雑草の言葉

プレッパーズ

2021/02/23
都市/文明 6
 現在、世界最大のコロナ感染国であるアメリカでは、コロナ禍が起こるずっと以前から、感染症のパンデミックに備えてきた人達がいます。パンデミックだけでなく、自然災害や経済恐慌などの深刻な事態に備えて、周到な準備を進めている人々がいるのです。彼らは、「プレッパー」と呼ばれています。
 プレッパー[Prepper]とは、prepare[準備する、備える]に由来し、「備える人」を意味する言葉です。自然災害やパンデミックなどで発生するカタストロフィー、更には現代文明の崩壊に備えて、物資の備蓄やサバイバル術や狩猟採集のスキルなどに取り組んでいる人たちの事です。その中には、世界の終末が訪れると本気で信じている人がいるのです。彼らは、その脅威に備えるライフスタイルが生活の一部になっているのです。
 現在の日本にもそう言う人はいるのでしょうが、アメリカにはプレッパーが数百万人もいるとの事のです。実にアメリカ国民の1%以上がプレッパーなのです。
 彼らはパンデミック、気候変動、地震、火山の噴火、核戦争、原発事故(メルトダウン)、金融危機、ハイパーインフレなどに至るシナリオを想定して、それに備えて準備しています。
 文明崩壊後、すなわち現代社会のシステムが崩壊した後は、生産や物流は止まり、食料や日用品の購入は不可能となり、暴動、略奪、戦闘が起こるというシナリオを描いています。それに備えて、長い期間の食料・水・医薬品・N95マスクや隔離服を備蓄するだけではなく、自給自足で生活するための農場や家畜を所有したり、狩猟採集のスキルを磨いたりしています。更には身を守るためのサバイバル訓練、武器の扱い方を習ったりもしています。武器の備蓄もしています。

Preppers SURVIVE 縦

 彼らの対策の中で興味深いものをいくつか挙げてみます。
 先ず、遺伝子操作されていない在来固定種の種の備蓄です。自分で採種して何年も繋げていくことが出来るだけでなく、農地を持っていなくても、逃げていった先で蒔く事もできます。そして、お金に価値が無くなった崩壊後の社会では、物々交換に強く、貨幣代わりにもなるのです。
 次に昆虫の飼育です。飼育や繁殖が楽で、タンパク源になるからです。
 更に、食べられる雑草の知識を得たり、野生動物・魚を捕獲する練習も行っています。マッチやライター無しで火を起こす訓練もしています。
 水は、大量に備蓄しているだけでは無く、井戸を掘ったり、汚れた水や尿を飲めるように濾過する装置を持っていたりします。
 闘争に備えては、武器庫を充実させるだけではなく、プロから本格的な戦闘訓練を受けるプレッパーも少なからずいるとの事ですから、アメリカらしいと思います。
 また、ペットを兼ねた番犬としての犬を飼うだけではなく、いざという時には、その犬を非常食にすると考えているプレッパーもいるそうです。
 プレッパーズの興味深い取り組みは、まだまだ色々ありますが、このへんにしておきます。

 ここで、プレッパーのスタンスについて述べてみます。
 彼らは、政府などからの公的支援を当てにせずに、自力で生き延びることを信条としています。
 政府やマスメディアを信じず、国際資本家を敵とみなす傾向が強いのです。だから、情報源も支配階級の力が及ばないローカルなラジオや身近なコミュニティ、そしてインターネットに頼っているのです。
 ある程度経済的な余裕がなければプレッパーになるのは難しいと思いますが、富裕層とは限らず、国際資本家連中を敵とみなしているところが興味深いところです。この庶民的なプレッパー達は、アメリカの建国精神に基づいた抵抗権・革命権を主張するかのように、自分たちのコミュニティを自分たちで防衛しようと考えています。「自立と責任」という価値観を大切にしているのです。
 このような庶民的なプレッパー達は、頭がおかしいとは思いませんし、嫌悪感もありません。寧ろ好感が持てるかも知れません。

