法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

TVアニメ『呪術廻戦』第51話が海外で好評なことが、むしろ日本との価値観の断絶だとして反発する意見が一定の賛同を集めていて、ある意味で興味深かった


呪術廻戦3期4話、海外では評価9.8/10らしい。
結局、あいつらは戦闘にしか興味無い
『作画がすごい!』『凄いオーラ!』
これしか言ってない。
アニオリでアニメ勢にも分かりやすいように死滅回游のルールを説明して日本で大絶賛された3話があっちでは7.7/10だからな
確信した。外人との共生は無理だ。鎖国しよう。価値観が違いすぎる

 そもそも「海外」とひとくくりにして、その高評価のなかの意見に多様性がある可能性を無視しているとしか思えないが。
 実際、こうした日本の一部の不思議な反応に対して、家父長制の打倒を描いた物語が日本では評価されないのだろうと憶測されているようで、それがまた日本の一部で反発されているわけだが、それはつまり家父長制の打倒による爽快感が海外の高評価の背景のひとつということだろう。


偏った情報を目にしているだけなのだが、最新の呪術廻戦への日本語での「批判」として「原作の意図に反している」というものを多く、その他の言語での「擁護」として「家父長制をよりシャープに批判している」というものを多く見ている。
前者がフィクションの内側に閉じ、後者が外側に開かれている

 日本の少年漫画で家父長制を批判したり打倒するものは少なくないとは思うが、いわゆる「囚われの姫」や「冷蔵庫の女」を少年主人公が救うのではなく、女性自身がシスターフッドで構造にあらがっていく珍しい良さはあった。

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 一方、その家父長制を象徴する家の男子が、いかにも少年漫画的に好感をもてる少年や、器の大きそうな大人もふくめて、構造の維持に全力をつくしている。
 なかでも家父長制を極めることで滑稽に描かれている青年が、技術的に劣っているはずの存在でも尊敬している男がいたという内面を発露して、キャラクターに奥行きを出しつつ性差別ぶりを徹底させていて凄かった。

 そしてその滑稽な青年の技術が、アニメ作画の動きを現実で実行するような能力なので、この第51話が過去の優れたアクション作画を引用している*1ことに物語上の意味もある。少なくともOPの美術の引用よりは文脈がわかりやすい。

*1:『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』 - 法華狼の日記ã‚„ 『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』第3話 鉄骨のひと - 法華狼の日記の中村豊パートがわかりやすいが、他にも 『かぐや姫の物語』 - 法華狼の日記の橋本晋治パートなど、描線を変えるレベルで引用をおこなっている。監督の御所園翔太も共同でコンテに入っており、一部アニメーターの暴走ではなく複数スタッフが意図をもって引用していることは明らかだろう。

日本で原子力発電所の運用が難しいのは、電力会社の甘えた態度が最大の原因じゃない?

 以前から思っていたことだが、その印象をあらためて裏づける出来事が別々の原発で連続した。
東京電力HD 予定していた柏崎刈羽原発の再稼働を延期 原因は制御棒めぐる不具合…建設当時からの“設定ミス”で | TBS CROSS DIG with Bloomberg

見つかった制御棒の設定ミスは88個。

東京電力は運転停止中の原子炉で行うもので、安全上重大なトラブルではないと説明。すべての制御棒の点検に2日程度必要なため、きょうの再稼働を延期すると発表しました。

柏崎刈羽原発6号機が再稼働 制御棒の警報システム巡るトラブルで日程“後ろ倒し”も県技術委は東電の対応を評価 新潟 | 新潟のニュース・天気|BSN NEWS|BSN新潟放送

【県技術委員会 小原徹座長】
「皆さん非常に真摯に、一つ一つ呼称しながら確実に操作をするという、非常にしっかりした機械操作をされていた」

再稼働は、制御棒の警報システムを巡るトラブルで当初の予定から1日後ろ倒しとなりましたが、小原徹座長は「トラブル対策のチームがすぐに集まり、原子炉の安全を確認した」と述べ、東電の対応を評価しました。

14年ぶりに再稼働した柏崎刈羽原発6号機 1日も立たずに原子炉停止へ 警報が鳴り原因調査に時間がかかると判断 新潟 | 新潟のニュース・天気|BSN NEWS|BSN新潟放送

再稼働から5時間半後の22日午前0時半ごろでした。制御棒を引き抜く作業を続けていたところ、警報が鳴ったため、作業を中断。

こうした中、東京電力の小早川智明社長は22日午前、自民党県議のもとを訪れ、再稼働にあたり安全最優先で取り組む決意を伝えていました。

 こうして東京電力による原発再稼働は延期になったが、他の電力会社は誠実に原発を運営しているかというと、必ずしもそうではない。
「裁判所としてもはなはだ遺憾に思う」浜岡原発廃炉訴訟で裁判長が苦言...中部電力は自らの不正理由に「訴え却下」求める=静岡地裁 | TBS NEWS DIG

