※日経トレンディ 2019年6月号の記事を再構成

焼き肉は「ハレ」の日の食事。そんな概念を覆し、昼夜問わず定食屋のように入れる新感覚の焼肉店が人気だ。2018年8月に東京・新橋に1号店がオープンした「焼肉ライク」は、既に国内外に10店舗を展開。今後5年で300店舗体制を目指し、一気に出店攻勢を仕掛ける。

無煙ロースターでにおい付きに配慮
無煙ロースターでにおい付きに配慮
全席に無煙ロースターを導入。出入り口には消臭スプレーを用意しており、職場でのにおいが気になるランチ時にもうれしい

 焼き肉にライス、スープなどが付いたセットメニューが主力。「焼肉のファストフード」をうたい、500円台の「うす切カルビセット」といった低価格メニューも用意するが、売れ筋1位は意外にも、1200円(税別)の「カルビ&ハラミセット200g」。食べてみたところ、肉厚でうまみもあり満足感は非常に高かった。50g単位で好きな部位を追加注文できるのも魅力だ。

注)ランキングは渋谷店のもの

 品質と価格を両立できる秘密は、1日18回転に上るという高い回転率。一般的な焼肉店の4~6倍になり、客単価を抑えても利益が出る。回転率を上げるため、あえてアルコール類を居酒屋より高めの価格にし、長居する客の“居酒屋使い”を避けている。肉は7種類に絞り、サイドメニューも最小限にしたことは、オペレーションの効率化にも寄与。高回転の結果、肉を冷蔵で保存できたり、鮮度は高いが賞味期限が短い「生ダレ」を提供できたりと、品質向上にもつながっているのだ。

生ダレを提供
生ダレを提供
高い回転率を生かし、賞味期限の短い「生ダレ」を提供

お一人様でも気兼ねなく入れる仕掛けとは

 店内では、向かいの客と目線が合わないよう、席の仕切りを目線の高さに設定。注文はタッチパネルを使い、箸やお絞りは机の引き出しに用意。会計時以外は店員を呼ぶ必要が一切なく、お一人様でも気兼ねなく入れる。

イイねマークでカジュアルに
イイねマークでカジュアルに
「イイね」マークのロゴで、気軽に入れる雰囲気を演出
向かいの客と目が合わない
向かいの客と目が合わない
会計以外は店員を呼ばずに完結
 各席に注文用のタッチパネルが設置され(上左写真)、箸やお絞りは引き出しに備えられている(上右写真)。各席にウオーターサーバーがあり、水もセルフサービス。会計以外はすべて席で完結する。
現場の視点
焼肉ライク社長 有村壮央 氏
焼肉ライク社長 有村壮央 氏
足を使った地道な調査を敢行した割高な投資に踏み切ったことが奏功
 お一人様需要は高まっていて、焼き肉にもニーズはあると考えていた。ネックだったのは、各席にロースターを置くための割高な初期投資。ファストフード店を回り、滞在時間や客層を分析。高回転率の業態であれば、投資に見合う利益が立つと確信を持てた。

(写真/古立 康三)

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