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バーチャファイター=NV1、Quake=Voodoo2、バーチャロン=PowerVR………
NVIDIAと編集者が語る「ビデオカードとゲームの歴史」
NVIDIA・GIGABYTE合同イベント「VR & GAMING 体験大会」レポート
2016年10月31日 00:10
CFD販売株式会社は10月22日、アキバ・スクエア秋葉原UDX 2Fで、NVIDIAとGIGABYTEのユーザー向けイベント「プロの世界に挑戦せよ! VR & GAMING 体験大会」を開催した。
アキバ・スクエア前のオープンスペースにステージを設けて催された本イベントは全体で3部構成。第1部は25日発売のビデオカード「GeForce GTX 1050」のスペックと概要を紹介するセッション、第2部はプロゲーマーと来場者によるFPSタイトル「Overwatch」の対戦セッション、第3部では自作PC系メディアの編集者がビデオカードの歴史を対談形式で振り返った。
晩秋に差し掛かる10月下旬、平均気温は約17度とやや肌寒い気候ではあったが、人通りの多いUDXのテラス部分での開催ということで、自作PCファンやPCゲーマーだけでなく、多くの通行人が足を止めていた。
ゲームと一緒に進化してきたビデオカードバーチャファイター=NV1、Quake=Voodoo2、バーチャロン=PowerVR………
さて、まずは立ち見が出るほど盛況だった「グラフィックカードとゲームの進化」のセッションを紹介しよう。
このセッションは、NVIDIAの高橋一則氏を司会に迎え、PC系3メディアの編集者がビデオカードの歴史を振り返るもの。登壇者はPC Watchの劉 尭氏、週刊アスキーのジサトラ キタムラ氏、4Gamer.netの佐々山薫郁氏。黎明期の製品から現行世代の製品まで、発売当時のエピソードを交えながら、濃い内容のトークが繰り広げられていた。
歴戦のビデオカード好きや、20年来のPCゲーマーには「まさに」という内容だ。以下、順次紹介していこう。
[高橋氏]当時はVRAMが1MBとか2MBとか、そういう時代です
[劉氏]今だと写真が1枚入るかどうかも怪しい容量ですね……
[高橋氏]当時はBIOSのアップデートのためにROMを買う必要があったんですよ。メーカーに3,000円くらい支払うと、ROMが送られてくるんです。今思えば濡れ手に粟みたいな商売ですね(笑)
[高橋氏]私が代理店に入って、初めて触ったビデオカードが『Diamond Edge 3D』でした
[劉氏]友人の家にこれがあって、バーチャファイターができたので、バーチャを遊ぶために友人宅へ通う日々が続いていました。当時はPCM音源しか持っていなくて、ゲームをやっててもBGMが鳴らずに効果音しか鳴らなかったので、まさに憧れのボードでしたね
[高橋氏]今見たらそうでもないんですけど、当時、3Dモデルの怪物が自分に向かって襲い掛かってくるなんていうのは、ものすごい衝撃だったんですよ
[キタムラ氏]当時はテキストベースでコマンドを入れるゲームもまだ現役でしたよね
[高橋氏]このカード、当時は12万円くらいしました。当時としてもCPUの比じゃないくらい高価でした。Voodoo好きを指して"Voodoo教"なんて呼び方も生まれた時代でしたね
[高橋氏]Glideで動くUnrealってすごくきれいだったんですよ
[佐々山氏]GlideでUnrealをやると、ほかのビデオカードを使ったときよりも滑らかに血が飛び出るとか、そういう話もありましたね
[高橋氏]Hardware T&L対応モデルが普通に買える価格帯で出てきた時期です。この頃はGlideからDirect3Dへの転換期とも言えます。オンラインでマルチプレイが快適に遊べるようになったこともあって、きれいな3Dタイトルが広く遊ばれるようになりました
[キタムラ氏]ビデオカードに"GeForce"の名前がついたのもこれが初めてでしたね
[佐々山氏]発売直後の秋葉原は、まさに奪い合いでしたよね。今だから言いますけど、私はその頃、とあるショップでバイトをしていたんですが、在庫が切れたときに別のショップから買ってきて1,500円くらい上乗せして売る、なんてこともやらされてました(笑)
[高橋氏]この頃のゲームはアーケードがトップにあって、そのアーケードタイトルをいかにPCで遊ぶか、という取り組みがなされていた時期ですね
[劉氏]これの影響で、『NECの社員になりたい』って小学校の文集に書いたのを憶えています
[佐々山氏]当時は家でバーチャロンができるという、それだけで買う価値がありました
[キタムラ氏]NECがグラボを作ってた時代もあったんですよね……
[高橋氏]この頃はビデオカードの世代交代がかなり速かったというのもあって、いくつか機種を飛ばしてます
[劉氏]Albatron、懐かしいですね。僕もこの頃、Ti4400を買ってFF11を始めました
[高橋氏]当時は"FFが動かざるはPCにあらず"くらいの勢いでしたね
[キタムラ氏]ここではTi4400を挙げてますが、Ti4200もかなり売れていた記憶があります
[佐々山氏]この頃の秋葉原には、普段自作PCをしない人たちが来てたんですよね
[高橋氏]『FFが動くパソコンをください』という声をよく聞きました
[高橋氏]BF1942の『最大64人対戦』は金字塔ですよね
[劉氏]僕はこの頃もFF11に没頭してました
[佐々山氏]この頃はNVIDIAの暗黒期ですよね。何をやっても赤い会社に勝てないという
[高橋氏]FX5700とかもそうでしたね
[高橋氏]ファンが派手になり始めましたね。各パートナーさんがオリジナルのクーラーを搭載して、ボードとクーラーで2スロットを専有するようになり始めたのはこの頃からでした
