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2008年04月11日
物語は世界共通言語---村上春樹インタビュー
[books ]
3月30日付けの信濃毎日新聞に村上春樹のインタビューが載っているのを知ったのはミクシィからの情報でした。
インターネットというのは、日本全国の情報を共有出来るツールだと、あらためて実感。
ちょうど、リフォーム工事で松本に出かける用事があったので、手を尽くしてこの新聞をゲットしました。
ともかく、このインタビューはなかなか読みごたえがあります。
この記事で知ったのですが
今では村上春樹の本は日本よりも海外で売れているんだそうです。
もともと海外での評価が高いことは知っていたんですが
それでも、日本国内の売り上げの方が多いかと思っていたらついに逆転していたんですね。
こういう事態は日本の作家としては初めてのようで、村上作品がいかに世界共通のものであるかが分かります。
村上春樹は世界的に共感を得ている原因を自ら分析して、そこに「物語」があるからだとしています。それは言葉を超えた人類に共有されている「物語」とでもいうのでしょうか。
もちろん、地理的に共時的に共有される世界共通言語として「物語」がとらえられてるわけですが、村上春樹が時々ふれる、ドストエフスキーの小説が百年以上前に書かれた小説なのに今でも我々を感動させるということと重なっています。
たとえば、日本国内に限ってみても浄瑠璃で語られる物語は歌舞伎へとその姿を変えながらも何百年も語られ続けているわけで、やはり語られ続ける「物語」には「物語」の力がしっかりとあると思います。
地理的水平的な「物語」の共有と、時系列的垂直な「物語」の共有があるわけで、この「物語」の力を信じることで人と人が信じあえつながってゆけるのだと思います。
新聞の記事は下の写真をクリックしていただくと全文が読めると思います。画像サイズが1500x1643ピクセルありますから、スクロールして読んでみてください。現在執筆中の長編小説についても触れていますよ。
※新しいホームページで情報更新中!!
投稿者 furukawa_yasushi : 2008年04月11日 09:30
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コメント
ノーベル文学賞に一番近い作家だそうですが、、、
??
日本では、ミーハーなOLさん向きのイメージが強いですよね
でも、(!!)。は大好き
najimaを聞きながら羊を巡る冒険をよんでください
建築をつくるときの「物語」、、、も共通ですね
投稿者 (!!)。 : 2008年04月11日 10:57
(!!)。さま
「ミーハーなOLさん向き」だなんてとんでもないですよね。
「羊をめぐる冒険」、あるいは「ノルウェイの森」以降
特に「ねじまき鳥」からは、人間の深層に深く入り込む、硬質な小説になっていて
とてもミーハーな方々には読むに堪えないものになっていると思います。
建築をつくる時の物語、やはり大切ですよね。
投稿者 fuRu : 2008年04月11日 13:28
fuRuさん、新聞記事、ありがとうございます。
今、読みおわかったところです。
次の長編、楽しみですね。
投稿者 わきた・けんいち : 2008年04月11日 23:24
fuRuさん、ありがとうございます!
