YAMAGUCHI::weblog

噛み付き地蔵に憧れて、この神の世界にやってきました。マドンナみたいな男の子、コッペです。

Googleを退職します

こんにちは。Google CloudでオブザーバビリティやSREを担当していたエンジニアです。明日でこう名乗るのは最後になります。明日、2024年10月31日付でGoogleを退職します。

かしこまった挨拶

Googleに入社してから10年目までの話は次の記事で一旦まとめているので、改めて振り返ることはしません。

ymotongpoo.hatenablog.com

上の記事を書いたのは新型コロナ禍真っ只中で、カンファレンスなどもみなオンラインばかりで、人とのつながりがなかなか難しくなったころでした。その後、ワクチン開発や発症後の処置方法の確立、新型コロナウイルスの5類感染症への移行などがあり、オンラインからオフラインへの移行が再び起こりました。Google Cloud Innovatorsも立ち上がり、上記の記事の後の数年はこのコミュニティの活性化を大きな柱として仕事をしていました。

そして、唐突に退職に至ったわけですが、これも仕事が嫌になった、とか、評価が悪かった事による解雇とかいった理由ではなく、諸般の事情(主に家庭)から諸々検討した結果、そうなりました。13年半勤めた会社をこのような形で退職することになるとは思いませんでしたが、逆にこういったことがないとずっとGoogleで働いていたと思います。入社時と比べると企業の大きさは社員数で見ても8倍以上*1、売上高では10倍以上*2となりました*3。在籍中にはCEOが3回変わったことも含め、企業の文化も大いに変わったところもあり、残念ながら多くの良いと思っていた文化が失われました*4。しかし、依然として社員として働きやすい企業であることには変わりません。技術インフラも素晴らしいものが多く、いまのところまだ世界の先端をゆくものも多く見られます。

社内で仕事をご一緒した同僚も素晴らしい方々ばかりでした。職務上、開発、マーケティング、営業、技術営業、法務、PR、コンサル、サポート*5といったさまざまな職種の方々とご一緒する機会が多くあり、さらに自分の場合はそれが複数の製品においてありました。曲が強い人、いつでも穏やかな人、情熱ほとばしる人、信じられないほど思慮深い人など、みなそれぞれに個性的な同僚ばかりでした。振り返ってみると、こういった一人ひとりがGoogleの強さであると、あらためて感じています。国内外問わず同僚という枠を超えて多くの友人ができたことはかけがえのない財産です。

また社外の多くの方にもお世話になりました。YouTubeではコンテンツホルダーのみなさまと、Partner Developer Relationsでは初期採用事例として実装に協力してくださった企業の方々と、Cloud Developer Relationsではさまざまな顧客企業の方々と多くの関わりがありました。多くの場面で実際の利用者の視点からの製品フィードバックをいただき、ときには懇親会でざっくばらんなお話をしたりと、大変親しくさせていただきました。

コミュニティのみなさまにも大変お世話になりました。多くの技術カンファレンスに登壇する機会がありましたが、登壇者として、参加者として、スポンサーとして、多くの方々との関わりがありました。Google関連コミュニティも大変楽しく関わることができました。Google Developer Groupの皆様にはイベントで各地域にお邪魔した際に大変良くしていただきました。Google Developer Expertのみなさまには月例のミーティング、あるいは全然テクノロジーが関係ないBBQといったアクティビティなどで親しくしていただいたとともに、さまざまイベントでのみなさまの登壇やオンラインでの発信からは多くのことを学びました。何気ない会話が私の業務に生かされたこともたくさんありました。Google Cloud Champion InnovatorsのみなさまにはGoogle Cloudの多くのイベントでお世話になりました。これからもCloud Innovatorsの発展を楽しみにしております。

Googleという会社は、ご存知の通り、とんでもなく多角的な事業展開をしている企業です*6

これらすべてを行っている企業は2024年現在、ビッグテック/ハイパースケーラーと呼ばれる企業を含めても他に存在しません。そのような企業で、しかも各ビジネスが成長する中で、それを傍らで見ることが出来たというのは非常に幸運なことだったと感じています。特にGoogleにおいてDeveloper Relationsという部署は、常に各種製品の開発チームと関わりながら、ときには一緒になって開発を行うことができる、稀有な部署でした。(主要なサービスだとGoogleマップ以外には何らかの形で関わった事がある)さまざまなプロジェクトの思い出を数え上げればキリがありません。2013年後半から11年もの間、デベロッパーアドボケイトとしてGoogleで働けたことは私のキャリアにおいて大きな財産です。

