来年度予算案 閣議決定 一般会計の総額115兆円余で過去最大に

さらに、地方交付税交付金は19兆784億円、国債の償還や利払いにあてる国債費は、長期金利の上昇を背景に過去最大の28兆2179億円となります。

予定外の支出に備える予備費には1兆円をあてますが、今年度、別枠として1兆円を計上していた物価高騰などに対応するための予備費は廃止します。

最低賃金の引き上げに向けた環境を整えるため、中小企業や小規模事業者のうち、生産性の向上に向けた設備投資などを行い、職場内での賃金が最も低い人について、一定額以上の賃上げした場合に助成金を出して支援する制度を継続し、今年度の当初予算よりも6億8000万円多い、15億円が盛り込まれました。

共働きしながら育児をする夫婦を後押しするため、
▽夫婦どちらとも14日以上の育休を取得すれば、手取りの収入が最長28日間は実質的に減らないようにするための給付金と
▽2歳未満の子どもを育てるために時短勤務をする場合賃金の10％にあたる給付金を
それぞれ来年4月以降支給することにし、新たな制度を創設するため、792億円が盛り込まれました。

人手不足が深刻な現場での人材確保を支援しようと、
▽ハローワークに設置する医療や介護などの分野への就職相談の専門窓口をさらに増やし
▽介護や育児をしながら働く現役世代の家庭や、福祉施設や保育所など働き手が足りない場所へ、シルバー人材センターの会員を紹介してマッチングを目指す事業などに
416億円が盛り込まれました。

リスキリング＝学び直しを推進しようと、
▽従業員のキャリア形成を後押しする企業を対象にした支援の拡充や
▽教育訓練を受けるために、給料の支払いがない休暇を取得した労働者に対して給付金を支給する制度の創設などに
1335億円が盛り込まれました。

若い世代が経済的な理由で進学をあきらめないようにするため、
▽大学や短大、専門学校などの受験料の支援
▽高校3年生などの模擬試験の受験料の支援
▽児童館や子ども食堂などの学習支援の場に学習指導を行う個別支援員を配置する取り組みなどに
あわせて180億円が盛り込まれました。

保育の質を向上させるため、1歳児の保育士の配置を「子ども6人に1人」から「5人に1人」に改善する保育所などへの給付金を増額する経費として、109億円が盛り込まれました。
また、保育士や幼稚園の教諭などの処遇改善に向けて、今年度の補正予算で10.7％引き上げた人件費を、来年度も引き続き確保するための費用として、1607億円が計上されました。

学校を休みがちだったり、なかなかクラスになじめなかったりする児童・生徒の支援を強化するため、新たに4億円が計上されました。
具体的には、こうした児童・生徒の居場所づくりとして、各地の学校で、空き教室などを活用して設けられている「校内教育支援センター」で、学習のサポートや相談に応じる専門の支援員を、新たに2000人確保するとしています。

教員の処遇改善や教育の質の向上などに向けて、1兆6210億円の予算が盛りこまれました。
具体的には、
▽残業代の代わりに、教員に毎月一律に支給している給与の上乗せ分について、今の月給の4％から、来年度は5％に引き上げるほか
▽小学4年生の教科担任制の拡大などのため、教員定数を5800人余り増やすなどとしています。

犯罪収益の暗号資産を分析する資機材の整備や、過去の事件で押収した名簿に名前や個人情報が掲載されていた人に、コールセンターから注意喚起の電話をかける事業など、闇バイトによる犯罪への対策を強化するための費用として、17億2900万円が盛り込まれました。

石破総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「国会で多くの賛同が得られるよう誠心誠意、予算案の趣旨を説明し、早期の成立を目指したい。少数与党なので、野党に賛成してもらわなければ成立しない。国民の気持ちが『なるほど、そうだね』とならなければ、賛成してもらうことにはならないと思う。予算委員会などで丁寧に説明し、野党に賛成してもらえる環境を醸成していきたい」と述べました。

林官房長官は、臨時閣議のあとの記者会見で「『コストカット型経済』から『高付加価値創出型経済』への移行を確実なものとするとともに、わが国が直面する構造的な変化に的確に対応し、国民の安心・安全を確保するための予算だ」と述べました。

一方、財源の4分の1を国債に頼る、厳しい財政状況が続く見通しとなっていることについて「政府としては、財政健全化の旗を降ろすことなく、プライマリーバランス＝基礎的財政収支の黒字化を目指すという方針のもと、これまでの進捗や成果を後戻りさせることなく、歳出・歳入両面からの取り組みを継続していきたい」と述べました。

加藤財務大臣は、記者会見で「先般成立した補正予算と合わせ、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を確実なものにしていくとともに、わが国が直面する構造的な変化に的確に対応するための予算だ」と述べました。

また、財政健全化の指標である基礎的財政収支を、来年度に黒字化する目標が達成できるか問われたのに対し、加藤大臣は「来年の年初に内閣府が中長期試算として示すものと承知していて、現時点で、これについて申し上げるのは差し控えたい。いずれにしても、経済あっての財政との考え方のもと、経済再生と財政の健全化の両立を図っていく」と述べました。

立憲民主党の野田代表は、記者団に対し「総額を見るかぎりは、依然としてコロナ禍の財政運営から脱却できていないのではないのかと思わざるを得ない」と述べました。

その上で「補正予算では減額の要請もしながら修正を求めたが、今回は115兆円を超える予算案なので、国民の税金がむだづかいされることのないようにしっかりとチェックした上で、予算審議の中で何を勝ち取っていくのか、戦略的に検討していきたい」と述べました。