び、この不況で民間は苦しんでるんだから、たくさんの公務員が我々の税金でのうのうと高い給料を貰えるのは、血税の無駄使いである(実際はそんなに高くもないのですが)。公務員だって給料カットされ、民間とともに同じ苦しみを味わうべきだ、という意識が底流にあります。
しかしこれ、ぶっちゃけていえば、
「俺たちは損してるのに、あいつらだけ・・ずるい!」という、日本人に特徴的に見られる妬み、ひがみに他ならないと思うのです。(バブルの頃は、それこそ民間は高給取り、公務員は給料は一定でうだつが上がらず見下されがちだったのではなかったっけ?)
だから公務員削減は国民にウケがいいのです
後で掲載するYahoo!意識調査のコメントには
「仕事が亡くなった。即人員削減。契約を打ち切られた。失業者が増えた。国会議員だけ人員削減が無いというのは、間違っている。」
なんていうのもあって、いくらなんでも筋の通らない八つ当たりとしか言えません。気持ちはわかりますけど(^^;
『結局公務員の数や人件費の削減は、公共サービス低下に繋がり、結局私達自身ののクビを絞める結果になるのです。』と私は書きましたが、やはり国会議員の定数削減も結果的に国民自身のクビを絞めることになります。それを以下で見ていきます。
Ⅱ. 公務員削減には溜飲を下げた気分になるかもしれませんが、「美味しい話には裏がある」ではありませんけど、ちょっと立ち止まって、本当かな?と疑って考えてみることをお勧めします。
例えば、議員数を削減して全体として歳費は減るのは歓迎だけど、議員が減って何か弊害はないのかな?とか、
削減するとしても色々方法があると思うのだけれど、政府が言ってる削減の仕方でいいのかな?
というように。
現に公務員のリストラに関しては「怠けていても給料をもらえる税金泥棒」どころか民間並みの「官製ワーキングプア」の問題も深刻ですから、公務員である議員が減るのは良いことだと決めつけるべきではありません。
議員定数削減についてのYahoo!意識調査(2009年5月25日~2009年6月4日)をご覧下さい
正確な世論調査にならないネットアンケートであることを差し引いても、やはり世論は議員定数削減に好意的な向きがあるようです。
何故議員は減らした方が良いと考えるのか、その理由はと言えば、
1.国民の人口に対して人数が多すぎる
2.人件費が高いし、その高い人件費に見合った仕事をしていない。
この二つになると思います。
では、この二つについて考えてみましょう。
Ⅲ. 1については完全にデマです。日本は人口比の国会議員数は少ない方なのです。このデマは比例定数を削減(あえて「議員数の削減」とはいいません)したいがための口実です。
上脇教授のブログにある棒グラフを見てください(後程ご紹介するたかしさんのブログにもあります)
一目瞭然ですね。
当たり前ですが、国会にはできるだけ民意が反映されなくてはなりません。
多様な意思を議会に反映させようと思ったら、元老院みたいにたった3人の議員で議会を開くのと、30人、50人、100人で議会を開くのと、どちらがより議会に民意が反映されやすいか想像はつくと思います。人数を少なくすれば民意が反映されにくくなります。
次に、議員の定数を削るのなら、何故小選挙区の方でなく比例定数の方を削るのでしょう?この削り方でよいのか、疑問に思ったことはありませんか?
政党制を前提とした現在の議会では、死票が多くでる小選挙区制より比例代表の方がより民意を反映できますから、もし削るなら小選挙区制の方を削るべきとするのが理にかなってるのは明らかでしょう。しかし政府は断固比例の方を削ろうとしています。
Ⅳ2.議員の人件費が高いこと、高い人件費に見合った仕事をしてないことについて
衆議院議員の給料は
こちら。
諸経費の仕組みなど詳しいことはわからないので、私にはこれが高いのかどうか判断することはできませんが、もし仕事の割に給料が高いというのなら、民意の反映は確保しなくてはなりませんから、人数を減らすのでなく一人頭の給料を減らすべきではないのでしょうか?