退職することにはなりましたが、Googleが提供するサービスや製品が日常生活に欠かせないインフラとなっている今、Googleという会社との関わりが途切れることはありません。1人のユーザーとして、これからもGoogleが素晴らしい製品や技術を提供し続けてくれることを願っています。

13年半、ありがとうございました。

とりとめのない雑記

訪問したオフィスとか

訪れたオフィスの一覧を思い出して書いてみたけど、結構いろいろなところに行かせてもらった。ロンドンとニューヨークのオフィスが好きだった。パリ、シアトル、チューリッヒは結局行くきっかけがなかったのが残念だった。また新しい本社ビルも結局見ることはなかった。

San Brunoのオフィスは買収したYouTubeの本社をそのまま使ってたんだけど、食堂に入ってた会社の質が良くなくて、数多あるオフィスの中でもカフェは特に不人気だった。しかも外に食べに行くにしても歩いていける場所には選択肢が無くて、YouTubeのチームメイトはかなり食事に不満を持っていた。いまは改善されてるらしい。

  • Tokyo (Roppongi, Shibuya)
  • Seoul
  • Taipei
  • Hong Kong
  • Manila
  • Hyderabad
  • Kuala Lumper
  • Singapore (Asia Square, Mapletree)
  • Jakarta
  • Sydney
  • Melbourne
  • London (King's Cross, Victoria)
  • Amsterdam
  • Copenhagen
  • Berlin
  • San Francisco
  • San Bruno
  • Mountain View (Sunnyvale)
  • Los Angeles (Beverly Hills, Playa Vista)
  • Chicago
  • New York

あと自分は正社員の中でいうと勤続年数が全社員の上位6%くらいだったらしい。逆に13年以上在籍してまだ上位に5%以上の長期在籍者がいるというのに驚いた。

大変だったことなど

楽しかったことはたくさんあって書ききれないので、話す機会があればまたそのときに。

YouTube Liveの配信サポート

YouTube Liveがリリースしてまだ間もない頃にLIVE福島の郡山の回を現地で配信サポートしていたら、ユニコーンYouTube Live使ってリモート参加することになった。嫌な予感が的中して、現地で配信担当してた業者が配信をエンコードをモニタリングも兼ねてるノートPCで行い、WiFi経由で、バックアップ回線なし、モニタリングと同系統の回線を使って配信してくれたおかげで映像はカクつきまくって音も飛び飛びで会場はブーイングの嵐。明らかにデータ送信側の問題なのに、受信側のYouTubeのせいにされてめちゃくちゃ腹たった上に技術側の人間が現地に自分しかいないから、どうにかしてくれと言われてめちゃくちゃ困った。

あと視聴者がすごく多くなって急にラストワンマイルでのレイテンシーがひどくなったという報告を受けたので、現地からニューヨークにいたYouTube SREとGoogle Meetで話しながら対応したのはしびれる瞬間だった。

出張中に車上荒らしにあった

本当に面倒だった。

ymotongpoo.hatenablog.com

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Google Now カードの対応

Googleアシスタントの前身となるGoogle Nowという機能があって、その中にサードパーティ企業がAndroidiOS向けのGoogle検索の上部にカードを表示できる機能があったんですが、ある企業が実装がうまくいかないというんでサンプルコードを書いて提供したところ、あろうことかそのコードをそのまま本番稼働させて事故になった。いまはもうサービスごと消えたんで良かった。

チェンナイのホテルで衰弱

このときの出張が、そもそも旅程が強硬だった上に、ハイデラバードまでは同僚と一緒に移動してたのがチェンナイへ行くのは自分ひとりで緊張感が高まっていた。全館カビ臭いホテルに着いてすぐに腹痛と下痢と熱に見舞われ、何も食べられずにベッドでポカリ飲みながら寝てたときは翌日登壇できると思えずしんどかった。翌朝には少し体調が回復したんで、なんとか登壇できて、その後のデリーへの移動もなんとかできたけど、とてもじゃないけど同じような旅程では行けないなと思った。案の定他の同僚も辛かったらしく翌年から旅程が変更になった。

