Mozilla
Phabricatorを使ったFirefoxへのパッチ提供の手順(2026年版)
結城です。
このブログでは2018年に、Firefoxの不具合を修正したり新機能を追加したりといったコントリビューションを行う際のパッチの作り方と、Phabricatorというツールを使ってコードレビューを受ける手順を紹介しました。
2026年現在では、既定のバージョン管理システムがMercurialからGitに移行した他、Phabricatorを使うためのツールのインストール手順が簡素化され、Firefoxへパッチを提供するためのハードルが以前よりも低くなっています。 この記事では、Firefoxへの不具合報告の仕方の解説と不具合の原因調査および修正の仕方の解説に続くシリーズ完結編として、2026年の状況に基づいてFirefoxに不具合を修正するパッチを提供する手順をご紹介します。
Firefoxの不具合の原因調査と修正への取り組みの事例紹介
結城です。
このブログでは過去何度か、FirefoxやThunderbirdの不具合の原因調査や修正の事例をご紹介してきました。 ですが、原因の見つけ方や修正方針の検討の詳細な所はあまり言語化してきていなかったように思われます。
この記事では、Firefoxへの不具合報告の仕方の解説の続編として、Firefoxを使用していて遭遇した不具合の原因を特定し、経緯や事情を調査して適切な修正内容をまとめる所までの詳細な流れをご紹介します。
Firefoxの不具合の報告の手順(2026年版)
結城です。
Firefoxを開発しているMozillaプロジェクトでは、ソースコードのバージョン管理システムをMercurialからGitに移行し、GitHubでホスティングしていく方針が2023年に示されました。 その後、実際に移行が進んで、本稿執筆時点(2026年1月)ではソースコードの入手はGitHubのリポジトリーから行うのが規定となっています。 その一方で、不具合報告の受け付け・管理のためのイシュートラッカーとしては、GitHubのイシュートラッカーではなく、Mozillaプロジェクト専用のイシュートラッカーであるbugzilla.mozilla.org(以下、BMO)が依然使われています1。
このブログでは、Firefoxの不具合を修正したり新機能を追加したりといったコントリビューションを行う際のパッチの作り方を2018年に紹介しましたが、当時の記事は既に誰かによって報告された不具合へのパッチ提出が前提で、自分が見つけた不具合を報告する場面の説明は含まれていませんでした。 パッチ提出の流れには当時と比べ変化があったため、その点を紹介する記事を執筆したいのですが、まずはその前段階として、この記事では具体的な事例を参照しつつ、BMOを用いたFirefoxの不具合報告の仕方をご紹介します。
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「Bugzilla」はイシュートラッカーのソフトウェア自体の名称です。Bugzillaはそれ自体がオープンソースのソフトウェアで、独立したプロジェクトとして開発されており、Mozilla以外のプロジェクトでも採用されている事例があります。bugzilla.mozilla.orgは、Mozilla自身が運用しているBugzillaのインスタンスの一つということになります。 ↩
WindowsでFirefoxのビルド手順(2026年版)
Thunderbird版FlexConfirmMailユーザーの皆さまへのご案内:「自動更新あり」の状態を維持するための移行ガイド
結城です。
当社のメール誤送信対策製品「FlexConfirmMail」のThunderbirdアドオン版を従来から使用している方は、自動更新によって提供された最新バージョンとして4.2.5をお使いかと思います。 現在、このFlexConfirmMailの不具合を修正し新機能を追加した新バージョンとして4.2.8が公開されていますが、従来からFlexConfirmMailをお使いの方の環境では、このバージョンは自動更新では反映されません。 今後もFlexConfirmMailをThunderbirdでお使い頂く場合は、FlexConfirmMailの再インストールと設定の引き継ぎが必要となります。
本記事では、FlexConfirmMailの再インストールおよび設定の引き継ぎが必要となっている背景事情を説明し、実際の引き継ぎ手順を説明します。
Firefox ESR140での差分更新の適用手順
結城です。
