自主制作(インディーズ)映画「侍タイムスリッパー」が躍進を遂げている。2024年8月にたった1館での上映からはじまり、来場者の口コミを追い風に全国230館まで広がった。同じく自主制作で興行収入30億円を超えた「カメラを止めるな!」(18年公開)の再来との呼び声も高い。限られた予算と人員から生まれた異例のヒット、安田淳一監督(57)が語る裏側とは――。
2024年10月上旬の休日、TOHOシネマズ日比谷(東京・千代田)は朝からにぎわっていた。この日、侍タイムスリッパーは5回にわたって上映。昼時には400席超の大スクリーンを使い、上映前に満席のアナウンスが出るほどだった。
インディーズ映画が大好きな都内在住の40代男性、しゅうさんは本作を8回鑑賞した。「侍(さむ)タイは自主制作の枠を超えている。映像、音響、キャスト、スタッフさん、情熱、もう、全てが魅力」と熱く語る。
幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップ、「斬られ役」として第二の人生に奮闘する姿を描く。コメディーでありながら人間ドラマ、そして手に汗握るチャンバラ活劇でもある。業界関係者からは「現代劇よりも制作費がかさむ時代劇を自主制作したのは異例」という声があがる。
時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門は、密命のターゲットである長州藩士と刃を交えた刹那、落雷により気を失う。眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。行く先々で騒ぎを起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだと知り愕然となる新左衛門。一度は死を覚悟したものの、やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と、磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩く。「斬られ役」として生きていくために...。
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