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gdg.community.dev

干し芋

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次の仕事

11月1日から新しい職場で働きます。

*1:2010年末で24,400人、2023年末で182,502人

*2:2010年度で230億ドル、2023年度で3,060億ドル

*3:この間にアメリカ自体のインフレもあるので単純な比較は出来ませんが

*4:大企業になったので不満がないかといえば嘘になりますが、今回の退職はそれとは関係のない話

*5:Google社外にも伝わる組織名に言い換えています

*6:これ以外にAlphabet傘下の別子会社も含めると自動運転などもある

*7:10億人以上のユーザーのいるサービスが検索、YouTubeGoogleドライブ、GmailGoogleマップGoogle Playストア、Googleフォトと多数ある

『SREをはじめよう』という本が出版されました #becoming_sre

はじめに

こんにちは、Google Cloudのオブザーバビリティ/SRE担当者です。私が翻訳しました『SREをはじめよう―個人と組織による信頼性獲得への第一歩』という書籍がオライリー・ジャパン社より出版されました。書店ならびに各社オンラインストアでご購入いただけます。

www.oreilly.co.jp

『SREをはじめよう』はどんな本か

(2024.10.17 追記: Forkwellさんのイベントで書籍紹介を行いました

www.youtube.com

本書は『SREの探求』のようにGoogle以外の組織を含めた、より一般的な文脈でのSREの実践を、オムニバスなエッセイの形でなく、概論の形で捉えたい人には最適の書籍です。すでに原著の『Becoming SRE』の日本語の感想などもいくつかの記事で見かけていますが、本書はまとめを読んで理解する、という書籍ではなく、本書と対話をするつもりで読み進めながら考えるほうが効果的な書籍だと思いますので、すでにまとめなどを読まれた方もぜひ翻訳版を手にとって一読いただければと思います。

本書は良くも悪くもSREを理解するための書籍です。SREとはなにか、を整理して要点を提示してくれている側面はあるものの、全体としては読者がSREの実践において現時点でどこにいるのか、その認識をより明確にするための補助となる書籍です。したがって、製品の細かな設定やベストプラクティスの構成に関する話ではなく、概念や文化、プラクティスに関する確認を散りばめています。「すでにSREは実践できている」と自認している方々にも、自分たちの立ち位置を確認するために、有用な書籍だと思います。

私が訳者としておすすめしたいのは、読者のみなさんの組織の中でSREに取り組んでいる方々全員で、本書を輪読をしながら感想や意見を交換することです。SREには多くのプラクティスが存在し、そのプラクティスの実践に寄り添うためのさまざまな技術や製品が存在します。(オブザーバビリティ、CI/CD、機能フラグ、ストレージ、コンテナオーケストレーター、IaC、ポリシーマネージャー、etc...)これらを、SREの根幹である「信頼性」を「適切なレベル」で「継続的に」維持するために使うという意識がある場合とそうでない場合とでは、システムに対する見方が大きく異なってきます。

本書の本文中にもあるように、本書はSREの概要に関してGoogleが提唱し続ける価値や実践に寄り添うようにしていますが、一方で多くの著者自身の意見を述べています。脚注のレビュアーのコメントにもぜひ注意を向けてみてください。本書を読み進めながら、「SRE実践の幅」を感じとってもらえれば幸いです。その幅を感じることで、本書以外のSRE関連書籍をあらためて読んだ際に、新たな発見があることと思います。

みなさんの感想をお待ちしています。

こぼれ話

著者 謝辞内の脚注7

今回、本を書くことは容易なことでしたが、世界は大変でした。本当に辛かった。誰にとっても。

この文の最後に脚注7として「原著の執筆は2021年下旬から行われました。」とありますが、これは新型コロナ禍であったことと、議事堂襲撃事件などを含め、アメリカでの治安の急激な悪化が背景にあります。著者がアメリカ在住なので本文でそのような表現になっています。(著者に確認済み)明言をしていないことと、議事堂襲撃事件はアメリカ固有の文脈が強く、日本語訳版において「世界は大変でした。〜誰にとっても。」という内容に即すかが悩ましかったので、新型コロナ禍の部分を強調でいるような含みをもたせるほうが良いと思い、脚注も同様にニュアンスを含めるにとどめました。