あとでじっくり読みます。
デビュー時からのファンで初期作品は全部オンタイムで読んでますが「国境の…(なんだっけ?)」以降は文庫化されてからとか読んでないのもだいぶあったり。
「ノルウェイの森」は論外ですが(ご本人もあれは単に恋愛小説を書いてみたかっただけと言ってますよね)、「スプートニクの恋人」とか「ねじまきどりクロニクル」なんかは、いいんだけど、「ダンス・ダンス・ダンス」までの作品に比べて、こう、ギューッと来る感覚がイマイチ足りなかったです(「ねじまき…」の井戸には共感しましたが)。
そう、理屈ではないんです。春樹さんの紡ぎ出す物語の中に自分が何を見い出すのか、が問題なのです。
なので、私は、春樹さんの作品の評論とか、分析本なんかもありますけど、一切読みません。それは自分で感じた事が一番大事だから。
たしかに物語がしっかりしているからこそ、読者は様々なものをそこに見い出すことができるのでしょうね。
いま、「海辺のカフカ」を読んでいますが、すごくいいです。自分のいまの心情にぴったりで、本に呼ばれた感じです。それと、なんというか、「アンダーグラウンド」が出たときにびっくりしたんですが、社会性の強い作品ですよね? そういう作品も書くようになったのかと。それまでの作品では極めて個人の問題がテーマになっていたと思うので。「海辺のカフカ」では個人の問題と社会的問題がバランスよく取り込まれていて、一皮剥けたなあ、と感じています。まだ上巻を読み終えたところなので、下巻でまた感想が変わるかも知れませんが…。
長々と取りとめもなく失礼いたしました。
(!!)さん
「羊」いいですよね!! 私はあの物語で人生救われました。
投稿者 くろべえ : 2008年04月12日 00:18
わきた・けんいち さま
新年度の初頭でお忙しいところではないかとブログの更新の様子を見ていて思っていたところでしたが、ちょっとした息抜きにはちょうど良い記事ではないかな、などとも思っていました。
それにしても、面白い記事ですよね。
今度の長編はすごいことになりそうですね。
投稿者 fuRu : 2008年04月12日 19:39
くろべえさま
ミクシィの日記で田村カフカ君の台詞を引用されていたので
きっとお好きに違いないと思っておりました。
白鳥師匠のフアンと村上春樹フアンは通じるところがあるのではないか、などと考えていたりします。
初期の村上春樹と最近の村上春樹には大きな違いがあると思っています。でも、最近また「風の歌を聴け」なんかを読み直してみると、そこには実に深い深い意味の谷間が広がっていることに気がつきます。表面的な言葉の軽さ、コピーライティングのような軽妙さというのは、表現の手段のひとつに過ぎないのではということです。その視点から見直すと、村上春樹はデビューから現在まで何一つ変わっていないということにも気がつきます。
村上春樹の物語の力。次回の長編が気になる今日この頃です。
投稿者 fuRu : 2008年04月12日 20:27
fuRuさん
はい、村上春樹、大好きです!
疲れてるときに読むととても癒されます。
>初期の村上春樹と最近の村上春樹には大きな違いがあると思っています。
同感です。
>表面的な言葉の軽さ、コピーライティングのような軽妙さというのは、表現の手段のひとつに過ぎないのではということです。
その通りです。初期作品は軽薄だとかずいぶん叩かれたりしていました。
でも、私はあれらの物語の奥に潜む深く切々たる暗さを感じていました。その暗さが当時の自分の心情にぴったりでした。その暗さに共感してずいぶん助けられました。特に「羊をめぐる冒険」での最後の方の「鼠」のセリフには大きな衝撃を受け、そのセリフが無意識にいつも心の片隅にあり、ボロボロだった私もなんとかやってこれたのでした。
>その視点から見直すと、村上春樹はデビューから現在まで何一つ変わっていないということにも気がつきます。
それは言えますね。ただ、春樹さんは初期作品を順番に読んでいくと分かると思うのですが、一作品ごとに前進しています。初期作品は「他人とのコンタクト」が大きなテーマだったと思うのですが、コンタクトできなかった、もしくはコンタクトを必要としなかった主人公が、一作品毎に「コンタクトする」方に向かって行くのです。
「アンダーグラウンド」以降は「社会」とのコンタクトも織り込まれてきましたね。
そういう意味ではやっぱり大きく変わったんですよね。
>白鳥師匠のフアンと村上春樹フアンは通じるところがあるのではないか、
おもしろいですね。たしかにあるかも…。考えてみたいテーマです。
投稿者 くろべえ : 2008年04月14日 19:46
くろべえさま
>「アンダーグラウンド」以降は「社会」とのコンタクトも織り込まれてきましたね。
そうですね。
「アンダーグラウンド」以降、「暴力」が描写されるようになった(積極的に)のは「社会」とコンタクトをとるためと理解できると思います。
でも「風の歌を聴け」も、実は「暴力」を描いていると思うのです。我々の社会がはらんでしまった「意味」と「実体」との決定的な乖離。それこそが「暴力」。そこでは「暴力」は「描写される」のではなく「描かれていた」、と思います。その違いは微妙ですが。
「アフターダーク」は、そういう意味で「風の歌を聴け」に通じるものがあると思っています。
もうひとつ、「暴力」と「コンタクト」に関連していえば、内田樹さんも言われているように、村上春樹が描く世界での父の絶対的な不在です。特に「海辺のカフカ」では、父へのコンタクトと暴力が重なるように描かれているところに、とても深いものを感じています。
今度、お会いするときは白鳥師匠と村上春樹について語り合いましょう。
投稿者 fuRu : 2008年04月14日 21:59
fuRuさん、こんばんは
とても興味深い記事を掲載してくれてありがとうございます。
読みました。ご本人が言われているように、日本語性みたいなものにあまり寄りかからない文体、そう思います。簡単に語られていますが、これがとても難しいことだと思いました。次の作品のポイントは「恐怖」なんですね。魂の底まで降りたときに得られる人間としての共通した「恐怖」、確かに次回作が楽しみですよね!
