最速レビュー!アップルの忘れ物防止タグ「AirTag」を試してみた

精度は? 安全面は? 悪用されたら?

発表直後の実機をチェック!

4月23日から予約受付が開始され、30日より発売されるアップルの忘れ物(置き忘れ)防止タグ「AirTag」の実機レビューをお届けする。

昨日発表されたばかりの新製品で使用した時間は限られるが、基本的な使い勝手は見えてきた。どんな場面で便利な機器なのか、じっくり見ていこう。

AirTag。白いボタンのようなデザイン。今回使用したのは、4つ入りのパッケージ(税込1万2800円)
テストには、同じく4月30日に発売される新色のiPhone「iPhone 12 mini・パープル」を利用した。春らしい鮮やかな色が魅力的だ
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「なるほど便利そうだ」

AirTagは、簡単にいえば「複数の短距離通信を使って、荷物の忘れ物(置き忘れ)を防止する機器」だ。小さな通信機で、スピーカーも備わっている。ユーザーがそばを離れて通信が途切れると、スピーカーからアラート音が出て教えてくれるしくみだ。

さらには、「どこに忘れたか」を位置情報として伝え、探し出す手助けもしてくれる。

「なるほど便利そうだ……」と思わされる機能だが、これを実現するのはけっこう大変だ。

まず、バッテリーが長持ちする必要がある。財布の中に入れておいたり、カバンにつけておいたりして、日常的に使えるものでなくてはならないので、ひんぱんに充電するようでは使い勝手が悪すぎる。

AirTagの場合、コンビニなどで売られている「CR2032」というコイン電池が1つ入っていて、これだけで1年以上、動作しつづけるという。

AirTagのふたは軽く回すと外れて、中にバッテリーが入っているのがわかる。使っているのは使い捨てのコイン電池「CR2032」で、コンビニなどでも購入できるメジャーなタイプだ

2つの通信方式

充電せずに長く使えるということは、非常に弱い電波で、ごくたまにしか通信できない、ということでもある。スマートフォンのように、「どこでも自由に通信できる」機器ではない。

バイクや自動車の紛失を防止するセキュリティ機器や、子どもやお年寄りの立ち寄り先を管理できる機器が存在するが、AirTagは、それらとは根本的に異なる製品だ。

AirTagが通信に用いるのは、「Bluetooth」と「UWB」という2つの通信方式だ。どちらも数m程度の範囲にしか電波は届かないが、消費電力が低く、十分にバッテリーを1年間はもたせることができる。

だが、そのような微弱な電波で、どのようにして忘れ物(置き忘れ)を防止するのか?

そのしくみには2つある。

cm単位で「場所」と「方向」を把握

1つ目は、「ユーザー自身が所有しているiPhoneやiPadとの通信」だ。

微弱な電波でも直接通信できる範囲、すなわち数m以内にいるのなら、「忘れているわけではない」ことになる。特に、カバンなどの場合がこれに該当するだろう。こういう状態なら、AirTagは何も発さない。

これで見つかればシンプルではある。

だが、日常的にはもうちょっと面倒な場面も多くある。置き忘れなどではなく、「確実に部屋や家の中にあることはわかっているのに、どこにあるかがわからない」というパターンだ。家を出ようとしたら、財布やカギが見つからない……といったシーンが該当する。

見当たらないのがスマホなら、別の電話から番号を鳴らしてみて、着信音で見つけることも可能だ。しかし、財布に電話番号は振られていない。

ここで登場するのがAirTagだ。

AirTagには、「UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線システム)」という方式での通信機能が内蔵されている。これを使うと、機器のある「場所」と「方向」がセンチメートルの単位で識別できる。

iPhoneに備わっている「探す」機能を使って呼び出すと、iPhoneのUWBを使って通信をおこない、「AirTagをつけたモノがどの方向に、どのくらいの距離にあるか」が画面に表示される。近づくと振動もするので、かなり正確に場所がわかるのだ。

もちろん、ベッドの中やソファの下などに隠れていると見えないわけだが、iPhoneの表示を元に探し出すことが可能なのだ。

iPhoneをかさずと、AirTagのついた機器がある場所の方向と距離が正確に画面上に表示される。筆者の手荷物と財布を探してみた

すごい精度!

この精度が、かなりすごい。

Bluetoothを使った忘れ物防止タグは他社からも提供されているが、UWBを併用したものは少ない。なぜなら、UWBを搭載したスマホがiPhoneくらいしか存在しないからだ。

数cm単位で的確にモノを探せるのは、AirTagの最大の利点といっていい。

ただし、この機能には1つの欠点がある。UWBを搭載したiPhoneでしか、利用できないのだ。

具体的には、「iPhone 11」「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」、そして「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」「iPhone 12 mini」のみが対応している。これらの機種を使っている人には本当に便利なAirTagだが、そうでない人にとっては、少々魅力に欠けるのは否めない。

逆にいえば、忘れ物をしやすい人にとっては、iPhoneを上記の機種に買い換えてでも使ってみたくなるだけの魅力がある製品とはいえそうだ。

では、もう1つの方法はどういうものなのか。

第2の方法

第2の方法が、「Bluetoothを使ったネットワーク」だ。

前述のように、AirTagはUWBとBluetoothの2つの通信方式を使う。Bluetoothの場合、精度は数m以内に落ちてしまうものの、通信可能な範囲内にあれば地図上に場所を表示してくれる。

iPhoneやiPadなどから操作して、AirTagについているスピーカーを鳴らすこともできる。こちらの機能は、UWBを内蔵していないiPhoneやiPadでも使用可能だ。

地図の上に、AirTagをつけた機器の場所が表示される
この写真のように、AirTagを専用のホルダーに入れ、バッグなどにつけて使う

「微弱な電波で海外の忘れ物を検知」がなぜできる?