序文 アドリエンヌ・リッチの詩

序文冒頭のアドリエンヌ・リッチの詩の引用は最後の最後まで悩まされました。たとえば、3章の脚注10におけるリルケの詩や10章の脚注9にある首楞厳経、あるいはそれこそ他のオライリーやその他の著名な技術書からの抜粋などは、各々の日本語訳版をあたることで表現を揃えられました*1。しかし、このアドリエンヌ・リッチの詩に関しては日本語訳版が見当たらず、自分で翻訳することとなりました。

付録C 第10節

日本語話者、および日本在住の方向けのSRE関連情報を加筆しました。正直この内容は流動的なので掲載するか迷ったのですが、日本のSREコミュニティの発展を願って掲載しました。こういった情報がどんどん増えることを期待しています。

*1:資料の検索にあたっては編集の瀧澤さんのお力添えがなければ何倍もの時間がかかっているところでした。あらためて感謝します。

SRE NEXT 2024で「オブザーバビリティのマクロからミクロまで」というタイトルで発表しました

はじめに

こんにちは、Google CloudでオブザーバビリティやSREのデベロッパーアドボケイトをしているものです。少し時間が経ってしまいましたが、去る8月3-4日に開催された「SRE NEXT 2024」にて、開発フェーズの各段階におけるオブザーバビリティについての発表を行いました。

sre-next.dev

スライドはこちらです。

speakerdeck.com

動画はこちらです。

youtu.be

発表内容のTL;DR

本番環境が持つべきオブザーバビリティ(マクロなオブザーバビリティ)は、事前に拾いきれない不測の事態を発見し対応するためのものであるのに対し、リリース以前のオブザーバビリティ(ミクロなオブザーバビリティ)は、求められたパフォーマンスを提供していることの確認をするためのものです。そのため、それぞれに用いるツールセットや取り組み方には違いが生まれます。

これらを理解するために推薦する書籍として以下の4冊を挙げます。

  • 『SLO サービスレベル目標』
  • 『オブザーバビリティ・エンジニアリング』
  • 『効率的なGo』
  • 『詳解 システムパフォーマンス 第2版』

こうした情報を一貫した日本語で、日本の方に早く広く伝えたいので、翻訳活動を行っています。

『効率的なGo』という本が出版されました #efficient_go

はじめに

こんにちは、Google Cloudのオブザーバビリティ/SRE担当者です。出張中で発売日にきちんとした記事が書けなかったのですが、去る2月24日に私が翻訳しました『効率的なGo―データ指向によるGoアプリケーションの性能最適化』という書籍がオライリー・ジャパン社より出版されました。書店ならびに各社オンラインストアでご購入いただけます。

www.oreilly.co.jp

電子書籍版はオライリー・ジャパンのサイトにPDFおよびEPUBでの提供がありますので、そちらよりご確認ください。

『効率的なGo』をなぜ翻訳しようと思ったのか

私は業務において、SREやオブザーバビリティに関わる各種プラクティスの啓蒙や、それらの各種製品(Google Cloudのプロプライエタリ製品やオープンソースソフトウェア、その他関連製品なんでも)を使った実践などを解説したりしています。ここ数年でのオブザーバビリティに対する注目が高まったこともあり、計装やAPMに関する情報はだいぶ増えてきたように思います。一方で、ボトルネックの究明を行った後の最後の一歩、ボトルネックの改善をどう行うのかについては、アプリケーション開発の文脈に渡されてしまい、あまり一般的な解説が得難い領域でした。

そんな中、『オブザーバビリティ・エンジニアリング』の翻訳の第2校がちょうど終わる頃に、原著 "Effecient Go" の出版が決まり、急いでその内容を確認したところ、まさにその解説が得難い領域をテーマとした書籍であったこと、そして内容もGoに限らない、アプリケーション性能改善一般に触れる書籍であったことから、翻訳の企画をオライリー・ジャパンへと持ち込みました。

ここ最近私が関わったオライリー・ジャパンでの翻訳書籍は、企画が立ち上がった順序で言うと、『SLO サービスレベル目標』『オブザーバビリティ・エンジニアリング』の順だったのですが、ちょうどこの順序でサービス全体のマクロな視点の目標設定から始まり、それを効率よく観察するためのオブザーバビリティの獲得、そして問題がある場合の原因の究明までは理解ができますが、最後の性能改善の部分が足りないとと考えていました。そこにおあつらえ向きに本書が出版され、まさに福音でした。

