沖縄県の多良間島は、沖縄本島と石垣島の間に浮かぶ離島で、人口約1000人。1日2便の宮古島との往復航空便は、通学や通院、仕事など島民の生活を支える重要な交通手段となっている。
ところが、この往復便が航空会社のマイルや特典を目当てとした乗客によって予約され、島民が利用しづらい状況に陥っていることがわかった。村長や村議会は、県や航空会社に対して改善を求めて働きかけているという。
多良間村役場によると、背景には「マイル修行」と呼ばれる活動に取り組む乗客の存在があるという。日本航空(JAL)が1月13日から始めたキャンペーンをきっかけに、こうした利用が加速していると指摘する。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)
●JALのダブルマイルキャンペーン開始「島民が乗れない」
多良間島では、通学や仕事など宮古島との移動が必要な場合、フェリーのほか飛行機が利用されている。
1日2便の宮古島空港との往復便(JALグループのRAC)について、島民の利用に大きな支障が出ているという。多良間村の職員が1月20日、弁護士ドットコムニュースの取材に答えた。
「新型コロナ禍が明けたころから、いつも顔を見かける4〜5人の乗客が到着してまた帰っていく姿がみられるようになりました。それが2025年末から、このような乗客が徐々に増え出し、さらに先週からJALのキャンペーンと重なって、島民から『飛行機に乗れない』という相談が寄せられるようになっています」
●「マイル修行」の乗客が島民より多く…医療・経済・学業にまで影響
島で観光などせず、再び飛行機に乗って帰っていく乗客は「マイル修行」に取り組んでいる人たちとみられるという。
「マイル修行」とは、航空会社が会員向けに設定しているステータス(会員グレード)を上げるため、搭乗回数や距離を稼ぐ行為とされる。
「マイル修行に加えて、さらに1月13日からJAL(RAC)のマイル2倍キャンペーンが始まったことで、島民が予約が難しく、島民が乗れない事態が生じています」(多良間村の職員)
役場の窓口には、宮古島にある病院の予約をキャンセルせざるをえなくなった住民も訪れているという。
多良間島の医療機関は、医師と看護師が1人ずつの診療所が1カ所あるだけで、宮古島の病院に通院する住民も少なくない。
取材に対応した職員自身も、飛行機を予約できずに出張がキャンセルになったといい、「この日曜(18日)には、50人満席で、そのうち乗れた島民は15人だった」と明かした。
多良間空港のRAC機体(Ken Ishima / PIXTA、撮影日時:2024/07/07)
「このような状況は島民全体に知れ渡っています。病院だけではなく、子どもたちの部活動の遠征などのほか、多良間に仕事に来れない人も出ていて、経済的にも影響があります」
緊急性の高い事態が生じた場合、どうなるのかと不安の声も上がっている。
●多良間村役場「経済的メリットは何も感じない」
村によると、伊良皆光夫村長がすでに沖縄県やJAL(RAC)に改善を求めており、村議会も県の交通政策課に働きかけているという。
「マイル修行」が多良間島にもたらすメリットはないのか。そう尋ねると、職員は次のように語った。
「乗客は島に到着後再び乗り込むので、さびしいことに経済的メリットも含めて何も感じません。残念でしかないです」
●村からも連絡、航空会社「予約率は高い」臨時便は未定
RAC(琉球エアーコミューター)は1月20日、弁護士ドットコムニュースの取材に、「村からも連絡は受けている。たしかに予約率が高くなっている状況がある」と認めた。
一方で「キャンペーンだけの影響とは一概には言えないのではないか。お客様の動向も分析したい」と慎重な見方も示した。
現時点では、県や村と具体的な調整に至っていないとしつつも、このような状況を踏まえて「機材と運行乗務員が通常の定期便に加えて確保できるようなところがあれば、一部期間ではあるが、臨時便の設定も検討したい」と説明した。
ただし、「機材にも余裕があるような状況ではない」と苦しい事情も明かす。
●宮古島で事業展開する経営者「航空会社に陳情のメールを送った」
宮古島で事業をおこなう経営者の男性は、多良間島の人々の状況を知ったことで「 JAL(RAC)に対策を講じるように陳情のメールを送った」と話す。
「折り返し搭乗に対する何らかの制限や島民の優先に関して検討してほしいです」(男性)
一般的には、このようなキャンペーンによって、対象区間となった乗客の少ない離島の便の利用がうながされ、路線が維持されるなどの利点も考えられるところだが、あまりに過剰すぎる「マイル修行」は地域住民の移動を制限することになりかねない。