Ａｆｔｅｒｎｏｏｎ　Ｃａｆｅ

以前こねこさんにお約束しました「日米同盟」という言葉について少々思うところを書いてみたいと思います。

「日米同盟」という言葉が当たり前のように使われるのをよく聞きます。
鳩山総理は２６日の所信表明演説で「緊密かつ対等な日米同盟」を明言しており、
参議院本会議では自民党から「日米同盟のありかた」を質問されて、「日米同盟は日本外交の基軸だ。日米安保条約が改定され５０年という節目の年を迎える。新政権として日米同盟のあり方全般の包括的なレビューをしたい。レビューを通じて、中長期的な視点に立って日米同盟を重層的に進化させる」と答えています。

ついつい何の疑念も持たず聞き流しそうになりますが、この「日米同盟」という言葉、クセモノだと思うのは私だけでしょうか？。

この「日米同盟」とは日米安保条約のことを指しているのですが、以前は政治家もマスコミも日米安保と言っており、日米同盟とは言ってませんでした。
いつの間に取って代わられたのでしょう？

これに関してこねこさんがいつもながらコメントで鋭い指摘を下さったので、転載します。こねこさん、いつもありがとうございます。（鍵コメだったので私しか読めないのがもったいなかったです^^;）

（引用開始）ところで、日米安保は本当に「軍事同盟」なんでしょうか。
そもそも同盟、というだけでそもそも軍事的な要素を含むもののようです。
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E5%90%8C%E7%9B%9F%EF%BC%88%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B3%95%EF%BC%89/

同盟とは、要は締結国が戦争状態に入ったら、お互いに手助けしましょう、というものですが、日米安保の場合、日本にその義務はありません（集団的自衛権は現在のところ違憲です）。

日米安全保障条約全文
http://www5b.biglobe.ne.jp/~USPinfom/anpo1.htm

条文を読む限り、第五条にそれらしき記述がありますが、それも「日本が攻撃を受けたとき、それぞれの憲法に従って、危機に対処しよう」と言うだけで、ただちにアメリカ軍が応戦する、という規定にはなっていません（これが、「日本が攻撃を受けてもアメリカはまもってくれない」という主張の根拠になっているのでしょう）。

確かに、アメリカ軍はもとより、自衛隊の能力や、最近の「超法規的な」運用を鑑みれば、「実質的には」日米安保は軍事同盟と呼んで差し支えないレベルにあると思います。でも、集団的自衛権が違憲であるなら、やはりアメリカが攻撃を受けても、自衛隊がそれに対して応戦してはいけませんから、これを同盟と呼んでいいものでしょうか。
別に秋原さんの語句の使い方を批判したいのではなくて、要するに、テレビや新聞などで、よく耳にする「日米同盟」なる物言いが、既に既成事実と現状肯定の上に成り立っている「虚像」なのじゃないかな、と思ったのです。その虚像が「日本は軍事力によって守られている」「同盟なのだから、アメリカだけが戦うのはおかしい」「集団的自衛権も認めるべき」みたいな主張の根拠になってるように思えるのです。
いや、自分は無学ですから、ひょっとしたら、日米安保はれっきとした「同盟」なのかもしれませんが、じゃあ「なんでNATOとかワルシャワ条約機構、みたいな名前がないんだろう」とか、「条約の中に一言も”同盟”って単語がないじゃん」とか、いろいろと疑問がわいてくるのです。（引用ここまで。強調は私）

「日米同盟」と言う言葉を使うことの問題点はこねこさんのコメントで言い尽くされてると思います。私も詳しいわけではないので、あまり大したことなくて恐縮ですが、私なりに少し付け加えさせていただこうかと思います。

こねこさんが仰るとおり、「同盟」とは「軍事同盟」を指します。
「日米同盟」とは、ぶっちゃけていえば日米「軍事同盟」と同義語です。
安保条約は軍事同盟なのか、についてですが、私の考えを述べますと、確かに軍事同盟の定義からすれば、日本は集団的自衛権の行使が認められない以上、軍事同盟か否かは微妙なところだと思います。共産党なんかは安保は軍事同盟だとハッキリ断言しています。
でも、この安保条約自体が違憲性を抱えてるわけで、この条約が軍事同盟に当たるか否かでその違憲性や効果に違いが出てくるわけでは無いと思います。
従って、安保は軍事同盟か否かを突き詰める実益はあまりないように思うのです。安保は軍事同盟だと言ってもいいし、実質軍事同盟みたいなもの、でもいいと思うのですが、いかがでしょう？

問題は、安保条約を日米同盟（即ち軍事同盟）だと言い切ってはばからない風潮に変化してしまったことだと思います。
安保が軍事同盟であるにしろないにしろ、少なくとも軍事同盟を結ぶことは憲法上許されないというコンセンサスは、以前はしっかり存在してました。20年前なら、政治家が日米安保を日米（軍事）同盟と呼べばそれだけでマスコミは問題視して追及したでしょうし、マスコミも使ってなかったと思います。

「日米同盟」という言葉が何食わぬ顔で使われ出したのは、小泉が総理に就任したあたりからだったと思います。これはちょうどブッシュが米軍再編を言い出した頃です。
冷戦が終了したので、冷戦を前提とした安保条約は存続する意義が薄れました。本当ならここで安保条約を見直すべきだったのです。
しかし、アメリカは新たな世界戦略のため米軍を再編し、日本に片棒担いで貰おうと今までと違う新たな軍事的役割を日本に求めてくるようになりました。
２００６年６月には日米共同声明では「変化する地域及び世界の安全保障環境において、確固たる同盟関係を確保する」と宣言しています。
安保は極東の安全を目的とする二国間条約なのに、条約はそのままでその枠を越え、より米軍と一体になりアメリカの世界戦略により一層協力するというように、質的に変化しました。
この、アメリカとのより危険な一心同体の軍事同盟へのステップアップに呼応して、安保体制という名称から日米同盟に変化したのではないかと思います。

まるでブッシュ自公政権のこの思惑をそのまま引き継ぐかのように、誰もが平然と日米同盟というようになりました。民主政権もバンバン「日米同盟」を乱発してます。
これって、今までの「軍事同盟は憲法の下では認められない」というコンセンサスを破り、軍事同盟結んだっていいじゃん、という開き直りの意思表示に聞こえます。
日米同盟という言葉がなにげに浸透するというのは、9条の更なるなし崩しを暗黙のうちにさらりとスルーすることにならないでしょうか。

また、日米同盟という名称は、「軍事」という文字がないですからソフトな印象です。ですから、みな首相は日米同盟といい、日米軍事同盟とは言いません。
これってとても欺瞞的。同じ言うなら、より本質を表してる「日米軍事同盟」と言えばいいのに、と思うのです。
そのてん、共産党はあえて日米同盟って言わないで日米軍事同盟って言ってますね。

「日米同盟」という言葉一つにしても、じわじわ憲法を浸食していく様が見えたりするものだなあ、と感じます。

関連記事

• 政府は憲法解釈を好きなように変更できる権限があると勘違いしていませんか？ (2009/11/10)
• いつの間に「日米安保」が「日米同盟」に？ (2009/11/04)
• 殺させられない権利　（追記あり） (2009/10/01)