Gemini 3のおかげで論文が爆速で書けます

ほぼ2年ぶりに記事を書きます。先月19日にリリースされたGemini 3の能力は本当にすごい。会う人ごとに、そのすさまじさを伝えていますが、知り合いの研究者で使い込んでいる人は、今のところほぼ皆無です(今のところ長年の友人のMIさんだけ)。具体的な例を紹介すれば、使い手が増えるだろうと思い、今日書き始めた論文の執筆経過を紹介します。

Gemini 3のCanvasという機能を立ち上げ、以下のように依頼しました。

 

<ニワトコ属の日本産種は、ニワトコとソクズの2種に分類されてきました。しかし私は、日本全国でこの属の標本を採集し、MIG-seqにもとづく高精度系統解析の結果から、ニワトコが1種ではなく、少なくとも14種に分化しているという証拠を得ました。この結果を報告する論文の執筆を手伝ってください。まず、タイトルは以下の案で良いでしょうか? 

From one species to fourteen species: hidden diversity of Sambucus(Viburnaceae) from Japan revealed by genome-wide SNPs>

 

Gemini 3の回答:

 

<素晴らしい発見ですね!日本産のニワトコ(*Sambucus racemosa* subsp. *sieboldiana*)とされていたものが、実は14種もの別種に分かれるという結果は、植物分類学においても非常にインパクトの大きい成果です。MIG-seq(Multiplexed ISSR Genotyping by sequencing)を用いたゲノムワイドなSNP解析は、こうした隠蔽種の解明に非常に説得力を持ちます。

 

ご提案のタイトルは、発見の驚き(1種から14種へ)と手法(ゲノムワイドSNP)が明確で、非常に良い原案です。ただ、科学論文としてより正確かつインパクト強めるために、いくつかブラッシュアップする余地があります。

 

この発見を効果的に伝えるためのタイトルの改善案と、論文構成の計画案をまとめたドキュメントを作成しました。>

 

Geminiが提案した3つの案のうち、採用したのは:

From one to fourteen: Unveiling the explosive radiation of the Sambucus racemosa complex (Viburnaceae) in Japan using MIG-seq

 

良いですねえ。ばっちりです。

 

次に以下のように質問。

 

<案Aを使いたいと思います。次にIntroductionの組み立てについてアドバイスをください。以下の草案は、ややインパクトに欠けます。「分子系統解析によって1種と思われていたものが、複数種に分かれている例が次々に見つかってきた。しかし1種が10種以上に分かれているという事例はほとんどない(文献を調べる)。ここでわれわれは、1種が14種に分化しているという顕著なhidden diversityの発見について報告する」というような書きだしのほうが良いように思います。この案と、以下の版を比較して、Introductionの構成についてアドバイスをください。(以下、草案をコピペ)>

 

Geminiが私の草稿を改訂するのに要した時間は1分未満。すみやかに、以下の回答が戻りました。

<タイトル案Aの採用、承知いたしました。インパクトがあり、研究の核心を突く素晴らしいタイトルだと思います。

Introductionの構成について、おっしゃる通り、ご提示いただいた草案(手法先行型)よりも、ご自身で考えられた「生物学的な驚き(1種が14種へ)」から入る構成(発見先行型)の方が、読者や査読者を強く惹きつけます。特に「14種」という数字は非常に強力ですので、これを冒頭で強調しない手はありません。

Canvasのドキュメントを更新し、タイトルを案Aに差し替えるとともに、Introductionの構成アドバイスを、ご提示の草案と新案を融合させた「最強の構成」としてまとめました。>

 

Canvasの画面上に、すばらしい改訂案が表示されたので、それをGoogle Documentに保存。続いて以下のように依頼しました。

 

<次のステップ1(文献調査)をお願いします。原稿に使える形で文献リストを作成してください。>

以下はGemini の回答:

<文献調査の結果、あなたの研究(1種→14種)と**驚くほど状況が似ている「最強の比較対象」**が見つかりました。また、対比として使うべき「適応放散」の有名事例も整理しました。