1月22日の口頭弁論で原告側は、中部電力について「ねつ造という極めて悪質性の高い不正が行われた」と指摘。

また静岡地裁の平山馨裁判長は「裁判所としてもはなはだ遺憾に思う。裁判所として考えるところがある」と述べました。

また、中部電力は今回の問題も踏まえて訴訟に時間を要するため、裁判所に対して原告側の訴えを却下するよう文書で要望したということです。


<原告弁護団 青山雅幸弁護士>
「自分自身が不正を行ったため、審査をやり直すには膨大な時間がかかります。だから15年行われている本件訴訟も時間がかかるから却下してくれと言っている。ここまで裁判所を侮辱した訴訟行為がかつて存在したのでしょうか」


 たとえば、どれだけ安全基準を満たした自動車があったとしよう。
 しかしその運転を、ひどい交通事故を過去に起こして、その後もルール違反や虚偽申告をくりかえす運転手にまかせたいと誰が思うだろうか?
 それらのルール違反や虚偽申告は運転前の行為なので交通事故にならなかったとしても、それを安全が確認されたと考えるべきだろうか?

『機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影』

 サンライズのWEBコンテンツ「矢立文庫」の連載小説を、2017年に短編OVA化。韓国出身の生え抜きアニメーター金世俊が、初監督および脚本に絵コンテ、キャラクターデザイン、さらに作画監督や原画も担当した。

 ひとりの若手アニメーターがすみずみまで絵作りした作品は、ほとんどの作品を演出家が主導してきたシリーズでは珍しい。建造物の窓ガラスに反射するモビルスーツなどの巨大感や、柔らかい描線のキャラクター作画などは楽しめた。
 しかし内容はシリーズの知識を観客がもっていることを前提として、あまりに説明不足。しかもイメージ優先で時系列を前後させて、登場人物が何を目指しているのかすらよくわからない。
 これならばむしろ尺をもっと短くして、原作の宣伝にわりきったショートアニメにしたほうが楽しめたと思う。それっぽいドラマのエッセンスだけ感じさせるよりも、原作で展開されるドラマを観客に想像させる方向で。

『相棒 season24』第13話 信用できない語手

 紅茶店で杉下右京は浦神鹿に再会する。まだ小説を一行も書いていない浦神だが、天才ではないと自覚して参考となる本を読み始めたのだという。そのなかに読者の視点の役割りが期待される登場人物が読者を裏切るパターンがあったという。
 自身の家族が被害者となった放火殺人の調査を特命係にうながす浦神。実際に杉下が捜査してみると、たしかに被疑者死亡という結論に疑問が出てくる。しかも浦神の周辺には恋愛感情のもつれとされる放火殺人が多数あり、アリバイを浦神と友人が証明しあっていた……


 同じ真野勝成脚本による前シーズン最終回SPに登場した、若き政財界のフィクサーが再登場。
 監督は橋本一で、冒頭の河川敷の火災にはじまり、浦神の廃墟のような本拠地や、逆光を多用した撮影など、このドラマとしては事件の規模に応じて雰囲気ある絵作りをしていた。
『相棒 season23』第19話 怪物と聖剣~決戦 - 法華狼の日記

杉下のライバルのようにふるまう浦神鹿も、あたかも今後も対決がつづくように結末でにおわせているが、犯罪をゲームのように楽しんで高笑いする平凡な犯人キャラクターで新鮮味がない。

 内容については、真野脚本回で描写されがちな慈善活動への安易な偏見はなかったし、以前のタカハシと違ってキャラクターを使い捨てないことはいい。
 しかし、そもそも浦神のキャラクターにまったく魅力がない。何の利益もないのに杉下を挑発して、利用した仲間だけでなく自分自身が放火殺人に手を染めたことを暴かれ、政財界のフィクサーという立場を失って逃亡犯になって終わる。サイコサスペンスなら、狂ったキャラクターなりの狂った論理が解明されて奇妙な行動に説得力が生まれるのに、少なくとも今回の浦神には杉下に自分たちの犯行を調べさせる理由がいっさい見えない。
 当時に警察を騙した遺書についても、被疑者との関係の近さから同じ筆跡を浦神が偽造できたというだけで、ほとんど浦神が誘導するままに杉下は一直線で真相に気づく。犯人に誘導されるように正答しただけでは、名探偵らしい推理力を発揮したとは感じられない。


