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MとY

 
 
 
 
 
 

格差2

 

Y: 今日は勤労感謝の日です。

M: あんたは働けるだけありがたいんだから、本当に感謝しなさいよ。

Y: なぜ労働者が感謝しなければならんのですか。感謝すべきは資本家の方でしょうが。

M: それは資本家に言えばいいじゃない。

Y: 言ったら死んじゃうよね。

M: だったら我慢しなさいよ。

Y: なぜこの世には、資本家と労働者のような格差があるのか。

M: 頑張ったか、そうじゃないかの差じゃないの?

Y: 本当にそう思うの?

M: まあ、多少の運はあるだろうけど。

Y: いろいろ考えた結果、全て「運」じゃないかと思うんですよ。

M: 全てじゃないでしょ。

Y: お金を稼ぐには、3つの要素が必要です。「資産」「才能」「努力」この3つの要素が大きいほど、お金を稼げます。

M: なんか、いつもここで騙されてる気がするのよね。3つの要素とか絞っちゃってるけど、他にもあるんじゃないの?

Y: あっても、この3つが占める割合は大きいと思いますよ。

M: まあ、そうだけど。

Y: この3つのうち、「資産」と「才能」については、完全に運ですよね。生まれた時に決まります。

M: 資産はともかく、才能って運じゃない側面もあるんじゃないの? 自分自身の能力でもあるわけだし。

Y: 運ですよ。例えば、美人に生まれることは才能であり、これは運です。

M: 賢いとか運動能力が高いとかも運なの?

Y: イチローが江戸時代に生まれても、振り子打法が何かの役に立つとは思えません。現代に生まれてきたのは運が良かったのです。

M: まるで、イチローの今の稼ぎは、運が良かっただけだと言わんばかりね。

Y: 違うの?

M: たくさん努力したんじゃないの?

Y: 努力したら、石油王になれたりするんですか?

M: なんでそんな大富豪を目指すのよ。飛躍しすぎだよ。

Y: 誰もが大富豪になれるチャンスがないと、おかしいとは思いませんか?

M: 死ぬほど努力したら、なれるかもよ。

Y: その努力もやはり「才能」の一つですよね。

M: それは努力しない人間が、すぐ口にする捨て台詞だよ。

Y: 努力できる人間と、そうではない人間がいるのはなぜでしょうか? 苦痛に対して耐えられる量が異なるのは、やはり才能の分野ですよ。

M: 努力しないのは、単なる甘えだよ。

Y: 例えば、お酒をものすごく飲める人と、少し飲んだだけで具合が悪くなる人がいますよね。努力だって同じですよ。ちょっとやったら、もうダメーってなる人もいる。

M: 怠けを正当化しようとしているだけじゃない。

Y: 道徳上、努力することが正しいことだと認識されてしまっているから違和感がありますが、努力できる量には個人差があり、それは「運」の領分です。

M: もう、そういうことにしないと先に進め無そうだから、聞き流しておくよ。

Y: つまり、「資産」も「才能」も「努力」も、全部、生まれた時の運で決まってしまいます。お金をどれだけ稼げるのかは、結局、運次第ということです。

M: 運命は決まっていて、抗うことはできないって感じ? 宗教臭いんだけど。

Y: 運だけで「うわっ、、私の年収低すぎ、、、」となるのは、とても理不尽だとは思いませんか?

M: じゃあ、どうしたいのよ。共産主義にでもしたいの?

Y: 共産主義の思想は評価できると思いますが、現実的に欠点が相当ありますよね。

M: あれは理想論だよ。

Y: 私が改善してあげます。

M: mixiの足あとの「改善」と同じような「改善」の使い方だよ。

Y: まず、財産の保有は認めます。ただし、自分以外が稼いだものについてはボッシュートです。相続不可、贈与不可。家族の金銭的な絆を崩壊させます。

M: 家族のために遺産を残そうとして頑張っている人は多いと思うよ。

Y: だったら、頑張るのをやめればいいじゃないですか。

M: めちゃくちゃ言わないでよ。

Y: お金がもらえないと分かれば、子供は冷たくなるかもしれませんね。そして、そんなことで冷たくされるようでは、大した親じゃないということです。

M: 贈与不可って、ご飯すら子供に与えることはできないの?

Y: 子供には国から手当てを出します。その中でやり繰りしてください。その額を超える投資を子供にはできません。

M: それって、子供のために働けないということだから、モチベーション下がるんじゃないの?

Y: モチベーションで仕事をしないでください。

M: もうこの時点で、全然いけてないと思うんだけど。

Y: ここまでは共産主義と似てますが、違う点は、自分で稼いだ分によって貧富の差ができるという点ですね。

M: 一応、頑張りは認められているのね。

Y: 次に、才能と努力についてですが、努力は才能の一つなので、ここでは才能についてということで一括りにしてしまいます。

M: 努力が消し飛んだよ。

Y: 才能については、僕の理想郷を作るにあたって、ある装置が必要となってきます。

M: 何であんたは神の目線なのよ。

Y: ある人が発揮できる才能と、その人が社会に貢献した分量を数値化する機械です。

M: スカウターみたいなの?