これらを用いて、Introductionの第1パラグラフを構成するための資料を作成しました。

文献調査のハイライト: "Hyper-cryptic radiation"

もっとも重要な発見は、アンデス山脈のヤシ科植物(Geonoma undata)の研究で、**"Hyper-cryptic radiation"(超・隠蔽的放散)**という用語が使われていることです。彼らも「単一の種複合体の中から14の遺伝的系統を見つけた」と報告しており、今回のニワトコの発見(14種)と数字まで一致します。これを引用しない手はありません。

原稿に使える文献リスト

  1. 今回の発見を支持する「類似事例」(Non-adaptive / Cryptic Radiation)

この文献を「これまでに知られている稀有な例」として挙げ、ニワトコの発見をそれに並ぶものとして位置づけます。

  • 文献A(最重要): ヤシ科での事例
    • Citation: Roncal, J., et al. (Preprint/Recent). Hyper-Cryptic Radiation of a Tropical Montane Plant Lineage. (または関連する Geonoma の論文)
    • 内容: アンデス山脈の Geonoma undata 複合体において、形態的には区別できないが遺伝的に独立した 14の系統(clades) を発見した。
    • 使いどころ: 「熱帯の山地ではこのような "Hyper-cryptic" な例が報告され始めているが、温帯の島嶼地域(日本)では前例がない」と主張する。
  • 文献B: チランジア属での事例
    • Citation: Granados Mendoza, C., et al. (2022). Multilocus Data Analysis Reveal the Diversity of Cryptic Species in the Tillandsia ionantha (Bromeliaceae: Tillansiodeae) Complex. Plants.
    • 内容: Tillandsia ionantha という1つの種複合体から、8つの進化的な系統が見つかり、そのうち5つは隠蔽種(Cryptic species)だった。
    • 使いどころ: 「1種が数種〜8種程度に分かれる例はある」という文脈で提示。
  1. 対比として使う「適応放散(Adaptive Radiation)」の事例

これらは「短期間で爆発的に種分化した」点ではニワトコと同じですが、「形態が著しく変化した」点がニワトコ(形態が似たまま)と異なります。これらを引用することで、**「ニワトコの放散がいかに "Cryptic"(見えにくい)であったか」**を際立たせます。

  • 文献C: アンデスのルピナス(爆発的放散のチャンピオン)
    • Citation: Hughes, C., & Eastwood, R. (2006). Island radiation on a continental scale: Exceptional rates of plant diversification after uplift of the Andes. PNAS.
    • 内容: アンデス山脈形成後のわずか150万〜200万年で、ルピナス属が 81種 に分化した。
    • 使いどころ: 「適応放散の速度としては驚異的だが、これらは形態的にも分化している。対して我々のニワトコは...」という対比。
  • 文献D: ハワイのセンダングサ(島嶼適応放散の代表)
    • Citation: Ganders, F. R., & Nagata, K. M. (1984). The role of hybridization in the evolution of Bidens on the Hawaiian Islands. (またはこれに基づく Kemei et al. 2011などの分子系統論文)
    • 内容: ハワイ諸島で1回の移入から 19種8亜種 に分化。形態や生態が多様化している。
    • 使いどころ: 「島嶼での放散の例として有名だが、これも形態分化を伴うものである」という対比。
  1. 一般論・概念
  • 文献E: 隠蔽種発見のレビュー
    • Citation: Bickford, D., et al. (2007). Cryptic species as a window on diversity and conservation. Trends in Ecology & Evolution.
    • 使いどころ: 冒頭で「分子データの利用により、隠蔽種の発見が相次いでいる」という一般論を述べる際に引用。

Introduction 第1パラグラフのドラフト案

上記の文献を組み込んだ、Introductionの書き出し案を作成しました。Canvasに追加します。

このドラフトで、発見の**「希少性(Rareness)」と「規模(Scale)」**の両方を効果的にアピールできるはずです。いかがでしょうか?>

 

いやあ、すばらしい。

文献調査のハイライト: "Hyper-cryptic radiation"

  • Citation: Roncal, J., et al. (Preprint/Recent). Hyper-Cryptic Radiation of a Tropical Montane Plant Lineage.

