2023年秋アニメ最終評価

2023年秋アニメの最終的な評価と感想。

 

評価

SSS:(該当なし)

SS :(葬送のフリーレン) 呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変 

S+:Dr.STONE NEW WORLD(第2クール) 16bitセンセーション

S:ウマ娘 プリティダービー Season 3 星屑テレパス オーバーテイク! 陰の実力者になりたくて! 2nd season SHY アイドルマスター ミリオンライブ!

A:ティアムーン帝国物語

B:(該当なし)

C:(該当なし)

 

SS

呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変

正直渋谷事変の部分の内容に関しては絶賛されるほど面白かったとは思ってない……けどあの作画を見せられたら、評価しないわけにもいかないでしょうと。

・荒井和人×砂小原巧の37話

・土上いつき×温泉中也×グレンズそうの40話

・伍柏諭筆頭にスーパーアニメーター大集合の41話

これが1クールの間に放送された奇跡。特に後ろ2つはTVアニメ史で見ても相当上位の、1年に1本もないようなスケールの作画回なわけで、それを2週連続で放送したってのは……そら制作体制もグチャグチャになるわ。

納期の短さでアニメーターから苦言を呈されたり、クレジットが悲惨なことになったり、色々問題はあった作品だけど、懐玉・玉折の出来が頗る良かったこと、渋谷事変も中身で劣る分、作画パワーで楽しませてくれたこと、この2点を総合して(フリーレン以外だと)今期最高評価ということで。

 

 

 

S+

Dr.STONE NEW WORLD(第2クール)

味方サイドも敵サイドもとにかく優秀で緊迫感が凄い。常にこちらの予想を1段階上回るやり取りが繰り広げられていて退屈することがなかった。それでいて少年漫画らしいコメディも、シリアスな雰囲気を損ねることなく入れ込めているから隙がない。

Dr.STONEという作品シリーズ自体、安定して面白くあり続けているけど、今期は特に内容の面白さが際立った印象。有能で個性的な敵の存在が作品をここまで面白くするかと改めて実感させられる1クールだった。

 

 

16bitセンセーション -ANOTHER LAYER-

終盤になって”エロゲ制作の話”ではなく、”エロゲでよくある話”になってしまったこと、イレギュラーでありながらメッセージ性の強い8話の内容を上手く物語の要素として昇華しきれていなかったのは残念だったけど、そういった不満をリアルタイムでオリアニを追う楽しさが優に上回る作品だった。リアタイ時の熱量と興奮は間違いなく秋アニメで一番だったし、そういう視聴体験をさせてくれただけでもだいぶ今作に対する評価は高め。

中身に関しては「主人公のコノハ」と「タイムリープ要素」という2つのアニオリ要素の存在がめちゃくちゃ大きかった。エロゲ制作というニッチなテーマを扱った作品なのに、普遍的な面白さのあるエンタメを作れていたのはこのアニオリ要素がよく機能していたから。アホだけど熱い想いで物語を引っ張ってくれるコノハ、エロゲ史を要所ごとに切り取りながら考察や別れの要素を追加してくれるタイムリープ、この2つをアニオリで足せたのは今作のすごいところ。

エロゲを作る内容自体もお仕事ものとして楽しめた。当時の技術水準ならではの苦労や、当時の流行りの描写も面白かったし、シンプルに熱量を持って創作する人を眺めることの面白さがあった。当時を知る人にとっては昔を懐かしむ楽しさがあり、当時を知らない人からしても昔を知る楽しさがあって、どの年代の人が見ても楽しめるエンタメに仕上がっていたと思う。

完璧を求めれば物足りないけど、途中まではすごく良かったって作品はこれくらい評価してあげても良いんじゃなかろうかと思う次第。

 

 

S

ウマ娘 プリティダービー Season 3

キタサンブラックを衰えを感じつつ引退という形で描いたのはどうだったか。

テイオーが怪我に苦しんだのも、ゴールドシップが晩年成績を悪化させたのも、疑いようのない事実だったからドラマに説得力があった。一方、キタサンはキャリアラストの秋古馬G1三連戦を1着-3着-1着。これを衰えたと表現するのは無茶がすぎる。ある種史実を捻じ曲げるような描き方をしたら、物語の説得力が落ちるのは当然のこと。

2期ではメイン2人(テイオーとマックイーン)以外のキャラにもかなり焦点が当たっていたのに対し、3期はメイン2人(キタサンとダイヤ)の描写に殆どの尺が割かれていたのも残念。せっかくのキャラコンテンツなのだから、見せ場となるレースがいくら少なくとも、史実のドラマ性が薄くとも、サブキャラの描写を手堅く積み重ねてキャラに愛着が湧くような作りをしてほしかった。12話になって突然それまでろくな描写のなかったシュヴァルグランのメイン回が始まる辺りが、今作の構成の拙さを象徴していたように思う。

結局は史実が微妙だからこうなってるんだろうし、それ自体は3期が始まる前から予測していたことではあるけど、それにしても構成がいまいちだと感じたので評価低めで。つってもキャラは良いとか作画は良いとか、9話の光田さんコンテ演出回が素晴らしいだとか色々いいところもあるから下げるに下げきれない部分はあるけど……ウマ娘という作品に向けられた期待値を思うと、不満が先行する内容だったのは間違いない。

 

星屑テレパス

ぼざろと違って主人公の海果が笑えないレベルのコミュ障なので、不可抗力的にフラストレーションが溜まるシーンが多いのは辛かった。特に”吃り”……漫画で文字として読むならともかく、音声として聞かされるのはしんどい。

