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【個人開発者向け】iOSアプリを4年間で5万本インストールした話

2025/01/02に公開

2020年〜2023年の4年間に日本で出たiOSアプリのほとんど全部(ゲーム、日本語に非対応のものを除く)、計5万1350本をインストールし終えました。
一台のiPhoneに全部入れるのは無理なので、バックアップを取って後からインストール可能にしてあります。
(アプリ名が見えると怒られそうなのでモザイク入り)
バックアップしたIPAファイルの一覧(ファイル名にはモザイク入り)

また、集計したついでに各フレームワークの使用割合をリポジトリーにまとめてあります。
中にあるapps.jsonというファイルにインストールしたアプリのAppIDを並べてあるので、毎年せっせとインストールしたんだなーというのが雰囲気で伝わると幸いです。
https://github.com/hyshu/AppStoreStats

ちなみに2024年からの分はしません。というのも、日本で唯一 App Store のアプリを新着順でほぼ全部見られるサイトがあったのですが、去年の7月頃にサービス終了してしまい、続けられなくなったためです。

なぜしようと思ったのか

アプリのインストール作業に4年間で1000時間以上は費やしたと思います。
アプリなら5〜10本は新しくリリースできていたでしょうし、いくらアプリ好きとはいえインストールに伴うストレスも中々のものでした。

それでも続けていた理由は、「根拠を持ってアプリを成功させたかった」ためです。

これまで仕事・個人で何本もアプリを開発しましたが、十分な宣伝費を掛けたものを除き、成功したアプリは
こういうアプリなら人気が出るだろうと思って作ったらヒットした」ものがほとんどでした。
直感と運に頼る側面が大きく、成功時と失敗時の違いを分析しづらいという問題があります。

毎年出るiOSアプリのほとんどをインストールすると、成功するアプリと失敗するアプリの違いや法則が見えてきます。
100%は無理でも成功率は高まるでしょうし、失敗した時の原因分析もしやすくなります。

また、2019年辺りからうっすらと感じていたのですが、AIによってコーディング作業のほとんどが不要になる未来が確実になってきています。
そうなると、AIでは代替できない技術、知識、知見が重要になっていきます。

iOSアプリはストアの仕組み上、手動でしかインストールできず、時間経過で公開終了するものも出てきます。アプリがリリースされてから人気が出るまでの過程が追えるのも期間限定です。
こういったデータはストアの運営元や一部の調査会社しか集めていないでしょうから、個人が持っていることは強みになります。

個人開発で成功するには

一年以内での成功率は1%未満

「個人開発アプリ」は明確な定義が出来ない区分なので厳密には調べていないのですが、個人で開発できる規模のアプリは、インストールしたアプリのうち1万本〜1万5000本の範囲だと思います。

このうち、リリースして最初の一年で30件以上の評価が付いていて、平均評価が4.0以上のアプリを
Apple Developer Program の年会費以上の売り上げが出ている=成功しているアプリ」と仮定した場合、間違いなく1%を切っています[1]

期待値の高いジャンルで作るのが堅実

何故個人開発アプリが成功しづらいのか、成功しづらいアプリの特徴…などについてのデータもありますが、個人開発ってそもそも自由にアプリを作れることが利点ですし、そういうことを書いても楽しくないので、
今回は「どういうアプリが成功しやすいのか」について書いていきたいと思います。

結論としては「期待値の高いジャンル」のアプリを作ることが大切で、特に高いのは以下の二つです。

波に乗る

今まで製作不可能だったアプリが作れるようになった」「そのジャンルを求める利用者が急増した」などの理由で特定のジャンルのアプリが一気に増え、レビュー、評価、ランキングから推測できる利用者数も他のジャンルより多い…という波が毎年何度か発生します。

一番印象的だったのは、2019年にiOS13が登場した時です。
(当時から試験的にアプリのインストール作業をしていました)

iOS13にはCore NFCが搭載され、アプリ開発者もiPhoneのNFC機能を使ったアプリが作れるようになりました。
なので、Core NFC を使ったアプリの公開が解禁された初日に十数本のICカードリーダーアプリが登場し、バージョンアップ競争が勃発。
App Store で検索していただくと分かるように、万単位の評価が付いているアプリが何本もあります。とんでもない期待値の高さですね。

その一方で、iOS14のWidgetKitが登場した時はそこまででもありませんでした。
iOS14が出て間もない頃から高品質なアプリがいくつか登場し、万超えの評価が付いたものもありますが、個人で真似するのは難しいかなという印象です。

