森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(当時54)の妻の雅子さんは4年前、一連の捜査の過程で財務省が検察に任意で提出した文書を開示するよう求めましたが、財務省は文書の存否も明らかにせず、不開示とする決定をしました。
雅子さんは決定の取り消しを求めて訴えを起こし、1審の大阪地方裁判所はおととし9月、「文書が存在するかどうかを明らかにした場合、行政機関が捜査対象となる事件で捜査の内容などが推定され、将来の刑事事件の捜査に支障が及ぶおそれがある」として訴えを退けました。
30日の判決で大阪高等裁判所の牧賢二裁判長は、文書の存否を答えた場合の影響について検討し、一連の問題で刑事告発された財務省の職員全員が2019年8月に不起訴になり捜査が終結したことをふまえ、「不開示の決定をした2021年の時点で、捜査に支障を及ぼすおそれがあるとはいえない」と指摘しました。
そのうえで「財務省がどのような文書を任意提出したかが明らかになったとしても、それによって同種の事件に対する捜査機関の捜査方針や意図が明らかになるとはいえない」として、文書の存否も明らかにせず不開示とした決定は違法だと判断し、取り消しました。
森友学園めぐる文書の不開示の決定を取り消す判決 大阪高裁
森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した近畿財務局の男性職員の妻が、国に関連文書の開示を求めた裁判で、2審の大阪高等裁判所は、1審とは逆に、国が文書の存否も明らかにせず不開示とした決定は違法だとして、取り消す判決を言い渡しました。
妻の雅子さん「国は上告せずに判決に従ってほしい」
判決が言い渡されたあと、妻の雅子さんが俊夫さんの写真を抱えて報道陣の取材に応じ、「今までの苦労が報われて夫も喜んでいると思います」と話しました。
その上で、「国は上告せずに判決に従ってほしい。改ざんを誰が決めて指示したのか、何のために改ざんしたのかを知りたいので、しっかり開示してほしい」と述べました。
雅子さんの弁護団「当然の判決」
判決のあと、赤木雅子さんの弁護団が会見を開きました。
坂本団弁護士は「当然の判決で、1審の判決は明らかに誤った判決だった。これ以上時間をかけないよう、国は上告しないでほしい」と話していました。また、生越照幸弁護士は「真実を明らかにし、俊夫さんのように上の指示で現場の人が苦しんで亡くなることがないように裁判で争ってきた。国は今回の判決を真摯(しんし)に受け止めて、可能な限り開示すべきだ」と話していました。
財務省「今後の対応を検討」
判決を受けて、財務省は「近畿財務局の職員がお亡くなりになったことについては、誠に残念なことであると考えており、改めて、深く哀悼の意を表します。判決の内容を精査したうえで、関係省庁とも協議し、今後の対応について検討してまいりたい」とコメントしています。
林官房長官「内容を精査し適切に対応」
林官房長官は午後の記者会見で「元近畿財務局職員の赤木俊夫さんがお亡くなりになったことについては謹んでお悔やみを申し上げたい。判決では国側の主張が認められなかったものと承知しており、今後、関係省庁で内容を精査し適切に対応する」と述べました。
森友学園めぐる文書 これまでの経緯は
近畿財務局の赤木俊夫さんが、職場に残したいわゆる「赤木ファイル」は、妻の雅子さんが国などを訴えた裁判で、2021年6月に一部を黒塗りにされたうえで開示されました。
ファイルには、財務省職員が改ざんを指示するメールなどが含まれていましたが、改ざんの理由などを具体的に示す内容はありませんでした。
雅子さんは、改ざんの経緯を明らかにするため一連の捜査の過程で財務省が検察に任意で提出した文書の開示を求めて情報公開請求をしましたが、財務省は「文書が存在するか否かを答えるだけで捜査機関の活動内容を明らかにすることになる」として開示しませんでした。
このため、雅子さんは2021年10月、国に対して決定の取り消しを求める訴えを起こしました。
2023年9月、1審の大阪地方裁判所は国側の主張を認めて訴えを退けたため、雅子さん側が控訴していました。
一方、雅子さんが裁判とは別に行った審査請求で、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会」は、去年3月、「仮に文書の存否を答えたとしても、判明するのは財務省が何らかの文書を検察に任意提出した事実の有無にとどまる。具体的な捜査の内容などを開示するものとはいえず、捜査に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない」として決定を取り消すよう答申しました。
しかし、答申に法的拘束力はなく、財務省は去年5月、再び文書の存否を明らかにせず不開示としていました。