投稿者 Amehare : 2008年04月15日 23:05
村上さんの貴重なインタビュー記事を
「手を尽くして」ゲットし、こうして善意で
紹介してくださる貴方のお心に感謝します。
どうもありがとう。
投稿者 ただけん : 2008年04月16日 05:12
ただけんさま
ただけんさまはじめ少なからぬ方々に喜んでいただけているようで嬉しい限りです。
私も、インターネットで欲しい情報を多くの方の善意で見ることが出来ていますから
その恩返しというと変ですけれども、そんな気持ちで記事にしてみました。
投稿者 fuRu : 2008年04月16日 09:56
Amehareさま
おお!「村上春樹同好会」同志!!
(↑勝手に会を作って勝手にAmehareさんも仲間に入れてしまっている・・・)
次回作、ますます楽しみになりましたよね。
いつごろでるのでしょうかね。
今までのタイムスケジュールで言うと9月に出ることが多いのでその頃でしょうか。
ともかく、楽しみに待つことにいたしましょう。
投稿者 fuRu : 2008年04月16日 09:59
>今度、お会いするときは白鳥師匠と村上春樹について語り合いましょう。
ぜひ! 止まらなくなりそうですが(笑)
投稿者 くろべえ : 2008年04月18日 17:22
新聞記事ありがとうございます!
村上さんカッコいいです。
団塊世代の落とし前を考えてる人なんて
その世代に彼以外いるんでしょうか?
逃げ切りを図るだけの団塊世代の人間とは違う!
かっこいい!
投稿者 bon : 2008年05月05日 16:43
bonさま
ほんと、村上春樹は格好いい、
そして、なんと言っても彼の発言には信頼感がある。
bonさんからこうしてコメントをいただけて
私としても大変嬉しいですし光栄です。
投稿者 fuRu : 2008年05月06日 00:41
Furukawaさま 初めまして。
私は小説を読むのが苦手で、羊、風、ピンボールしか読んでいません。
羊は印象深い読書体験でした。
アンダーグラウンドは手にとって、それでも辛い話を読む勇気がなく、まだ「解題」しか読んでいません。
いつか読むつもりです。
この新聞記事、読むことができてよかったです。
ありがとうございました。
投稿者 牧童 : 2009年02月01日 19:56
牧童さま
村上ワールドはとても深いです。
初期の三部作も良いのですが
最近のもの、特にカフカはすばらしいと思います。
ぜひ、苦手と言わず手にしてみてください。
投稿者 fuRu : 2009年02月01日 21:57
貴重なインタビュー記事をありがとうございます!
この人の小説は少ししか読んでないけれど、
エッセイなどでの意見や考え方はとてもストンとくる。
本当に自分で感じ、考えて、言葉にしているからなのかな。
地味でマイペースで、やや暗そうな人だけれど、
地に足をつけて、真剣にユーモアを忘れずに、自分の仕事をしている。
かっこいい!
投稿者 Taro : 2009年02月16日 23:56
Taroさま
コメントありがとうございます。
村上春樹、短編もいいですが長編もいい。
それぞれの独自のよさがあります。
ぜひ、その中のいくつかでも読んでみてください。
そうそう、エッセイもいいですよ。
投稿者 fuRu : 2009年02月17日 00:45
インタビュー紹介ありがとうございました。とても興味深い内容でした。
村上春樹さんの存在は、僕がこの時代の日本に生まれてよかったなぁと思うことのひとつです。
投稿者 チャイナ : 2009年03月06日 21:32
チャイナさま
興味深いインタビューですよね。
この夏発売される新作を待ちましょう!
