工事現場や太陽光発電施設から銅線ケーブルなどの金属が盗まれ転売される被害が各地で相次いでいて、警察庁によりますと、金属が盗まれる被害は去年11月末までに1万9465件発生し、前の年の年間の発生件数を上回っています。
盗品の流通を防止する現在の「古物営業法」では切断されたケーブルは規制の対象外となっていて、警察庁は去年9月から法律の専門家や金属くずの業界団体などが参加する有識者検討会を設けて対応を議論し、規制を強化する新たな法律を整備する方針を固めました。
具体的には、金属の買い取り業者に対し、取り引きの際に、顔写真が付いた書類で本人確認を厳格に行うことや、取り引きの記録を作成し、保存することを義務づける方針です。
また、現在、買い取り業者は、条例が制定されている場合を除いて、届け出の必要はありませんが、実態を把握しやすくするため届け出制にする方針です。
さらに、銅線を切断するケーブルカッターなどの工具を、隠して持ち歩くことを禁止することも検討されています。
警察庁は被害の拡大に歯止めをかけるため、早い時期の国会での成立を目指すことにしています。
警察庁 “金属買い取り”規制強化の新たな法律を整備する方針
金属価格の高騰を背景に太陽光発電施設の送電用の銅線ケーブルなどが盗まれる被害が急増していることから、警察庁は金属の買い取り業者に対し、取り引きの際に顔写真付きの書類で本人確認を義務づけるなど、規制を強化する新たな法律を整備する方針を固めました。
被害急増の背景に“銅を含む金属価格の高騰” 深刻な影響も
警察庁によりますと、おととし1年間に送電用の銅線ケーブルなど、金属が盗まれた被害は全国で1万6276件発生し、被害額はおよそ132億8700万円にのぼりました。
このうち、金属の材質別では銅が8437件と、全体の半数を占めています。
被害は増加傾向が続いていて、去年は1月から11月末までに1万9465件の被害が発生し、年間では2万件を超える見通しです。
急増の背景には銅を含む金属価格の高騰があるとみられています。
金属くずのうち、銅は1キロ当たりの平均価格が昨年度はおよそ1131円と、アルミニウムのおよそ185円、鉄のおよそ47円よりもはるかに高値で取り引きされています。
銅は電気伝導率が高く、再生可能エネルギーの設備や電気自動車の部品に使用されていて、世界で争奪戦が繰り広げられています。
一方、銅線ケーブルが切断されると、設備の修理に多額の費用がかかるほか、社会生活にも深刻な影響をもたらします。
去年7月、群馬県渋川市の養鶏場で銅線ケーブルおよそ170メートルが切断されて盗まれた事件では、停電によって養鶏場の空調設備が停止したことで、およそ十数万羽のニワトリが死にました。
また、去年10月、千葉県鴨川市の漁港で電柱から1.6キロメートル分の電線が盗まれた事件では停電によって給油装置が使えなくなるなど、大きな影響がでました。
警察庁の有識者検討会では、盗んだ銅線を容易に換金できる環境が、被害の拡大に拍車をかけているとして、本人確認の厳格化や買い取り業者の届け出制を導入することを求めています。
銅線ケーブル盗みなどで検挙146人 カンボジア人がおよそ半数
警察庁によりますと、銅線ケーブルの盗みや処分に関わったとして、去年1月から11月末までに全国の警察に検挙された人は146人で、国籍別では
▽カンボジア人がおよそ半数の74人と最も多く、
▽次いで日本人が38人、
▽タイ人が18人、
▽ベトナム人が8人などとなっています。
技能実習生として入国した外国人が勧誘されるケースも目立っているということです。
警察庁の露木康浩長官は9日の会見で、金属の盗難はそれ自体の被害にとどまらず電力の供給が止まることによる経済的損失など、国民に大きな影響を与える問題だとした上で、「多くはメンバーが流動的に入れ替わる外国人犯罪グループによる犯行で、いわば『外国人トクリュウ』とも言える実態にある。警察内の部門や都道府県の垣根を取り払った取締りを強化するなど、的確に対処していきたい」と述べました。