日本電産グループを取材していると、独特の企業文化に驚くことがある。それは良い意味でも悪い意味でもだ。例えば、物事を実行するスピードは圧倒的だ。電気自動車(EV)用駆動モジュールである電動アクスルのシェアがEVの最大市場である中国でトップなのも、いち早く目を付けて動き出したからだろう。
他方で、良い面と表裏一体ともいえるが、その「モーレツ」な働き方が時代にそぐわないのではないかと感じる場面もあった。例えば日本電産が2022年9月2日に開いた関潤氏の社長辞任を伝える会見だ。同社会長兼最高経営責任者(CEO)の永守重信氏は関氏を一方的に厳しく批判する中で「トップなら(午前)6時や7時に出勤して社員を待つもので、9時半に出勤するようではいけない」と発言。これに対しては、SNS(交流サイト)上などでも否定的に捉える意見が散見された。
こうした企業文化が、M&A(合併・買収)によって後からグループに加わった企業にすんなりと受け入れられるのかは、かねて疑問だった。そこで、2021年8月に三菱重工グループから日本電産グループに移った日本電産マシンツール(滋賀県栗東市、旧三菱重工工作機械)の若林謙一社長へのインタビューで、社風の変化について詳しく聞いた。
想像以上に肯定的だった三菱重工グループとの違い
若林社長の話は想像以上に将来への期待にあふれる内容だった。買収直前の旧三菱重工工作機械では、新しい社員も少数しか採用できないなど、停滞感が漂っていた。それが日本電産グループに入り、「工作機械業界で世界一」という大きな目標に向けて歩き始めている。例えば、2023年に向けた採用数は約50人に増やす計画だ。インタビュー中で若林社長は「はるかに成長できる可能性が高まった」と言い切った。それほど同社にとっては良い変化だったのだろう。
「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」といった言葉に代表されるような日本電産の企業文化の浸透は進んでいる。そのことは日本電産マシンツールの本社から見える景色からも見て取れた。同社の敷地内には小さな山がある。三菱重工グループに属していた頃から、使いやすい平地にしようと、少しずつ切り崩していた。その山が削られるスピードが、日本電産傘下に入ってから明らかに上がっている。取材で同所を数カ月に1度訪れるたびに、どんどん山がなくなっていくのだ。スピード感を重視する永守会長から「もっと早く平地に」という指令が飛んでいたそうだ。