投稿者 fuRu : 2009年03月06日 22:12
ありがとうございます!!
静岡在住で毎日新聞読んでますが、気づきませんでした。信濃版のみなんでしょうか。。
この記事読めてよかったです。。
投稿者 boyah : 2009年05月14日 20:28
boyahさま
「毎日新聞」ではなくて「信濃毎日新聞」です。
この新聞は長野県の地方新聞です。
地方新聞にのみ掲載されたのです、この記事は。
私も家内の実家が松本になかったらこの記事を読むことは出来ませんでした。
もし「毎日新聞」の記事だったらこういう風に皆さんに読んでもらえるようにはしなかったと思います。
それにしても、いい記事ですよね。
今月末に発売される新作、楽しみですね。
投稿者 furu : 2009年05月14日 22:33
お返事ありがとうございます。。
とてもよい記事だったので、勝手ながら自分のブログに載せてしまいました。(もし問題あるようでしたらおっしゃって下さい。)
毎日新聞と信濃毎日新聞は別物なんですね。すみません。
こういう記事は多くの人に読んでもらえるといいのですが、全国誌ではなぜ載せられないのでしょう。
投稿者 boyah : 2009年05月14日 23:21
boyahさま
全国紙ではなく地方紙に載ったということの意味は大きいような気がします。
インタビューアーだってバカではありません。村上春樹のインタビューならば、もっと大きなメディアでも喉から手が出るほど欲しいはずです。もちろん原稿は買取でしょうからインタビューアーにはそれなりのフィーが支払われるはずです。その額は想像でしかありませんが地方紙よりも良いでしょう。それでも、全国紙ではなく地方紙に載ったということは、これも想像でしかありませんが、村上春樹氏自身がインタビューアーに課した条件だったのではないでしょうか。インタビューは受けるし原稿にしても良いけれども全国紙には載せないでね。もしそうだとしたら、村上春樹のその気持ちはなんとなくわかるような気がします。
投稿者 furu : 2009年05月14日 23:57
記事大変興味深く読ませて頂きました。ありがとうございます。
文中、村上さんは「物語」について言及されていますが、とても刺激的な内容だと思います。
特に、先ごろお亡くなりになった心理学者の河合隼雄との対談では、作家の追求しているテーマが良く伝わってくるものだったように思います。
あえて言うなら、「自我の骨格としての物語」の創造を、この作家は取り組んでいるように思いました。
私たちの普段の日常生活中で「物語」は、「面白いかどうか」のみで判別されることが殆どだと思います。
そうでない時は、「物語」は「どう機能しているか」という、いわば学術的な冷たくて硬い議論になりがちで、「面白さ」と「機能」が同時に語られることは、滅多にないように思います。
村上さんの作品には、面白くて機能する、血と肉を伴った物語の創造へのエネルギーが強く感じられて、読んだ後は何か勇気を与えられたような気がします。
こうした地方紙に忌憚なく語るのも、いかにもこの作家らしいです。
うらやましいですね。
投稿者 テルムラント : 2009年06月03日 21:18
テルムラントさま
「1Q84」はすでに読まれましたか?
わたしは2巻目の真ん中を過ぎました。
このインタビューで語られている「恐怖」というものがこういうものだった。
本当の「恐怖」というのはこういうところにあるんだなと背筋が寒くなりながら読んでいます。
物語を失うこと、物語を奪い取ること。
投稿者 fuRu : 2009年06月03日 23:39
>物語を失うこと、物語を奪い取ること。
まさにそれは恐怖ですね!
人それぞれみんな物語をもっているのに、気付かないうちに書き換えられたり、押し付けられたり、強引に奪われたりといったこと。
(あるいは気付かないうちに書き換えたり、押し付けたり、強引に奪ったり、といったこと。)
国や世界の歴史だけでなく、会社や地域社会、家族や個人にも通じることだと思います。
「1Q84」先日読了しました。
まだ余韻が残っています。
かなりタフなストーリーですが、「物語」を通じて睦みあうことの温かさも描かれているので、それが救いになっていると思います。
(もっと書きたいんですが、ネタバレになっちまいますね!)
改めて記事&レスありがとうございました。
それでは。
投稿者 テルムラント : 2009年06月04日 21:06