Y: そうですね。このスカウターで、才能値と社会貢献値を見ることができます。

M: あんたは、才能値も社会貢献値もゼロよね。

Y: この値の高低は、お給料に直結します。

M: じゃあ、あんたは最低賃金だ。

Y: そうはならないです。基本的には、全員同じ給料となります。

M: 何のために値を出すのよ。

Y: 才能値から、その人がその人なりにある程度力を出した結果のシミュレートが可能となります。この結果を社会貢献予測値と呼びます。

M: よくわかんない。

Y: つまり、才能のある人は、それだけ社会貢献できるはずだよね、と予測できるわけです。

M: 予測してどうすんのよ。

Y: 次に、実際に社会貢献した分量も数値化されます。これは社会貢献実績値とでもしましょうか。

M: で?

Y: 例えば、予測値100で実績値100であれば、予測通りということです。この人には給料が定額支払われます。

M: 予測値100で実績値が80だったら?

Y: 実績値が予測値を下回ってますから、その人はどこかで手抜きをしたということです。給料は減じられます。

M: 逆に予測値100で実績値が120だったら?

Y: 実績値が予測値を上回ってますから、その人はかなり頑張ったということです。給料は上がります。

M: じゃあ、予測値が5とかで実績値も5とかだったら?

Y: 給料は定額です。

M: 予測値100で実績値100を出してる人と、同じ給料になっちゃうの?

Y: 予測値が5で実績値が7だったら、上回ることすら可能ですね。

M: 結果が全く伴っていないのに、結果を出している人と給料が同じになるのはおかしくない?

Y: 全然おかしくないです。その人ができる精一杯のことをしたわけですから。

M: これって、予測値が高い人がつらいんじゃないの?

Y: それはないです。予測値が高いということは、実績もそれなりに楽に出せます。同じ給料を得るために、みんな同じストレスがかかっています。

M: 何か腑に落ちないんだけど。

Y: 自分の才能を出し切らずに仕事を放棄すれば、どんどん給料が下がります。逆にしっかり頑張れば、ちゃんと給料は上がります。

M: これは才能のある人にとっては、共産主義よりひどいよ。

Y: 従来の共産主義と大きく異なる点です。各人の最低限の頑張りをしないと死にますし、努力による上積みもあります。

M: 努力による上積みがあるのなら、今とそんなに変わらないんじゃないの?

Y: その努力も才能判定ですから、私のような怠け者が頑張れば、給料はうなぎ上りですよ。逆に努力マニアが頑張ったところで、さほど給料は上がりません。

M: 私はそんなに給料が上がらないのね。

Y: これこそが、本当の平等じゃないでしょうか。これで格差がつくのであれば、それは認めたいです。

M: 要するに、才能に応じたノルマ制ってことよね。

Y: そうそう。

M: でも、やっぱり実績重視にしないと、モチベーション下がるよ。あんたの100倍の結果を出しても、あんたと同じ給料とかやってらんないよ。

Y: やってらんないって言っても、やらないとその僕より給料下がりますよ。やるしかないんですよ。

M: 今より最悪のシステムじゃない。

Y: その点に不満を持つ人というのは、お金を人よりたくさんもらえないと、仕事をしたくないってことですよね。

M: そうは言ってないでしょ。

Y: そういうことじゃないですか。資本主義の一番嫌なところは、そういった自己満足を優先することが正当化されていることです。

M: 別にいいじゃない。自分が儲けたいから働く、で。

Y: 自分のためにギラギラ働いている人より、役割と思って仕方なく働いている人の方が何倍もマシだと思います。

M: 何でそうなるのよ。

Y: 資本主義は誰かが儲けた分、必ず他の誰かが割を食う仕組みになっています。儲ければ儲けるほど誰かを犠牲にしている。それが正しいなんて許せない。

M: あんたは、他人の幸せが許せないだけじゃない。

Y: しかも資本主義では、割を食うのは努力足りないからだ、ということになっています。

M: そうじゃないの?

Y: 割を食うのは運が悪かっただけだというのは、説明した通りです。

M: 説明になってなかったよ。

Y: やはり、この腐敗した資本主義システムを破壊し、ユートピアを実現しなければなりません。

M: 現状、資本主義システムを超えるシステムは無いんじゃないの?

Y: この奴隷システムが?

M: 人間の原動力って、結局、自己満足だよね。

Y: 確かに、最も効果的に人間の力を引き出せるのは資本主義だというのは、否定できないね。

M: だったら、資本主義のまま突っ走って、文明を向上させていく方がいいじゃない。

Y: たとえ幾人もの犠牲があったとしても?

M: 弱肉強食こそが自然界の摂理。むしろこれが自然だと思うよ。

Y: じゃあ、運によって貧富の差がつくのは諦めろと。

M: 運命は自分で切り拓くものと信じているし、運で全てを片付けてしまっては人生がもったいないじゃない。

Y: 何そのかっこいいセリフ。そういうのが一番困るんですよ。僕の今までの力説が一瞬で台無しですよ。

M: あんたは貧富の差を語る前に、心の貧しさを何とかしなさいよ。心が豊かになれば、そんな力説をしなくて済むんだよ。

Y: どうやったら、豊かな心になれますか?

M: まずは私にヴィトンを買ってきなさい。

Y: それは運命を自分で切り拓くんじゃなくて、誰かに切り拓かせてるだけだよね。

M: 切り拓くのに道具を使うのは当然だし、道具で切り拓いたら、それは私が切り拓いたということだよ。

Y: あなたは、資本家やった方がいいと思うよ。向いてますよ。

M: なんでそんな面倒なことするのよ。資本家も道具にすればいいじゃない。

Y: 人間界の食物連鎖の一端を垣間見た気がする。

M: おやすみ。

Y: おやすみ。

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