また本書がGoで解説していたことも大きいです。自分が最も使う頻度が高く、長らく関わっているプログラミング言語なので、『Go言語による並行処理』と同様に、内容の理解は他の言語で解説されたものよりもできるからです。

こういった偶然が重なり、本書を翻訳する機会を得ることとなりました。

「効率的なGo」はどのような本か

本書は次のような読者に有益であると考えています。

  • Goによって開発されたプログラムのパフォーマンスを改善したいと考えているエンジニア
  • 他の言語でのパフォーマンス改善方法を知っているが、Goでの方法を知らないエンジニア
  • パフォーマンス改善一般について理解したい方
  • Goがどのようにリソースを使うか、理解を深めたいエンジニア

本書は書籍タイトルにもあるとおりGo製のプログラムを中心として、そのパフォーマンス改善手法について解説していますが、Goに限らない、プログラムのパフォーマンス改善において汎用的な考え方が紹介されています。

また本書はGoのランタイムからOSまでという、これまであまり解説がまとまった形で得られなかった低レイヤーの解説にもある程度のボリュームが割かれている書籍なので、初級者向けの書籍では刺激が得られないエンジニアにも、非常に興味深い内容になっていると思います。

関連図書

本書の関連図書として私からいくつか挙げてみます。

まず先にも紹介しましたし、本書の訳者まえがきにも書いたのですが、『SLO サービスレベル目標』『オブザーバビリティ・エンジニアリング』は真っ先に挙げたい書籍です。

もちろん自分が翻訳に関わったからでもありますが、先にも紹介した通り、一連のオブザーバビリティの獲得と性能改善というシナリオを大局的に理解するために必要な情報はこの3冊で網羅されています。

そしてプログラムの性能問題の調査に関しては『詳解 システム・パフォーマンス』を外すわけにはいきません。非常に分厚く、また価格も高いので購入がためらわれるかもしれませんが、逆にこの内容の充実ぶりで7000円を切る価格で販売されているというのは破格と言っても過言ではありません。内容も、非常に丁寧に解説されていますし、頭から通して読まなくても、辞書的に使えるところが素晴らしいです。一人一冊とまでは言わないまでも、一社に一冊は備えておくことをおすすめしたいです。

本書にならんでGoの内部挙動を紹介する書籍として紹介したいのは『Goならわかるシステムプログラミング』です。本書より少しだけ上のレイヤーで広くGoのランタイムの解説をしています。システムコールのレベルでGoのランタイムとOSの関係性を知りたい場合にはおすすめの書籍です。

また本書で解説されている内容の中で、GoプログラムとCPUに関する章(第4章)がありますが、そちらに興味を持たれた方は『プログラマーのためのCPU入門 』をおすすめします。より一般的な立場からプログラムとCPUはどう連携して動くのかを深く解説されている書籍です。

おわりに

私は職業柄、システム全体、サービス単体、関数1つと様々なレベルでの性能最適化に関わる話をすることがありますが、一貫して広まってほしいと思っている考え方は「性能を改善するためには計測し目標を立てること」です。本書が、その普及の一助になることを期待しています。

YAMAGUCHI::weblogの2023年を振り返る

はじめに

こんにちは、Cloud Operations担当者です。2023年も最後日となりました。そして私の誕生日です。だんだんと歳を重ねることが億劫になる年齢となってきました。例のやつを貼りました。よろしくお願いします。

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2020年3月から始まった新型コロナウイルスの猛威により様々な制限を設けることによって経済的な影響を抑えつつなんとかやってきた数年間でしたが、今年のゴールデンウィークを境に季節性インフルエンザと同じ5類感染症に分類されることとなりました。その是非はさておき、これにより様々な生活への変化が訪れ、私も数多くのオフラインイベントに登壇する機会が増え、仕事や生活が大きく変わった1年でした。

