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情報システムの障害状況ウォッチ(2016年後半)

SEC Journal48号で2016年後半の情報システム障害状況まとめが公開されたので読んでみる記事。いろいろあってすでに2017年も4分の1が過ぎてしまったので今更感もあるのだけれど。

過去に書いた関連記事は以下の通り。

SEC Journal最新号の入手はこちらから。

情報システムの障害状況ウォッチ(2016年後半)

詳細はSEC Journalを確認いただくとして、掲載されているトラブル事例をいつもどおりニュース記事などとザックリ照らし合わせてみた。例によって調べているとお腹が痛くなる事案ばかり。

  • [1621]ECサイトの日次売上速報メールが不具合により他店に誤送信(2016/5/25)
    • ヤフーの仮想モール、「日次売上速報」誤送信で出店者の売上情報が漏えい - 通販新聞
    • yahooショッピング朝レポ不具合。他店の売り上げ情報がメールで大量に届く
    • Yahooの障害情報ページを見ても記載は無し、というか"一覧ページ"の該当と思われるページだけ削除されており「指定されたURLのページは存在しません。」と表示されるというのはいかがなものかと思う。
    • SEC Journalの記事によれば、前日にリリースされた新機能の不具合、テスト漏れとのこと。再発防止で「開発担当者とは別の担当者がテストケースを二重チェックする」と書かれているあたりに嫌な臭いが。
  • [1622]総務省e-StatがHW障害で閲覧不可(2016/6/30)
    • 会員登録のお願い - 毎日新聞
    • 冗長構成はどうだったのかは気になるところだが、不明
  • [1623]取引所 新システムトラブルにより約定できず(2016/7/29)
  • [1624]取引所 新システムトラブルにより利用制限(2016/8/1)
  • [1628]地銀勘定系プログラム不備で振込等手続きできず(2016/9/16)
    • ニュース - 横浜銀行など地銀4行共同システムの障害、原因はカード磁気消失のチェック漏れ:ITpro
    • SEC Jounalで詳しく論じられているのでぜひ閲覧いただきたいのだけれども、「1枚の磁気情報が壊れたカードを使った振込が原因で、4つの銀行の取引を7時間止めてしまう」事態となった恐るべき事態である。影響を受けた取引件数は3万5900件という。
  • [1629]チケット販売システム負荷集中(想定の6倍)でダウン(2016/10/15)
    • 第29回東京国際映画祭 | 第29回東京国際映画祭Online Ticketシステム障害のお詫びとご説明
    • スケールアウト可能なシステムを構築したが、想定の6倍の負荷がかかり最大限処理能力を追加してもさばききれなかったという事案。
    • 利用者のユースケースの想定を開発者が見誤り「1取引を5分ほどかけて処理」の想定が、実際には「PCとスマホ併用、応答が無ければすぐにリロード」だったという……
  • [1633]航空会社手荷物搬送システムで障害、運行遅延へ(2016/11/10)
  • [1635]地震発生時に警報システム等作動せず(2016/11/12)
    • 会員登録のお願い - 毎日新聞
    • SEC Jounal記事によれば「通信障害が起きたためとみられるが原因 は分かっていない」とのこと。また報道によると発生前日に保守点検をやっていたということから、点検作業のミスと見るのが妥当か。
  • [1639]気象庁ウェブサイト不具合で自動更新できず(2016/12/11)
    • 気象庁のHP、一時更新できず 情報発信には影響せず :日本経済新聞
    • 気象庁|報道発表資料
    • 障害により週間天気予報や波浪観測情報などの自動更新が停止し、暫定的に手動運用、翌朝には復旧したもの。
    • 原因は不正データ受信ということだが、どのように不正だったのか(発信元のエラー、通信上の問題など)は不明。
  • [1641]後期高齢者医療制度保険料計算システム不備で誤徴収発覚(2016/12/27)
    • 高齢者保険料6億円徴収ミスか 厚労省、5年放置 :日本経済新聞
    • 後期高齢者医療制度の保険料軽減判定誤りによる保険料の過大・過小徴収について |報道発表資料|厚生労働省
    • 「今回の事案の原因は、後期高齢者医療制度創設当時のシステムの設定の誤りにありますが、今後のシステム改修に当たっては、複数の担当者による確認を徹底いたします。」というのはいくらなんでも、どうかと思う。
    • 察するに、非常に頻度の低いレアケースで発生するバグのようなので「システム改修しない」という判断はあり得ると思う。しかしそれはシステムに関する話であって、業務として誤徴収は当然発生させてはならない。システム改修をしないという判断をしたのであれば、運用でしっかりとシステムの誤計算の発生を防ぐ(検知、差し替えなどの運用対応をする)必要があるであろう。

2016年はここまで。さて今年はどんなことが起こるやら。

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