Bluetoothによる忘れ物検知には、ちょっとした“秘密”がある。

Bluetoothも微弱な電波なので、スマホから遠く離れた場所に直接通信することはできない。ところが、AirTagをつけておけば、家から遠く離れた場所、極端な場合なら海外でも、忘れ物を探すことができる。なぜか?

その秘密が、Bluetoothを使った「メッシュネットワーク」を使う方法だ。

前述のとおり、iPhoneをはじめとするアップル製品には、「探す」という機能が備わっている。これはもともと、iPhoneやiPad、MacにApple Watch、さらにはAirPodsなど、「ユーザー登録され、同一のアップルIDでひもづけられたアップル製品」がどこにあるかを探す機能だ。

それら各機器が「最後に通信して使われた場所」がアップルのネットワーク内に記録されており、その情報をユーザーが検索することで、「最後にその機器があった場所」を確認したり、機器のデータを消去して他人に使えないようにしたりすることが可能になっている。

AirTagもこの機能を使うのだが、通常の「探す」とはちょっと違う点がある。

世界中のiPhoneを使う

「世界中にあるiPhoneを活用する」という点だ。

AirTagは、ユーザー自身の所有しているペアリングされたiPhoneだけでなく、他人のiPhoneとも接続・交信することがある。そして、それら他人のiPhoneを通じて位置情報をアップルに残す。

ユーザーは、その情報を検索することで、遠く離れた場所に置き忘れたAirTagの場所を知ることができるのだ。世界中のiPhoneを結び、まるで「網の目」のようにBluetoothのネットワークができ上がることから、こうした構造を「メッシュネットワーク」とよぶ。

セキュリティやプライバシーは大丈夫?

「他人のiPhoneを通じて位置情報をやりとりする」と聞くと、セキュリティやプライバシーの面で心配になるが、その点は大丈夫だ。やりとりされる情報は暗号化されており、経路となる個々のiPhoneの持ち主からは確認できないようになっている。そもそも、他人のAirTagについては、存在自体がわからないようにできている。

取得された位置情報は、AirTagを登録した際に使用された「アップルID」の持ち主だけが確認できるしくみで、アップルですら知り得ない。

加えて、記録されるのは「最後にその機器があった場所」だけで、どこをどう移動したのかといった情報は含まれない。AirTagは、あくまで「モノが置かれていた場所の記録」「忘れ物(置き忘れ)防止」を想定したものなので、人やペットのように「移動しつづけるもの」の記録には向かない。

前述のとおり、つねに位置情報が送信されているわけではなく、ごくたまにしか記録されないからだ。つねに移動する生き物を検出するには向かない構造だが、忘れ物の大まかな位置を知るなら、これで十分というわけだ。

だが、メッシュネットワークの機能が不都合にはたらく場合もありそうだ。

ストーカーに悪用されたら?

たとえば、「持ち主不明のAirTag」が自分の荷物に入っている……というケースが考えられる。いわゆる「ストーカー」行為で悪用される場合などだ。

思わず不安に感じてしまうが、AirTagは、このような場合に緊急避難的に利用できる機能を備えている。

もし、自分のものではないAirTag、つまり、自分のアップルIDにひもづけていないAirTagを見つけたときには、警告を出して無効にしたり、電池を抜いたりして対応できるようになっているのだ。このような処理には、iPhoneをもっている必要はない。Androidなどの他のスマホでも、スマホ側についているNFCマーク(おサイフケータイマークになっていることも多い)にタッチすることで表示されるウェブから対応できる。

自分が使っていないAirTagを発見して、無効化することも可能だ

最大の欠点

試用してみた範囲では、AirTagにはかなり優秀な機器であるという印象を覚えた。

ポイントは、UWBによる室内での場所探しと、iPhone利用者の多さによる「場所検知の精度の高さ」だ。

他の忘れ物防止タグの場合、メッシュネットワークを構築する条件が「同じ忘れ物タグを使っているユーザー同士」になるため、iPhoneを背景にしたAirTagに比べ、どうしても利用者数の面で劣り、検知の精度が落ちてしまう。特に、都市圏以外の人口が密集していない地域では厳しいだろう。

世界中で普及しているiPhoneの「圧倒的な数の多さ」を背景にしていることが、AirTagの最大の利点だ。

一方、最大の欠点は価格面だ。AirTagは1つで3800円(税込)、4つセットで1万2800円と、他社製品に比べ1000円程度高い。

また、ボタン状のデザインのため、カバンなどにぶら下げるためには別途、アクセサリーが必要になる。

オプションとして販売されるAirTagレザーループ(税込5500円、茶色)とAirTagループ(税込3800円、白)
同じくオプション製品のAirTagレザーキーリング(税込4500円、茶色)

この金額をどう考えるか。実際に使用してみて、体感した精度を考えると、ギリギリ許容できる範囲かな、というのが筆者の感想だ。

忘れ物が心配だという人は、ぜひ一度、検討してみてほしい。

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