過去の年次の振り返りはこちら。

ymotongpooの2023年

去年立てた目標

  • オブザーバビリティ関連の展開
    • SRE関連含めたプラクティスの普及
    • OpenTelemetryイベントの実施
    • Collector関連でOSSを出したい
  • Goコミュニティ関連
    • Go Conference 2023 Springの運営を無事終わらせる
    • Gophers Japanの活動の拡大
  • 執筆・翻訳・監訳をすすめる
    • 新たな翻訳企画
  • キャンプ
    • 1年を通じたハンモック泊の充実
  • 語学
    • DELE受験

先に述べたように、新型コロナウイルスの分類が変更されたことによって生活が大きく変化し、当初考えていたようなことができなかったり、逆に思わぬ成果が多かった1年でした。

仕事

今年は社内の仕事で、技術的な仕事とプロジェクトリード的な仕事の割合ではだいぶ後者が増えてきたので、なかなか思うように時間が取れなかったのですが、いろいろとチャレンジングな仕事が多く出来たかなと思います。

イベント登壇

今年も去年に引き続き登壇が多かった1年でしたが、特にオフラインイベントでの登壇が増えた1年でした。ざっと記録を見てみましたが、今年だけでオンライン、オフライン含めて30イベントに登壇したようです。今年は意識してSLOに関する話を何度も繰り返し行っていました。少しはSREのプラクティスの普及に貢献できたのではないでしょうか。

主な登壇の記録は一旦こちらにまとめてあります。

github.com

イベント運営

自分でイベント運営をすることがかなり減ってきましたが、今年はGo Conference 2023とOpenTelemetry meetup 2023-10の運営に関わりました。

gocon.jp

opentelemetry.connpass.com

Go Conferenceは2代目座長の @tenntenn が今回で座長を退任し、来年は @sivchari さんが座長となります。2013年に勢いだけで始めたイベントが10年続いたのも、ひとえに毎年メンバーは違えど、一緒に運営してくださる皆様と、スポンサーや登壇者、そして毎回応援してくれる参加者などの、支えてくださる皆様のおかげに他なりません。これからもGo Conferenceが続くことを願っています。

OpenTelemetry meetupに関しては、3年くらいずっとやりたいという話を @katzchang としていて、今回オフィス移転前のCARTA HOLDINGSさんのイベントスペースをお借りして実現できました。2023年はOpenTelemetryに対する注目度が一段と高まった年だったので、良いタイミングで実施できたと思います。盛り上がりです。

執筆・翻訳・監訳

つぎのような目標を立てていました。

  • 執筆・翻訳・監訳をすすめる
    • 新たな翻訳企画

今年の頭に昨年末に校了した「オブザーバビリティ・エンジニアリング」が出版されました。

ymotongpoo.hatenablog.com

その半年後に、紆余曲折を経て数年越しで「SLO サービスレベル目標」が無事出版に至りました。2年強、コロナ禍でリモートワークが前提の中での翻訳作業でしたが、編集の高さんを始め、関係者のみなさまとは結局一度も直接お会いすることなく出版となりました。来年、機会があれば、今度こそご挨拶できればと思います。

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また同じく、コロナ前から始まっていた企画であった「実践プロパティベーステスト」も無事に出版に至りました。鹿野さんには長年にかけてご迷惑をおかけしただけでなく、編集作業においては私の翻訳から、日本語として格段に上質なものにしていただき、本当に感謝しています。

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2冊は単純に作業が滞った結果今年出版になってしまったというだけではあるのですが、1年に3冊出版というのはなかなかタフな仕事ではありました。特に「SLO サービスレベル目標」と「実践プロパティベーステスト」に関しては、今年を逃すともう出版できないかもしれないというプレッシャーにより無理にでも作業を進めたというのが本当のところではあります。

いずれにせよ、担当編集者のみなさまにも恵まれ、非常に充実した1年となりました。現在、また別の本の翻訳にすでに取り掛かっていて、そちらは早ければ来年第1四半期には出るのではないかと思います。そちらも楽しみにしていてください。

出張/旅行

新型コロナ禍以降、久々に出張などが復活し、海外への移動が多くあった1年でした。写真は初めて行ったクアラルンプールにあるペトロナスツインタワー

スペインは旅行でしたが、それ以外はすべて出張でした。シンガポールやマレーシアは時差が1時間しかないこともあり、本当に気持ちが楽な出張でした。歳を取るにつれて時差ボケが本当にきつくなってきて、サンフランシスコもバルセロナもどちらも本当に疲れました。