その分、海果が前向きになるにつれて、視聴感は良くなった。主人公が臆病で他人に引っ張られていた立場から、積極的に動いて物語を牽引する立場へと転換したことで、作品としてもグッと見やすくなった感じはした。

演出方面だと特に序盤、いかにもきららアニメらしい演出だったのはいまいち刺さらず。今作の特色はエンタメを度外視した胸が苦しくなるような人間の描きにあるのだろう(と思った)から、それを活かすならデフォルメの効いた”日常系アニメらしい”表現は抑えめに、リアル寄りの表現で全体を統一したほうが雰囲気の締まった作品になったと思う(きららアニメなら恋する小惑星みたいな方向性)。

そもそも今作は従来のきららアニメとは明らかに違う作品なのだから、その点を強調したアニメ作りをすべきだったんじゃないかと。

とはいえこれは作品自体のポテンシャルを感じたからこそ言えることでもあるし、クオリティ自体はかなり良好だったのと、瞬のキャラがかなり好きだったのとで、差し引きこのくらいの評価。

 

オーバーテイク!

1話の時点で人が撮れないカメラマンと、弱小チームで実力はありながらレースに勝てないレーサーの構図があって、最終話までにこれが一切変化しなかったのが残念だった。勿論どちらの課題も最終回では達成されているのだけど、1話で提示したテーマを1クールかけてただ描くだけでは、オリアニとしてこじんまりとしすぎていると思う。

せっかく先の物語を誰も知らないのがオリアニの強みなのだから、視聴者側の予測をもっと超えてきてほしかった。1話で提示した物語を6話までに達成して、さらにその先の物語まで見せるくらいはしてほしかった。脚本の細かい部分にも色々と問題はないこともないと思うけど、この作品が跳ねなかった一番の原因は結局これだと思う。

このこじんまりさを除けば、全体にアニメーションも脚本もある程度良質でそれなりの見応えはあったかなと。佳作。

 

陰の実力者になりたくて! 2nd season

正直好きな作品ではないけど、ギャグ作品としての一定の出来の良さと面白さは感じられたので、このくらいの位置付けに。「I am atomic」はやっぱり好きです。

 

SHY

後半の過去話が要領を得るまでに時間がかかった上、尺がめちゃくちゃ長い。敵の目的も、ぺぺシャの過去に何があったのかも判然としない状態で、着地点の見えない戦闘シーンを複数話に渡って見せられたのは流石に辛かった。

前半、修行したあとの回まではかなり好きだったので余計に惜しい。

一方で、構成以外の部分は良質。作画・演出は十分なクオリティで纏まっていたし、キャラも良く、特に友人枠の小石川さんが刺さった。作品の核の部分は相性が良かったのに構成だけが〜という作品だったので、改善されれば普通に楽しめるだろうし、2期には期待。

 

アイドルマスター ミリオンライブ!

キャラが多い!それに尽きる。メイン3人に焦点が当たる回や初代アニマスのキャラが出てくるエピソードは概ね楽しめたが、その他のエピソードはやはりキャラを知っていること前提の、ファン向けの性格が強いものだったと思う。

一方でCG・楽曲は良かったし、エピソード1つ1つも内容自体は無難に楽しめる作りになっていて、ファンでなくてもある程度楽しめる作品だったのは確か。このアニメきっかけで好きになった曲も何個かあるし、評価の割には見て良かった寄りの作品。

 

A

ティアムーン帝国物語

凡百のなろう系よりは明らかに上。

特にミーア姫のキャラが秀逸。今作のような周りの勘違いで勝手に物事が上手く運んでいくタイプのコメディはともすれば主人公がただの無能になりかねないけど、ミーア姫は人当たりの良さとここぞの判断力があったから、ヘイトが向かなくて不快感なく視聴できた。

内容は良くも悪くもラノベクオリティ。国の政治を動かしたり、窮状を変革したりする話はそれなりの真剣味とリアリティがあって面白く見れたけど、人脈を作る話になるとミーア姫の私怨が丸出しだったり、子供じみた面が強調されたり、そもそも話が弁当を作るだけのあまりにもしょうもない内容だったりして、中身の幼稚さが否めない部分もあった。

つっても中身の部分に関してはラノベアニメは標準的にこんなものだろうという感じもするし、そもそも自分がラノベというジャンルをあまり好きでないからという側面も大きいのかもしれない……。

 

 

総評

Sランクの順番について。

ウマ娘3期は酷評しつつも、なんだかんだ映像キャラともに良さがあってSランクの中では一番毎週楽しく見ていた。星屑テレパスは評価できる部分もあるけどそれ以上につらさが先行して楽しく見れた感覚が薄かった。エンタメは基本的に楽しくあって欲しいので、そこの思想の噛み合いの悪さはある。オーバーテイクは悪くないけど上2作ほど刺さるものがない。陰の実力者2期は上記作品に引けを取らない出来だが上3作以上に刺さらない。SHYは後半の構成があんまりで置いてきぼりに。ミリオンは以上の作品よりそもそも一歩出来が劣る…という所感。

冬に続いたフリーレンを除くと、秋アニメの2トップは『ミギとダリ』、『ダークギャザリング』の2作だったわけで、この2つを追えていなかったのは個人的に痛かった。どこかで見たいけど……そう思って時はどんどん過ぎていく。

期待していた作品が期待していたほどには伸びず、全体的に今一歩な作品が目立った印象のクールでもあった。その中で16bitセンセーションが期待を遥かに上回る良作に仕上がってくれたのは嬉しい誤算。こういう挑戦的なオリアニが定期的に出てくると、視聴者としてはありがたい限り。そして攻めた企画にもGOサインを出せるアニプレの懐の深さに敬礼。今後ともよろしくお願いします。

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