 このドラマでは徳永富彦脚本で、同じように謎めいた悪のカリスマ南井十が連続ストーリーで描かれたことがあった。
『相棒 season16』第7話 倫敦からの客人 - 法華狼の日記
 しかし各話のミステリとしての出来が悪くなかったし、最終的に明らかになった狂った論理には異様な説得力と意外性が両立していた。
『相棒 Season18』第15話 善悪の彼岸~深淵 - 法華狼の日記
 今回の浦神鹿も、同じように奇妙な行動に説得力のある動機を明かしてくれれば、今回の疑問点は爽快感に変わる余地はあるのだが……

陰謀論についての共著とは無関係な論点でも共著者の責任を負うべきと黒猫ドラネコ氏を批判しながら、批判者が過去に陰謀論に加担した責任は負わせるべきではないかのような反応がよくわからない

 上記書籍に対して、共著者の書籍とは異なる部分を批判して、寄稿している黒猫ドラネコ氏を追求しようとする動きがあった。
 もちろん寄稿を決めた時には知るよしもない共著者の全責任まで負うことは難しくても、その悪質性によっては相応の態度が求められることもあるだろう*1。


 一方、その追及をおこなう者が、しばしば過去に暇空茜こと暇な空白氏の陰謀論に加担したという指摘もされていた。
【悲報】黒猫ドラネコ信者が「黒猫ドラネコさんを批判しているのは暇アノン」ということにして陰謀論者と仕事擁護を試みる - posfie
 しかし上記Togetterはタイトルやツイート*2の選択で、黒猫ドラネコ氏の追及者がすべて陰謀論者であったと指摘されたかのように文意をねじまげている。
 引用されているツイートを見ると、あくまで黒猫ドラネコ氏に共著者の責任を問う側が、自分自身の責任を問われるべき過去をしばしば持っていることが指摘されているだけ。


つか、検索ワードとして「暇空」万能すぎるんよw そいつが科学だなんだと言ったところで、「暇空」で検索して暇空に対するスタンス見るだけで、そいつの中身がゴミなのかが一発で判明する。


黒猫ドラネコさんに文句付けてる人のツイートを「暇空」で検索するとヒット率高すぎて草

 実のところ、2023年末には暇な空白氏の虚偽は広く信じられ、動機などもふくめて賛同もされていた。黒猫ドラネコ氏の責任を問う側が信じた比率が、そうではない側が信じた比率より高いかどうかは判断しづらい。
 だが、陰謀論批判をおこなう共著者の共著とは別個の問題点について責任を求めるなら、そうした別個の問題点を指摘する側が自ら加担した陰謀論について指摘されることも当然ではないだろうか?


 しかし上記のTogetterに対して、はてなブックマークでid:frothmouth氏が、おそらくは引用されている指摘を後ろ弾と評していた。
[B!] 【悲報】黒猫ドラネコ信者が「黒猫ドラネコさんを批判しているのは暇アノン」ということにして陰謀論者と仕事擁護を試みる

frothmouth こういう後ろ弾に、黒猫ドラネコ氏がどういう反応をするかで真価が問われる/黒猫ドラネコ氏を批判というより、ちだいへの批判が大部分じゃないかな?謝罪も撤回もしていないし、今後も批判され続けるだろう

 ちなみにfrothmouth氏も過去のいくつかの反応を見るかぎり、暇な空白氏の陰謀論にしばしば加担し、支援団体Colaboにまつわる事実誤認を流布してきたひとりである。
Colaboへの監査請求を支持する動機に「リーガルハラスメント」もあることが、はてな匿名ダイアリーで語るに落ちていた - 法華狼の日記
東京都の支援事業が想定以上の相談数でリソース不足を露呈した問題が、なぜか支援団体の問題にすりかえられている謎 - 法華狼の日記


 また一般人の責任は黒猫ドラネコ氏より軽いと考えても、くだんの書籍の共著者をSNSだけでなくnoteでも批判*3している林智裕氏は、下記のように暇な空白氏が流布した陰謀論を信じてColaboをバッシングした過去がある。
書籍配布プロジェクトに公金がつかわれていると根拠なく断言されただけで、かつてファクトチェックをおこなっていた林智裕氏が頭から信じてしまっている - 法華狼の日記
 もちろん、くだんの書籍と直接的な論点は重ならないだろうが、同じように論点が重ならない黒猫ドラネコ氏よりも明らかに重い責任を負っているとは考える。

*1:過去に出版社を選んだ時に、その性質ごとに責任を問われることがあるという事例を紹介したこともある。 ゲームの時間は終わらない - 法華狼の日記

*2:現ポスト。

*3:陰謀論を信じるのはリベラルよりも保守?|HAYASHI Tomohiro