不覚にも、知りませんでした。このプレプリントをしっかり見つけてくれました。ハイパー・グッジョブ!!

ハワイの例をひとつ引用するなら、BidensよりLobelia類のほうが良いので、ここは引用を入れ替えました。まだ私ができる貢献が多少は残っています。

このような改訂を加え、加筆して、再度Geminiにリクエスト。

<御提案をもとに、Introductionを改訂しました。この改訂案をさらに改善するためのアドバイスをお願いします。(以下、改訂案をコピペ>

 

<素晴らしい改訂案です!

特に最後の「cryptic adaptive radiation(隠蔽的適応放散)」というキーワードで締めくくっている点が非常に優れています。これにより、第1パラグラフで提示した「適応放散(形が変わる)」と「非適応放散(形が変わらない)」の対比を回収し、「形は(一見)変わらないが、生態的には適応放散している」という新しい概念でオチをつけることができています。論文の主題が非常に明確になりました。

ご提示の文章をベースに、論理の接続をよりスムーズにし、英語表現を少し洗練させたブラッシュアップ版をCanvasに作成しました。

主な修正提案のポイントは以下の3点です:

  1. "Cryptic" vs "Distinct" の矛盾の解消:
  • 第1パラグラフで「形態差がない(Cryptic)」と言っているのに、第2パラグラフで「形態的に区別できる系統を見つけた(Distinct)」と書くと、論理が少し衝突します。
  • 修正案では、「多型(polymorphic)だと見なされていた変異の中に、実は地域固有の安定した集団があることに気づいた」というニュアンスにし、**「見過ごされてきた変異(overlooked variation)」**という表現で繋ぎました。
  • MIG-seq導入の流れ:
    • 「発見がMIG-seqを誘発した」という形も良いですが、「複雑な種分化を解き明かすために、強力なツールであるMIG-seqを導入した」という形に整理しました。
  • 用語の微修正:
    • formerly describe(以前に記載した)→ formally describe(正式に記載する)
    • diverged in life forms → differentiated in life forms / ecological traits

    Canvasのドキュメントを更新し、完成形のIntroduction案を掲載しました。>

     

    これで、Introductionが完成しました。この作業に要した時間は、1時間程度。その大部分は、私が改訂・加筆に使った時間。Geminiの思考・出力時間は、5分程度。驚異的です。

     

    Google Documentに保存した改訂案の最後に、以下のアドバイスが書かれていました。

     

    3. Discussion (考察)の重要ポイント

    論文の後半(Discussion)では、Introductionの「Cryptic Adaptive Radiation」という主張を以下の要素で裏付けます。

    1. Cryptic yet Adaptive:
      • なぜ「形態」は似たままなのか?(花粉媒介者が同じ? 制約がある?)
      • 一方で「生態(Life form, Phenology)」はどう適応放散したのか?(雪国適応、低地適応など)
    2. Geographic Drivers:
      • 日本列島の地理的要因(日本海側の多雪環境 vs 太平洋側など)が、いかにして14種もの分化を促進したか。
    3. Taxonomic Revision:
      • 11新種の記載の正当性(生殖隔離の間接的証拠としてのSNP解析結果)。

    ・・・的確なアドバイスですねえ。Discussionも、Geminiと相談しながら書けば、さくさくと書けそうです。

     

    もはや、Introduction, Discussionを書くのは、簡単になりました。きちんと結果を書くことが、論文執筆でいちばん時間がかかる仕事になりました。

     

    いかがでしょう? まだGeminiを使っていないそこのあなた。すぐに使いましょう。研究ライフが劇的に変わります。

     

    Deep Researchを使えば、総説もめっちゃ簡単に書けます(ただし、どのような視点で情報を束ねるかについてのアイデアが必要)。この点については、別の記事で書こうと思います。

     

    Gemini 3 が楽しすぎて、2年ぶりにブログを書きました。みなさんのお役に立てれば幸いです。