基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

遺伝子ではなく「代謝」に注目して生命をとらえ直す、化学ノンフィクションの傑作──『生命は変換の環である──生・死・再生のディープケミストリー 』

生命は変換の環である――生・死・再生のディープケミストリー作者:ニック・レーンみすず書房Amazonこの『生命は変換の環である』は、生化学系のポピュラー・サイエンス・ノンフィクションの名手であるニック・レーンの2022年の最新作にして、クレブス回路 (Kr…

公共を拒否し、国からの離脱を求める人々が社会を破壊する──『破壊系資本主義――民主主義から脱出するリバタリアンたち』

破壊系資本主義――民主主義から脱出するリバタリアンたちみすず書房Amazonこの『破壊系資本主義』は、新自由主義の研究者クィン・スロボディアンによる、急進的市場主義者たちの歩みを描き出した一冊である。急進的市場主義者とはなんぞやと思うかもしれない…

独裁者になるなら身を守るために絶対に読んでおきたい一冊──『独裁者の倒し方: 暴君たちの実は危うい権力構造』

独裁者の倒し方: 暴君たちの実は危うい権力構造作者:マーセル・ディルサス東洋経済新報社Amazonこの『独裁者の倒し方』は、ドイツのキール大学安全保障政策研究所で客員研究員をつとめるマーセル・ディルサスによる、独裁者の倒し方について書かれたノンフィ…

何のために火星移住するのか?──『科学的かつ現実的で、崇高かつロマンティックな 火星移住計画』

科学的かつ現実的で、崇高かつロマンティックな 火星移住計画作者:ロバート・ズブリン講談社Amazonこの『火星移住計画』は長いキャリアを持つ宇宙工学者、原子力工学の博士号や熱核融合研究の分野の経験もあるエンジニア、火星協会の創設者でもあるロバート…

2025年、読んでおもしろかった本を振り返る!

今年は4月に子どもが産まれて特にその周辺月がバタバタしていたのもあって近年もっとも本が読めなかった一年だったが、年末年始の読書のお供にできるよう、SF・ノンフィクションを中心に振り返ってみよう。今年は特に前半の方はノンフィクションが、後半の…

統合失調症を患い、矛盾した記憶を「真実」として抱える語り手による、サイコロジカルホラーの傑作──『溺れる少女』

溺れる少女作者:ケイトリン・R・キアナン河出書房新社Amazonこの『溺れる少女』は、ホラーや名手として知られる作家、ケイトリン・R・キアナンによるサイコロジカル・ホラー長篇だ。原書2012年刊。世界幻想文学大賞の最終候補、ネビュラ賞最終候補など様々な…

ラテンアメリカン・ホラーの傑作長篇──『秘儀』

秘儀(上)(新潮文庫)作者:マリアーナ・エンリケス,宮﨑真紀新潮社Amazon毎年この時期(12月頃)は年間ベストについて考えている頃合いだが、「あれは絶対ベストに入るな〜」という作品でも、時間的な都合で記事を書けていないものも多い。そうやって取りこ…

抗生物質が大量生産できなかった旧ソ連圏でひそかに研究され、今まさに日の目を浴びようとしているファージ療法について──『善良なウイルス』

善良なウイルス 世にも数奇なファージ医療の歴史 (文春e-book)作者:トム・アイルランド文藝春秋Amazonウイルスといえば、「コロナウイルス」に代表されるように、人間に感染して悪さをするものというイメージがあるが、世の中には人間を苦しめる細菌を駆逐し…

怪獣が実在する世界で、あえて本気の着ぐるみ怪獣ショーを試みる第二次世界大戦末期の人々を描き出すSF長篇──『ヒロシマめざしてのそのそと』

ヒロシマめざしてのそのそと作者:ジェイムズ・モロウ竹書房Amazonこの『ヒロシマめざしてのそのそと』は、ジェイムズ・モロウによる怪獣をテーマにしたSF長篇だ。2009年に刊行された作品で、元々は2011年にSFマガジン誌上で翻訳を連載していたが、それが近…

人間の性欲の処理が愛玩動物に移行した社会を描き出す、村田沙耶香によるディストピアSFの傑作──『世界99』

世界99 上下巻セット集英社Amazonこの『世界99』は『コンビニ人間』などで知られる村田沙耶香の3年以上にわたる連載をまとめた大長篇だ。10人の子どもを産むことで一人の人間を殺しても良い、特殊なシステムが生まれた日本を描き出す「殺人出産」や、カジュ…

人肉食が合法化した社会で何が起こるのかを描き出す、ディストピア食人ホラーSF──『肉は美し』

SF

肉は美し作者:アグスティナ・バステリカ河出書房新社Amazonこの『肉は美し』はブエノスアイレス生まれの著者による、人肉食が合法化された世界を描き出すディストピアSFホラー長篇だ。2017年に刊行された本作は、ショッキングな設定ながらも全世界100万部…

大富豪が成層圏に二酸化硫黄を散布し始めたら何が起こるのかを全世界規模で描き出す気候変動SFの傑作──『ターミネーション・ショック』

ターミネーション・ショック作者:ニール・スティーヴンスン,坂村健パーソナルメディアAmazonこの『ターミネーション・ショック』は、『スノウ・クラッシュ』をはじめとした数々の近未来・テクノロジーSFで知られるニール・スティーヴンスンによる最新の気…