来年もすでに海外出張がいくつか決まっているので、現地の人々との交流がいまから楽しみです。

趣味

キャンプ

キャンプに関しては次のような目標を立てていました。

  • 1年を通じたハンモック泊の充実

今年は年の後半は後述する住宅購入やら、イベントやらで思ったほど時間が取れず、ハンモック泊に行けたのは年のはじめだけでした。合計で2回ではありましたが、3月と6月に行ったので、季節としてはだいぶ快適で、防寒対策はクローズドセルマットを用意する程度で、あとは寝袋の性能で十分でした。ハンモック泊での外の空気に直接触れながら寝る感覚は何度行っても爽快感があります。まだ雨のハンモック泊は経験したことがないので、来年はタイミングを見計らって実施したいです。

語学

去年に引き続きDuolingoを1年継続できました。毎日コツコツできるものは得意です。

去年は「DELEを受けるぞー」と息巻いていましたが、11月はCloud Next Tokyoの準備やら、家族旅行やらなにやらでまったく受験とか無理でした!早く受けられるようにしたいところです。いまの感じだと、受験をするとなるとリスニングが明らかに不得意なので、もう少し音声インプットを増やしたいと感じています。家族旅行で行ったスペインも、こちらが話しかけたり、あるいは文章の読み書きをするのはわりかしできるようになっていると実感できましたが、リスニングは他の3つの技能に比べるとレベルが低いように思います。来年は何かしら対策したいところです。

ところで、クアラルンプールに12月頭に行ったことで、思いがけず始めたインドネシア語およびマレー語ですが、文法がかなりわかりやすいので、このまま続けて行こうと思います。

その他

家を買った

去年奨学金を完済して負債がゼロになったばかりでしたが、今年はそれよりもずっと大きな住宅ローンという負債を抱えることとなりました。少し事情が特殊な形で家を購入したので、住宅ローンの審査がなかなか通らず、13行に審査を出してようやく2行から承認を得たという感じでした。ネット銀行は本当にテンプレートから外れると審査が厳しいということを学びました。

本当にこの図のとおりでした。(引用元: 住宅ローンの基本 | モゲチェック

紆余曲折ありましたが、無事に住宅ローンが組め、物件を購入できたので、あとは淡々と返していくだけです。新しい家は築浅の中古戸建てなので、大きなリノベーションが必要ないのが助かります。家具などはいま使っているものがだいぶ年季が入ってしまっているので、これを機に一新しようと思います。

普通自動二輪の教習

前述した物件は地方都市にあり、家の周りを移動するのに車だけだと個人的には不便だと思ったので、一旦原付一種を適当に買おうと思っていました。しかし他の地方都市に漏れず、家の周りは車社会のため、原付一種は馬力の低さゆえに発進や坂道で不満に感じそうだと思い、原付二種を買うことに決めました。とはいえ自分は中型自動車免許しか持っていない(歳がバレる)ので、原付二種には乗れません。こうした事情から、新しいことにも挑戦してみたかったのものあって、勢いで普通自動二輪の免許を取ることにして、年末に通い始めました。

まだ今の段階では卒業検定には至っていなくて、あと1時間第2段階の見きわめをしたあとに卒業検定という状況です。年明けの検定でどうなるか、まったくわかりませんが、合否は一旦置いといて、いままでちゃんと動かし方を知らなかった乗り物を動かせるようになるというのは単純に楽しいです。またこの歳になると、人に教えてもらえることのありがたさをしみじみと感じます。

原付二種を買うと決めてから通い始めた教習ですが、すでに今の時点で普通に中型バイクが欲しくなってるので、おそらくいずれ買うことになると思います。まずは免許を取ってから、いろいろとレンタルバイクで試してみます。

来年に向けて

来年はこんな感じでやっていこうと思います。

  • コミュニティ関連
    • OpenTelemetry meetup とかハッカソンとかやっていきたい
    • Go Conference 2024は久々のオフライン開催なので無事に行う
  • 執筆・翻訳・監訳
    • 1冊は翻訳本を出す
    • 同人でもいいので何かしら書き下ろしたい
  • 趣味
    • キャンプでハンモック泊やタープ泊などの軽量キャンプに行く
    • 普通二輪の免許を取得したらツーリングキャンプに行く
    • グリル料理を覚える
  • 語学