 しかし、彼らが敵とみなし、文明崩壊のきっかけを作ることにもなりそうな、国際資本家、大富豪のプレッパー達の準備は頂けません。
 大富豪のプレッパー達は、人口が少なく、他者があまり侵入してこない孤立した場所、例えば森林やニュージーランドなどの広大な土地を購入して、食料や発電機や弾薬を備蓄しています。プライベートな消防士や奴隷に近い労働者まで雇ったりして備えています。さらには、食料供給網に、自分たちしか知らないロックをかけたり・・・かなりエゴイスティックな策謀をめぐらせています。
 大富豪専用の避難シェルターとして、チェコには、世界最大の地下壕が建設されました。同じような施設がアメリカなどにも建設されています。
 彼らには、近い将来起こりそうな、何らかのカタストロフィーの情報がもたらされているのかも知れません。彼らには、一般庶民よりも先に有利な情報を得て、自分たちだけ助かろうという匂いがぷんぷんします。

 プレッパー達がプレッパーになったきっかけは、大恐慌、9.11同時多発テロや日本の3.11東日本大地震の津波や原発事故などのカタストロフィーの映像を観たことや、強盗被害や山火事被害、ハリケーンの被害などに実際に遭った事などがあるようです。
 しかし、数々の陰謀論やカタストロフィーの情報が渦巻くネットからの情報がいちばん大きいのではないでしょうか?かなりの強迫観念を持ったプレッパーも多々いるようです。・・というよりもプレッパーになるような方々は、元々強迫観念が大きい方が多いのでしょう。

 アメリカ以外にプレッパーがどのくらいいるかは分かりませんが、プレッパーの人数は今のところ、アメリカが断トツに多いようです。アメリカはそれだけ不安定な国になったのだと思います。そして、これから世界中に広まっていくように感じます。日本はアメリカに影響され易いので、日本でもそのうちプレッパーが多く現れる可能性は高いと思います。しかし、武装して戦闘訓練をするのはやめて欲しいと思います。アメリカのような暴力国家にはなって欲しくはありません。

 瞬時のポールシフトを危惧しているプレッパーもいるとの事ですが、それこそ「杞憂」でしょう。そんな絵空事は起こらないでしょう。万が一そんな事が起こるとしても、備え切れるはずがありませんし、危惧しても仕方がない事です。流石にそんな人達は頭がおかしいと思います。
 しかし、プレッパーは決して頭のおかしな人ばかりとは思いません。私も21世紀中に文明崩壊は起きる可能性が高いと考えています。少なくとも今回のコロナ禍よりはもっと大きな危機が世界に起こるでしょう。現代社会には、カタストロフィーや文明崩壊を引き起こす要因が多々あるからです。だからプレッパーが進めている準備は、杞憂とも言えず、ある意味先進的な取り組みやも知れません。プレッパーが沢山出現している現代社会は、終末に差し掛かっているのかも知れません。


<参考サイト>
Wikipedia プレッパー
https://ja.wikipedia.org/wiki/プレッパー

“世界の終末”に備える「プレッパー」という人々を知っていますか
https://note.com/minan_o/n/nb982fcdebe34

気候変動が生む、新たな「アパルトヘイト」
https://globalnewsview.org/archives/10390

アフターコロナの世界は「ミニマリスト」から「備蓄」の時代になる
https://president.jp/articles/-/34513


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Comments 6

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guyver1092

DIY

 アメリカでは、DIYが盛んだそうですが、身の安全もDIYでするというのは納得で、世界一プレッパーズが多いというのも納得です。
 文明の大きさは人口の規模に制限されますので、カタストロフィーが有って人口が激減すれば、富豪の持つ優位性もいずれ必ず失われると考えますが、記事を読む限りは富豪のプレッパーズはそんなことは考えもしていないように思えますね。大富豪であるのなら、自分の影響力を利用して、社会全体を維持する方向に世界を方向転換させればよいのにと思うのですが、方向転換は自分の大富豪としての地位を脅かすことと感じているのでしょうか?

