作者:Kat Rosenfield
Publisher : William Morrow
October 12, 2021
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 0063057018
ISBN-13 : 978-0063057012
適正年齢:一般(バイオレンスあり。性的トピックはあるが描写は少ない)
読みやすさ:7
ジャンル:犯罪小説、心理スリラー
キーワード、テーマ:猟奇殺人、経済格差、除け者、これ読ま候補
メイン州の田舎町Copper Fallsでjunkyard(廃棄場)に火事が起こり、地元の警官が避難忠告をするために湖にあるコテージを訪問した。そこで警官はコテージの持ち主の若い女性Lizzieが顔を銃で撃たれて殺されているのを発見した。州警察から派遣された刑事のBirdは、Lizzieが村で除け者にされてきたことを知る。行方がわからない夫のDwayneが疑われて当然なのだが、死体を発見した警官を含めて地元の者たちは彼をかばい、殺されたLizzieのほうを批判する。
単純なドメスティック・バイオレンスの事件のようだが、実は殺人現場から逃げたあるカップルがいた。Junkyardの持ち主で住民から差別されてきたLizzieの父は、貧しい生活の中で古いコテージを修理してLizzieに与えた。LizzieはそのコテージをAirbnb(エアビーアンドビー)で貸別荘にして収入を得ており、ホワイトカラー犯罪者のNathan Richardsとその妻でソーシャルメディア・インフルエンサーのAdrienneはLizzieの一番のお得意様だった。Birdは彼らがCopper Fallsを訪問していたことを探り当て、ボストンにあるRichars夫婦の家を訪問する。そこにいたAdrienneはなにかを隠しているようだ……。
この犯罪小説(心理スリラー)は、死んだLizzieと刑事のBirdの視点で進む。よそ者が嫌いな田舎町の人々の心の狭さにより、Lizzieは幼い時から執拗ないじめと差別を受けてきた。子どもの頃のある酷い事件で知り合ったDwayneとの結婚は、Lizzieを愛する父からも、Dwayneを町の英雄視する住民たちからも白い目で見られていた。友達がいないLizzieは同じく友達がいない大金持ちのAdrienneと仲良くなるのだが、それは一方的な友情であった。過去から現在に至るLizzieの人生は、2019年エドガー賞受賞のYAミステリSadieを思い出させる。可愛そうで涙が出そうになる。
だが、物語は途中から予想を裏切る展開になる。このあたりには、パトリシア・ハイスミス的な要素もある。ネタバレになるのでこれ以上は書かないが、期待を裏切られるのが嬉しい犯罪小説である。たぶん一部の読者は「そんなことはありえない」と感じる設定もある。でも、それを実際に見たことがある私は「うまくやればありえる」と思った(ネタバレになるから何のことかは書けないが、年末の #これ読ま では語るかもしれない)。
人物がしっかり作り上げられており、特にLizzieがいい。善と悪が限りなくグレーであり、哀愁に満ちていて、記憶に残るページターナーだ。