どんな波にも期限があり、ある時期を過ぎると他のジャンルと同じくらいの期待値になります。
例えば、AI機能を前面に出したアプリが注目され、ダウンロード数に拍車が掛かったのは2023年の10月頃までかなと思います。
それ以降は「AIアプリだから人気が出る」ということはほとんど無く、純粋に便利さや面白さの勝負となっています。
個人でも作れるようになったのは3月に ChatGPT API が公開されてからなので、波に乗れたのは大体半年間くらいでしょうか。
なので、どちらかと言うと新しく登場したAIアプリが人気を博すよりも、既にリリースされているアプリにAIを活用した機能が搭載されて人気が高まる、ということの方が多かったように感じます。

AIの半年続いた波でも長い方で、大抵は1〜3ヶ月以内にアプリが出せないと厳しい場合が多いです。どれくらいの品質であればダウンロードされるかの見極めが大切です。
もちろん最初から高品質なアプリが出せる方が人気になりやすいので、予め素早くアプリがリリースできるように準備しておくか、次に来る波を予想して先にアプリを出しておく、といったことも重要なのかなと思います。
それでも開発に掛ける時間と比較しての成功率は、他のジャンルよりかなり高いのでおすすめです。

期待値の高いジャンルで作り込む

ヒットするアプリはすぐに結果が出る」と個人開発者の方々は良くおっしゃっている印象があります。
私も上手く行ったものはリリース後一ヶ月以内にASOで良い順位になったり、口コミでダウンロードしていただけたりする場合が多いので納得感があります。
ただ、実際にストアのアプリをインストールしていると意外とそうとは限らないことが判りました。

アプリって面白いことに、スマホに最初から入っているような定番ジャンルでデザイン、機能、操作性をしっかり作り込み、アイコンとストアのスクリーンショットも最低限ちゃんとしたものにすれば、宣伝しなくてもダウンロードされるんですね。
非常に良く作り込まれているアプリなのに評価数件…みたいなことは滅多にありません。私の一般的な感性で見たアプリの品質と、レビュー・評価の乖離は少ないです。

特に「カレンダーで何かを管理する」アプリは毎年高い期待値があります。
スケジュールはもちろん、家計簿、日記、記念日、バイトのシフト…などなど。
既に人気アプリが何本もあるジャンルは差別化を図る必要がありますが、人はちょっとした操作性やデザインの違いでも好みが分かれるようです。
シンプル、可愛い、かっこいい見た目、記録をする時のUI、カレンダーの日付をタップした時の挙動、共有や共同編集機能など、差別化できることは沢山あります。

ちなみに、リリースして一年以内に成功する割合が低いのは「作り込む必要がある」点も大きいです。
特に副業としての個人開発の場合、一年で人気アプリになれるほど作り込むのは難しいですし、根気も要りますよね。

まとめ

以上をまとめると

  • 普段は多くの需要があるだろう、スマホに誰もが入れていそうな定番ジャンルのアプリを作り込んでいく
  • 特定ジャンルに波が来たら速やかにアプリを作って波に乗る。出来れば普段から素早く作るための準備をしておく

が、副業としての個人開発において、一番無難かつ期待値の高い方法かなと思います。
もちろん人によっては自分の強みを活かせるジャンルがあったり、成功率が本来低いジャンルで何本もヒットさせている方もいらっしゃったりするので、誰にとっても最適解という訳ではありません。

おわりに

知見の共有によってアプリの成功率が高まると業界の活性化に繋がると思うので、書いても問題なさそうなものは時々記事にしていきたいと考えています。

ちなみに今回書いた内容は「成功した個人開発のアプリ」という、全体の1%未満の知見です。
残りの99%強の知見は「このジャンルのアプリは成功率が低い」といったものが多く、書いたら非常に気まずくなりそうなので書きません…(そもそも成功率が低いだけで成功しない訳ではないですし)

もし記事に書きづらい知見にもご興味のある方は、どこかの勉強会に出没した際にお声かけください。
その日のテンションにもよりますが、きっと活き活きとアプリの話をし始めることでしょう(´^ω^`)ニチャァ

脚注
  1. AppIDが分かればiTunes Search APIで評価数と平均評価数が調べられるので、1%未満という数値は大まかに検証が可能です。
    2023年にインストールしたアプリ一覧のうちのconfirmedに分類されているアプリを調べてみると、本記事執筆時点でストアに公開されているものは1万593本あるものの、評価数30件以上かつ平均評価が4.0以上のものは797本しかありませんでした(約7.5%)
    アプリの公開後1〜2年経っているのにも拘らず7.5%しかなく、個人開発アプリはその中の一部なので、数値としては妥当かなと思います。 ↩︎

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