2021/02/25 (Thu) 22:36
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: DIY

guyver1092 さん

>  アメリカでは、DIYが盛んだそうですが、身の安全もDIYでするというのは納得

アメリカ人の「自立と責任」の精神は強いとも言えますし、もう、国、政府を信じていない人が多いのでしょうね。


> 大富豪であるのなら、自分の影響力を利用して、社会全体を維持する方向に世界を方向転換させればよいのにと思うのですが、

世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加するような大富豪(巨大デジタル企業のCEO等)は、社会を自分たちの思うがままの方向に導こうと策謀をめぐらせているかもしれませんが、多くの大富豪は自分達だけが助かる方法を万全にしているように見えます。だから、何らかのカタストロフィーの情報がもたらされているのでは無いかと思うのです。(陰謀論っぽいですね。笑)

>方向転換は自分の大富豪としての地位を脅かすことと感じているのでしょうか?

結局理性的な解決策は、経済縮小の方向になるでしょうから、地位は脅かされると感じていることでしょう。

2021/02/26 (Fri) 16:30

森の妖精アイ

何かあっても自分たちだけ生き残ること考えるより、みんなが生き残れるように世の中変えた方が楽で楽しいと思うけどな。それが無理だったら、みんな一緒に滅びるんだろうから。一人だけ(一握りだけ)では生きていけないと理解できないって、どんな生き方して来たんだろう。

2021/02/26 (Fri) 21:47
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: タイトルなし

森の妖精アイさんのおっしゃる通りだと思います。
しかし、アメリカはかなりの分断国家で、庶民が国家に守られないと感じている国民も多いようですので、自分たちの身は自分たちで守ろうと言う考えは非難すべきでは無いかと思います。それにプレッパー達は、自分の家族だけでなく自分たちのコミュニティーの人全員分の備えをしている人もいるようです。
ただ、金融恐慌や環境破壊に加担している大富豪ほど、自分たちだけ生き残ろうと言うスタンスを感じます。
大富豪専用の避難シェルターなんて、とんでも無くふざけた話かと思います。

2021/02/26 (Fri) 23:35

爽風上々

中身には大差があるようで

最初の記事にも書かれているように、「自給自足して生き残る」という人たちと、「金にあかせて生き延びる」という連中とは、たとえ同じプレッパーと呼ばれていても大差があるように感じます。
私の考えている「脱エネルギー社会」では、当然ながらすべて自給自足が原則ですので、前者の人々とかなり似たところがありますが、後者の「大富豪専用避難シェルター」などというものはまったく無関係でしょう。
(弊ブログの「エネルギー文明論」をご参照ください)
とはいえ、望めばある程度は現代でもそういった生活が可能というのはやはり広大な大陸ならではのことでしょう。
日本では孤立生活を望んでも「衛星から見つけた一軒家」と言われてしまいそうです。

2021/02/27 (Sat) 09:02
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 中身には大差があるようで

> 「自給自足して生き残る」という人たちと、「金にあかせて生き延びる」という連中とは、たとえ同じプレッパーと呼ばれていても大差があるように感じます。

その通りです。記事に書いたように、庶民的プレッパーズは、他の人々にはあまり迷惑は掛けていません。逆に自分たちのコミュニティーを守ろうと考えていて、地域の人を救おうと考えている人々もいます。
それに対して大富豪のプレッパーは、かなりな利己主義に感じました。有り余る食料さえ、庶民に分ける気は無いようです。

> 当然ながらすべて自給自足が原則ですので、前者の人々とかなり似たところがありますが、

その辺りは当方もこのブログの当初より検討しています。自分でも少し実験を始めております。

2021/02/27 (Sat) 20:48
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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