堀江貴文逮捕による本当の損失
2007年03月18日 プログラミングTIPS
ホリエモンこと堀江貴文氏が逮捕され、懲役2年6月(求刑・同4年)の実刑判決が言い渡されました。
日興コーディアル証券の一件と比べられたりもしています。
「恋におちたら」や「ハゲタカ」のようなTVドラマでも、似たような事例が取り上げられています。
インターネット事業は「虚業」だとか、そのように言われてしまうこともあります。
本当に堀江貴文氏は、インターネット業界において
・何も生み出さなかったのか?
・何も生み出せなかったのか?
利益のことや被害者のことは考えず、純粋に彼のインターネットへの取り組みを考えてみます。
日興コーディアル証券の一件と比べられたりもしています。
「恋におちたら」や「ハゲタカ」のようなTVドラマでも、似たような事例が取り上げられています。
インターネット事業は「虚業」だとか、そのように言われてしまうこともあります。
本当に堀江貴文氏は、インターネット業界において
・何も生み出さなかったのか?
・何も生み出せなかったのか?
利益のことや被害者のことは考えず、純粋に彼のインターネットへの取り組みを考えてみます。
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堀江貴文(ホリエモン)の一番の武器
堀江貴文氏の一番の武器と言えば、判断力とスピード
彼の外見からは想像することはできないかもしれないが、そのスピードはどの経営者よりも優れていた。
例えば、2004年の8月か9月頃、彼にこう提案したことがある。
「ライブドアブログのユーザー数がこれだけ増えてきたのだから、Webブラウザで利用できるRSSリーダーも提供したら、シナジー効果も上がって良いんじゃないんですか?」と。
すると、彼はこのように即答した。
「それは良いですね。次の会議で部下に指示しておきます」と。
彼の判断はとても早かった。
だが、驚いたのはこの判断力だけではない。
ライブドア、ブラウザから利用できるRSSリーダー「livedoor Blogリーダー」
「livedoor Blogリーダー」が完成するまでに、自分が提案した日から、なんと
一ヶ月かからなかった!
(その後最速インターフェース研究会の中の人が全面的に作り直し、現在は日本国内最高のRSSリーダーlivedoor Readerとなった)
社外の人間からの提案に対し、社長自らアイディアを取り入れ、実際に部下に指示を出し、一ヶ月以内のリリースにこぎつけられる会社など、なかなか存在しない。
通常の開発のように、要求定義、コスト見積もりなど、じっくりと見極めてから開発していたら、これだけのスピードは出せなかったはずだ。
なぜ、彼がこれだけの「判断力とスピード」を出せたかというと、彼は元々「プログラマ」だったからである。
古くは、小室哲哉のWebサイトを開発していたし、サイバーエージェントの藤田晋氏と組んで、サイバークリックのシステムなども作っていた。
元々プログラマだったが故に、そのシステムの開発がどれだけ難しく、どれだけの開発費がかかるかすぐに計算できる。
これが、同じインターネット企業の社長でも藤田晋氏とは全然違うところだ。
彼は、起業したときには「CGI」という言葉さえ知らなかった。
→渋谷ではたらく社長の告白読みました
だから、現在のような大きな会社になっても、藤田社長は技術者の気持ちがわからない。
アメーバブログは何億円という資金を注ぎ込んで何度もシステム自体をリニューアルしたし、
「一番は技術者の頭数が明らかに不足していることです」
(業務連絡。その3|渋谷ではたらく社長のアメブロ参照)などと発言してしまう。
堀江貴文氏が簡単に実現していたことが、普通の経営者にはできない。
これだけでも、堀江貴文氏の武器、すごさがわかるはずだ。
シナジー効果
また、堀江貴文氏は、Web業界のことを真剣に考えていて、シナジー効果をつねに追求していた。Web業界の一番手を買収できないのであれば、独自に開発するか、2番手・3番手の企業を買収(一部提携)していた。
- 2ちゃんねる掲示板 → したらば掲示板、OTDBBS
- 楽天 → livedoorデパート
- 価格.com → livedoor プライス
- Yahoo!オークション → livedoorオークション
- Windows → Linux
- InternetExplorer → Opera
- OutlookExpress → Eudora
- mixi → フレパ
- Flickr → livedoor PICS
- 楽天 → livedoorデパート
「すでに成功しているWebサービスには、それだけ需要がある」彼はそのサービス単体での収益だけを見ていたわけではないし、単年での収益を見ていたわけでもない。
「10コ作って(買って)、そのうち1コ成功すれば良い」
「ライブドア」というグループ全体のことを第一に考えていた。
そのために、プロ野球球団を買収しようとしたり、自らがテレビに出るなど、積極的に社長自ら「ライブドア」の宣伝をしていた。
単年・単体の収益だけを見ている一般的な企業では、このようなことはなかなかできない。
実際、堀江貴文逮捕後のライブドアでは、単体の収益だけを見て、それぞれ解散・売却などを余儀なくされている。
自前で構築した報道部門も、単体で見ればそれはすぐに閉鎖対象になる。(ライブドア、自社報道部門を2月末で閉鎖参照)
ターボリナックス、ライブドアオート、ライブドア証券なども残念なことになった。
彼が目指していたものは、単体の収益などではなかったはずだ。
シナジー効果を考えることができない経営は、インターネット業界では成長の妨げとなる。
これら、単年・単体の収益だけしか見ることができないのは、株主も同様だ。
こういう考え方しかできない株主を相手に一番被害を受けたのは、もしかすると、実は堀江貴文氏自身だったのかもしれない。
これからの成長を長い目で見ることしかできない株主に対して、株主を納得させるために「粉飾」するしかなかったのかもしれない。
堀江貴文を失ったことによるWeb業界の損失1
堀江貴文氏は以前、このようなことを繰り返し言っていた。Yahoo!オークションの独走を許してしまったら、最終的に被害を受けるのはユーザーですよ。Yahoo!オークションだけしか利用しなくなった時に、もし手数料が上がったらどうするんですか?と。
そうならないためにも、彼は周りから「パクリ」と言われようが何だろうが、「livedoorオークション」を作った。
堀江貴文氏逮捕後の現在はどうだろう。
ヤフオクの手数料が上がったのではないか?