通常、Firefoxは動作中にバックグラウンドで更新用の差分ファイルを自動的にダウンロードし、再起動のタイミングで更新を適用します。 しかし企業などでの運用においては、一般ユーザーには管理者権限を与えない場合があり、そのような場面では、Firefoxの更新は管理者やシステム権限でのインストーラーの再実行、もしくは更新用の差分ファイルをローカルで適用して行うことになります。 配布ファイルのサイズが小さく済む差分ファイルのみを各端末に配布し、ログオンスクリプトなどを用いて端末上でローカルで適用するやり方は、組織内ネットワークの帯域の逼迫を防ぎたいといった事情がある場合には有用と言えます。
この差分ファイルの適用手順は長らく変化がありませんでしたが、Firefox ESR140時点(より正確に言えばFirefox 138時点)で一部の仕様が変わっており、従来の手順では差分更新を行えなくなっています。 本記事では、Windows端末上でFirefox ESR140に差分更新をローカルで適用する手順を改めて紹介します1。
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本記事の情報はMozillaの日本コミュニティポータルに提供した法人向け技術情報を補完する物で、本記事で述べている情報を含めるための修正も提案済みとなっています。 ↩
公開のOSS開発プロジェクトの業務での開発事例:Waterfoxのツリー型タブと垂直タブの統合
結城です。
昨年、Firefoxのフォーク版の一つとして知られるWaterfoxプロジェクト主催のAlex氏からのご依頼に基づき、Firefox用アドオン「ツリー型タブ(Tree Style Tab、以下TST)」を組み込む作業を行いました。 本年8月にリリースされたWaterfox 6.6.0ではその発展として、Watarfox本体の垂直タブとの統合作業を行いました。

本記事では、今回の契約の経緯と開発の成果の技術的側面のそれぞれをご紹介します。
Thunderbirdで「マスターパスワードを使用する」設定が強制適用されない事象と、修正までの回避策
屋代です。
Mozilla Thunderbirdをお使いのお客様から、次のような問い合わせがありました。
- Thunderbirdにマスターパスワード1を強制的に適用する設定を導入したい
- インストールディレクトリ
C:\Program Files\Mozilla Thunderbird配下にdistributionディレクトリを作成しpolicies.jsonを配置した policies.jsonに"PrimaryPassword":trueと記載したが、マスターパスワードが無効化できてしまう
調査したところ、Thunderbirdの不具合と判明しました。
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「マスターパスワード」の名称は英語版Thunderbirdでは「Primary Password」に変更されています Primary Password is replacing Master Password in Thunderbird (support.mozilla.org)。 当記事では日本語UIの文言にならい「マスターパスワード」を使用します。 ↩
Thunderbird 128.11以降でファイル共有サーバー上のemlファイルを開けない問題の回避方法とその背景
Firefoxの「安全でないダウンロードの遮断」機能の回避手順と実装の背景、および調査対応のポストモーテム
WebブラウザーのFirefoxには、ユーザー保護の一環として「安全でないダウンロードを積極的に遮断する」機能があります。 「安全でないダウンロード」とは具体的には、HTTPSで接続しているWebページからHTTPのURLで参照してファイルをダウンロードしようとした場合を指します1。 通常の利用では安全性が高まって望ましい動作なのですが、法人運用で業務が依存しているWebサイト2がHTTPSではなくHTTPでの接続になっている場合、この機能の影響によってファイルのダウンロードができなくなり業務に支障をきたす場合があります。
この動作について、約1年前のFirefox 125(125.0.1)のリリースからしばらくの間、機能が強化されたり、緩和されたり、再度強化し直されたり、という不安定な状況が発生していました。 また、「特定のドメインでのみ安全でないダウンロードを許可する」ということもできず、機能を恒久的に無効化する以外の選択肢がないために、前述のような状況が発生した企業での運用には注意が必要でした。 その後、関係するポリシー設定がいくつか追加もされました。 こういった諸々の事があった結果、結局この機能は何だったのか、どうすれば制限を回避できるのか、ということが分かりにくくなってしまっています。
本記事では、お問い合わせに基づき当社で行った調査の範囲で、業務利用でこの機能の影響を受けないようにするための正しい解決あるいは回避の方法と、この機能が辿った変遷、および、それらを明らかにするまでに行った調査の過程とそこに見られた課題をご紹介します。