[劉氏]それまでよりもGPUの進化に注目が集まり始めたのもこの時期ですよね
[高橋氏]よく見たらS端子がありますね。懐かしい
[劉氏]DOOM IIIで衝撃的だったのは、セルフシャドウですね。キャラクターの動きによって、キャラクター自身に落ちる影の動きが変わるという
[キタムラ氏]すごい技術なのに、描画してるのはおっさんとかクリーチャーなんですよね
[高橋氏]当時はそういう血みどろのゲームしかなかったんです
[劉氏]最初、NVIDIAはバーテックスシェーダ(頂点シェーダ)とピクセルシェーダを分けるって話だったんですが、GeForce 8シリーズで突然ユニファイドシェーダを入れ込んできたのには驚きました
[高橋氏]ちょうどWindows Vistaが出た頃ですね
[キタムラ氏]ビデオカードにサードパーティ製のクーラーを載せるのが流行りました。写真ではZALMANのクーラーが乗ってますね
[高橋氏]CoDシリーズは新作が出る度に傑作と呼ばれますよね。安定したクオリティに定評のあるシリーズです
[劉氏]高橋さんの挙げられるタイトルはFPSが多いんですが、僕はこの時代も相変わらずFF11をやっていました
[高橋氏]FPSはシーズンごとにキーとなるタイトルが替わるので、その都合です(笑)。僕と佐々山さん、キタムラさんは『World of Warships』をやってますよ
[高橋氏]『Skyrim』の登場によって、グラフィックスの重要性が変わってきます。このシリーズはユーザーコミュニティによる豊富なMODが多く出ることが特徴のひとつです。日本では初音ミクMODなんてのも出てきましたよね。なんでSkyrimの世界観で初音ミクなのかっていうのはこの際置いといて、とにかく重いMODを導入すると、必要とされるVRAMが2GB、3GBと跳ね上がっていきました
[佐々山氏]必要とされるVRAM容量の都合もあって、この頃はGeForce GTX 590がよく売れてましたね
[高橋氏]4年前にリリースされたオンラインゲームですが、今年追加されたハイエンド向けのグラフィック設定を適用すると、GeForce GTX 760でも快適に動作させるのはつらいんじゃないかな?
[佐々山氏]リリース当時はオンボードでも動かせる軽さが売りだったのですが、PS4版の登場と、多くのゲーミングPCがビデオカードを搭載するようになったことを受けて、より高い設定が用意されたようですね
[劉氏]FF11もグラフィックをアップデートしてほしいなー
[劉氏]アーキテクチャがFermiからKeplerになったことで電力効率が向上し、電力あたりの性能もかなり上がっているので、この頃のビデオカードでまだ粘っている人は、そろそろ買い替え時ではありますよね。Fermi世代のビデオカードを使っている方も結構見かけます
[高橋氏]確かに調査すると、今でもGeForce GTX550、560あたりを使っている方はいらっしゃいますね。まあ、個々のユーザー自身がいま楽しまれてるゲームが快適に動くなら、あえて買い換える必要はないのかなという感じはします
[高橋氏]このあたりからは、現行世代のビデオカードが必要なタイトルになってきます。いま、World of Warshipsを最高設定で快適にプレイしようとすると、少なくともGeForce GTX 960くらいは必要ですね
[高橋氏]けっこうとりとめのない話になってしまいましたが、ひとまずの結論としては、皆さんの遊びたいゲームに合わせて、その時最適なビデオカードを選ぶようにしましょう、というところですね
[佐々山氏]今回、GIGABYTEの話がほとんど出てないんですけど、これでよかったんですか?
[高橋氏]私も企画の段階で『マニア受けはするけど、本当に大丈夫ですか?』と申し上げました。まあ、意外と人も集まっているので(この時点でこの日一番の人だかり)、たまにはこういうのもいいんじゃないでしょうか
Pascal世代のエントリーモデル「GeForce GTX 1050」を解説Maxwell世代のエントリークラスをすべて置き換え?
さて、イベント開催時には発売前だったGeForce GTX 1050および同1050Tiの解説も行った。解説を行ったのはNVIDIAの高橋一則氏。
GeForce GTX 1050は、GeForce GTX 750に続くエントリー向けのゲーミング向けビデオカード。比較的手の出しやすい価格と補助電源を必要としない手軽さ、TDP 75Wの低消費電力が特徴であり、Maxwell世代のアーキテクチャを採用していたGeForce GTX 750や同950シリーズの置き換えにもなりうる位置付けとなる。
機能面では、エントリークラスのビデオカードとしては初めてPascalアーキテクチャを採用したことで、「同時マルチプロジェクション」などの新機能を利用できる点も特徴の一つ。性能面では、PCゲーム用途に用いた際に「最新タイトルが60fpsで動く」という目安をクリアする点もポイントだ。ここでは「Gears of War 4」や「Overwatch」といったタイトルが挙げられていた。
位置付けとしてはエントリークラスであるが、高橋氏はセッション内において、3年前の古いゲーミングPCをアップグレードする文脈の中で、PCをまるごと買い換えるのではなく、ビデオカードだけを置き換えることで現行世代のゲームを楽しめるようにする組み方を提案している。
なおGeForce GTX 1050がVRに対応するのかどうかについても言及。現時点で最も違和感なくVRを楽しむためにはHTC Viveなどで90fpsの出力を確保する必要があることから、「GeForce GTX 1060以上」を推奨カードとしている。