また、このようなことも言っていた。
楽天の独走を許してしまったら、最終的に被害を受けるのは出店者とユーザーですよ。楽天だけしか利用されなくなった時に、もし出店料が上がったらどうするんですか?と。
そうならないためにも、彼は周りから「パクリ」と言われようが何だろうが、「livedoorデパート」を作った。
堀江貴文氏逮捕後の現在はどうだろう。
楽天の出店料が高く、出店者はきつい思いをしているのではないか?
Yahoo!オークションや楽天に戦いを挑んでいたbiddersを運営するDeNAは、今はモバゲータウンで会員数を増やし、シナジー効果を高める努力をしている。
そうでもしないと、寡占が進んだ業界とは同じ土俵で戦うことさえできないからだ。
なぜ業界1番手に対してなかなかその牙城を崩せないかと言えば、Webの世界では先行者利益を得るとそのまま独走してしまう現状があるからである。
1度使い始めたユーザーは、何か困ったことでも起きない限り、なかなか他の同種のサービスへ移ろうとはしない。
2番手以下のサービスをいくら作っても、買い集めても、なかなか1番手に追いつくことはできない。
また、1番手を猛追するにもそれなりに資金が必要であり、普通の企業では同種のサービスで1番手を追いかけることさえしない。
判断力とスピードに優れていた堀江貴文氏でさえ、10コ中9コは成功しないことを視野に入れていた(必ずしも失敗するという意味ではない)ことからも、2番手以下からの挑戦は非常に難しいことがわかる。
結果、競争がなくなり、Web業界の発展までもが遅れてしまう。
昔と比べて、ヤフオクや楽天などの寡占されたサービスの使い勝手が大幅にアップしていると感じることはあるだろうか?
堀江貴文を失ったことによるWeb業界の損失2
堀江貴文氏はとにかく「判断力とスピード」が優れていたことは前述した通りだ。パクりと言われようが、そのスピードは目を見張るものがあった。
もし、今現在も彼がライブドア社長を続けていたら、今頃、「Livedoor Pipes」が完成している頃だろうし、「Livedoor Tube」が人気を誇っていたかもしれないし、「Livedoor ニコニコ」ができていたかもしれないし、「Livedoorゲータウン」も生まれていたかもしれない。
もし、まだ完成していないサービスがあったとしたら、例えば、
「ライブドアブログのユーザーのために、Webサイトのサムネイルを貼り付けられるサービスを作ったらどうですか?」
と提案すれば、すぐに「livedoor Screenshot」などができていたかもしれない。
(去年livedoor Screenshotが遅れて完成したが、livedoor クリップ、livedoor レンタル掲示板 : したらば 、livedoor リスログ限定で利用が可能。彼がいれば真っ先にライブドアブログに貼り付けられたはずである)
彼はWebの発展を見越して、多大なトラフィックにも対処できるよう早い時期からデータセンターを展開していた。
テレビ業界など動画の利権でボロ儲けしている企業にメスを入れるため、テレビ局の買収にも動いた。
テレビ局は買収できなかったが、今現在テレビ局側は新たな収益源を見出すことができず、YouTubeにも対抗できない状況だ。
この状況を見るだけでも、彼のずば抜けた先見性がわかるはずだ。
彼がライブドア社長を続けていたら、今頃はジャスラックと全面対決するために、音楽会社の買収に動いていたかもしれない。
堀江貴文逮捕により、Web業界の発展・競争までもがなくなってしまった。
これこそが本当の損失なのではないだろうか。
「時代の寵児」だともてはやし、「金の亡者は地獄に落ちて当然」と煽るマスコミ。
彼がやってきた事業、目指していた未来のことを考えずに、マスコミの意見に振り回されるのはどうだろうか。
それこそ、インターネットを嫌う既存マスコミの思惑通りではないか。
せめて、インターネットを利用するものなら、彼の真意を受け取ってあげても良いのではないだろうか。
彼は「Web2.0」なんて言葉が生まれるずっとずっと前から、Webの未来を読み取って行動していた。
堀江貴文逮捕により、Web業界の発展・競争までもがなくなってしまった。
これこそが本当の損失なのではないだろうか。
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なんてことを想像していたら、3時間失いました。