近視の進行を抑える国内初の目薬 製造販売を正式に承認 厚労省

近視の進行を抑える国内で初めての目薬について、厚生労働省は27日、製造販売を正式に承認し、今後、身近な医療機関でも処方されるようになると期待されています。

承認されたのは、大阪の製薬会社「参天製薬」が開発した目薬「アトロピン硫酸塩水和物」です。

近視は多くの場合、体の成長とともに眼球が前後に伸び、網膜でピントが合わなくなって進行するとされています。

開発のために軽度から中等度の近視の子どもを対象に行われた治験では、目薬を投与したグループは投与しなかったグループと比べて、近視が進行する速度が緩やかになり、眼球の伸びも抑えられたということです。

今月開かれた厚生労働省の専門家部会で国内での製造販売を認めることが了承され、厚生労働省は27日正式に承認しました。

近視の進行を抑える目薬が承認されたのは国内では初めてです。

これまでは海外で承認された同様の成分の目薬を一部の医療機関の医師が個人輸入する形で使っていましたが、今後、身近な医療機関でも処方されるようになると期待されています。

会社によりますとこの目薬には公的な医療保険は適用されず、全額が自己負担になる見込みだということです。

海外で承認された目薬を使っていた病院は

東京 文京区にある東京科学大学病院の眼科では、軽度や中等度の近視の子どもに対し、シンガポールなど海外で承認された目薬を輸入して使用しています。

同様の成分の国産の目薬が承認されたことから、この病院では患者の希望を踏まえて切り替えていく方針で、この日も医師が近視の治療のために受診した子どもと親に検査の結果を示しながら新しい目薬について説明していました。

横浜市から訪れた小学3年生の男の子の母親は「子どもの近視が心配で毎回、片道1時間以上かけて通院しています。国産の薬が出て最寄りの眼科のクリニックで処方してもらえるようになると助かります」と話していました。

五十嵐多恵医師は「国産の薬が承認されたことで医師としても安心して処方できるようになる。個人輸入の必要もなくなり、国内で近視の治療が普及する大きな一歩になる」と話していました。

日本近視学会 理事長「近視が進行しやすい子どもへの使用想定」

承認された目薬の治験データの分析に関わった日本近視学会の理事長で、東京科学大学の大野京子教授は、この目薬は主に近視が進行しやすい子どもへの使用が想定されているとしています。

目薬の有効性が示された治験も5歳から15歳の軽度から中等度の近視の子どもを対象に行われていて、大人や、子どもでも強度の近視の場合はすでに進行が収まっているケースが多いため、効果を期待しにくいということです。

今回の承認について、大野教授は「日本では近視の子どもが特に増加する傾向にあるが、海外から目薬を輸入して使っている医療機関は限られていて、患者の多くはこれまで眼鏡などで様子をみることしかできなかった。国産の目薬が承認され、全国の眼科で処方できるようになるが、近くを見続けないことや、屋外で過ごす時間を増やすことなど、近視が進行しないように生活習慣を改善することも重要だ」と話していました。