それに血税を無駄にするなと言うなら、税金から支払われる政党助成金制度をまっ先に辞めるのが筋でしょう(政党助成金は違憲の疑いが濃く、違憲訴訟が起こされています。詳しくは
こちら)
上脇教授のブログにある政党助成金の円グラフをご覧下さい。2009年に民主党は118億3200万円、自民党は157億3300万円の配当額です!!それこそ‘民間では’こんな豊富な助成金はもらえません。
また、たかしさんの次のエントリーも参考になりますので是非ご一読を。
◆
たかしズム「ネトウヨ、バカウヨ、ネット右翼、恥さらし、売国奴、日本の恥」を語るための、たかしのブログ「議員定数」の罠より
(引用開始)
国会運営費の「無駄」と議員の数は実際何の関係もない。たとえば「政務調査費」だが、これは政党によって扱いが違う。たとえば共産党の場合、「歳費」も含めていったん党が吸い上げる制度になっている。議員の生活費は党からの「給与」としてあらためて支払われる。議員は職務上使った経費を領収書で提出し受け取る。党則でそうなっているのだ。だから、共産党国会議員の経費はガラス張りで、国会活動に「限られる」。しかし、自民党の場合「政務調査費」は、はっきり言えば一般企業の「渡し切り交際費」と同じである。現行法では使途は追及されない(党の監査など「勿論無い」)システムであるから、節操なく個人の「生活費」「遊興費」に流用され、または個人の「蓄財」として消えていく。そもそもこういった「無駄」が「無駄」の本質なのであって、単に議員の数が問題なのではない。(引用ここまで)
「人件費に見合った仕事をしない」については、「国会では居眠り、ヤジ、口げんかとレベルが低い。勉強不足でろくに法案の内容も知らずに採決する。まともな仕事しないで高い給料がもらえるなんてけしからん、議員なんかいらん」という意見が根強いです。
しかし議員削減で仕分けされるのは居眠りしている議員とは限りませんよ!熱心に討議してる人がいなくなるかもしれず、居眠り常習犯が残るかもしれないじゃないですか。これは人数を減らして解決することにはならないでしょう。
また、仕分け後に残ってる議員が政党助成金を辞めもせず歳費でキャミソールを買ったり、内閣官房費を湯水のように使うのならば、何のことはない、結局小選挙区で居残った当確議員ばかりが今までと何ら変わらないカネの使い方をするだけで、何の痛みも分けあっていないではないか、ということが見えてきます。
議員も痛みを分かつと言うなら、莫大な政党助成金をやめ、政治とカネ(企業献金)の問題をなんとかする、官房機密費を公開する、など、「黒いカネ」を何とかする誠意も見せてもらいたいものです。
このように少し踏み込んでみてみれば、Yahoo!意識調査で端的に述べられていた次のコメントのとおりだと言うことがおわかりいただけるかと思います。
人件費の高さは議員報酬を減らせば改善できる。
人口に対する議員数は先進国ではかなり少ないほうである。
議員の働きは定数を減らしたから改善されるわけではない。
実のところ議員定数削減は感情的満足を得るためのものでしかない。
そしてその結果、大政党ばかりが得をし、多様な民意が国会に反映されない選挙制度になってしまうのです。一旦そういう制度になってしまったら、得をする大政党が元に戻そうなどするはずがありません。
一種の公務員叩きである議員定数削減という飴になんとなく満足してるうちに議会制民主主義は危機に瀕してしまいます。代償が大きいとは思いませんか?
残念ながら現在までの所、政府というのは肝心なことについて、隙あらば国民を騙しにかかってくる信用のおけない存在と思っておいた方がいいようです(つまりそれだけ民主主義が成熟していない、治者と被治者は乖離している、ということですね)
だから政府がもっともらしく述べる理由は、一度は疑ってかかった方がいい。消費税なら、ホントに社会保障費に充てられるのか、とか、定数削減なら、これおがホントに公務員たる議員が身を削ることになるのか、とか。
消費税にしろ比例定数削減にしろ、ちょっと具体的な部分にまで踏み込んで調べてみるだけで、それが嘘であることは見破れます。
ちなみに、
騙される側の論理~消費税の場合でも述べたように、詐欺にかからないようにするためには情報が必要です。
民主党がお手本にしようとしている小選挙区制の“母国”といわれたイギリスでは、小選挙区から比例代表への見直しが始まっています。(ブログ「上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場」より、
小選挙区制の母国イギリスがその見直しへ!)もしここで民主党が「イギリスをお手本にして」と言うのなら、比例代表議員こそ増やさねばなりませんね(笑)
政府の詐欺に騙されない国民でありたいものです。
- 関連記事
-