公判前手続の拙速さが早速広島高裁によって指摘されました
- 2008/12/13
- 00:36
(強調は私)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081209-00000150-mai-soci<広島女児殺害>ヤギ被告の無期破棄、差し戻し「現場誤認」
12月9日21時42分配信 毎日新聞
広島市で05年11月、小学1年の木下あいりちゃん(当時7歳)が殺害された事件で、殺人罪などに問われたペルー国籍のホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(36)の控訴審判決が9日、広島高裁であった。楢崎康英裁判長は「検察官調書の審理をせずに犯行現場を誤認しており、手続き上の法令違反は明らか」として、無期懲役(求刑・死刑)とした1審・広島地裁判決(06年7月)を破棄し、審理を地裁に差し戻した。
判決は「(1審は)裁判の予定を優先するあまり、公判前整理手続きを十分せずに終結させた」と断じた。控訴審判決が同手続きでの地裁の判断について言及したのは異例。
判決によると、地裁は公判前整理手続きで、被告が犯行当日、自宅から毛布を持ち出していないと受け取れる検察官調書について、弁護側が任意性を争うために請求した証拠調べを却下した。
判決は、毛布に被害女児の毛髪などが付着しており、この供述が信用できるとすれば犯行現場は被告の自宅と認定できたと判断。現場を「被告の自宅アパートかその周辺」とした1審判決を事実誤認と批判し、証拠調べを却下した判断を「審理不尽」と結論づけた。
さらに、「現場が屋内か屋外かは犯行の経緯などにも影響する」とし、「犯行現場をあいまいなままにして量刑を判断するのは相当でない」とした。
公判前手続は裁判を拙速にするという危惧はあたってしまいました。
裁判の責務である真実発見を怠ってしまったのです。十分な審理が尽くさないまま被告人を刑に処していいわけがありません。
この判決について、識者が的確に論評しているのでそれを引用しておきます。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081209/trl0812092016024-n1.htm
「審理を尽くしていない」として1審判決の問題点を指摘し、審理を差し戻した今回の判決。刑事訴訟の専門家は「十分に証拠を検討していないという点で、高裁の指摘は正しい」「裁判員制度を意識する余り、1審の審理が拙速なものになったのではないか」などと高裁の判断を評価した。
元判事で早稲田大学大学院法務研究科、川上拓一教授(刑事訴訟法)は「検察側・弁護側双方の意見を聞かずに、被告の供述調書の証拠請求を却下した1審の審理の進め方を問題視した結果で、高裁の判断は正当だ」と評価した。
川上教授は「被告の供述調書は重大な証拠の1つ。裁判所が双方の主張を聞いた上で内容を検討するのは当然のことだ」と、1審の審理のあり方に疑問を投げかける。その上で、「供述内容をきちんと取り調べることで、犯行場所を特定できるとした高裁の指摘は妥当。真実解明の可能性が十分に残されていると判断したのだろう」と分析した。
また、元最高検検事の土本武司・白鴎大学法科大学院長は「来年始まる裁判員制度を意識して、1審の審理が過去の同様の事件よりもかなり短い期間で行われた」と指摘。迅速な審理を追及しすぎたため、「1審は事件を単純にし過ぎて拙速なものになった。しかし、犯罪は人間が犯すもので、そんなに簡単に分かるものではない」と話す。
今回の判決について、土本氏は「裁判員制度を前に、1審における公判前整理手続きをベースにした集中審理のマイナス面が現れてしまったのではないか。その意味でも高裁の指摘は重い」と意義を説明している。
裁判員制度、スタートさせて大丈夫でしょうか・・
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