ハンセン病元患者などの公文書 管理が不十分なケースも 厚労省

ハンセン病の元患者や家族の個人情報が記載された公文書が、全国の都道府県などに2600件余り保管され、中には管理が不十分なケースもあることがわかり、厚生労働省は都道府県に対し適切に管理するよう通知しました。

ハンセン病に関する公文書を巡っては、3年前、長野県内の警察署が明治時代に作成したとみられる、当時の患者に関する資料がインターネットのオークションサイトに出品され、元患者や弁護士などで作る団体が国に実態調査を求めていました。

これを受けて厚生労働省はおととしから去年にかけて、独自に調査を行っていた長野県を除く、全国の都道府県や警察本部などを対象に、保管されている文書や保管状況を調査し、結果を公表しました。

それによりますと、ハンセン病に関する文書は合わせて7460件確認され、このうち2668件は「ハンセン病患者台帳」など、元患者や家族の名前が記載されているとみられる文書や、「援護家族調査票」など、元患者や家族への支援内容など、個人情報が記載されたものでした。

このうち特に注意が必要な元患者や、その家族の台帳などの432件の文書のうち、251件は鍵付きの書庫などで保管されていましたが、141件は部屋の出入り口などに鍵がかけられただけで、文書が保管された書庫などには鍵がかけられていなかったということです。

厚生労働省は文書が流出した場合、重大な人権侵害や新たな偏見や差別を生み出すおそれがあるとして、文書を引き続き保管する場合は、鍵付きの書庫や書棚に保管し、保管した文書を閲覧する際は、閲覧記録を取ることなど、適切な管理や保存について都道府県に通知しました。

弁護士「統一的な基準を作っていくことが必要」

国に実態調査を求めた元患者などで作る団体の徳田靖之弁護士は今回の調査結果について「元患者などのプライバシーにかかわる内容が記載された文書が、これだけ多く残されていることが明らかになり驚いた。管理の方法は都道府県によってばらつきがあり、不十分な管理がなされているところもあるため、個人情報が含まれる文書は厳重に保管するなど、早急に対応すべきだ」と話していました。

そのうえで「これだけ多くの文書のうち、後世に残すものと残さないものを分けたうえで、残すものは厳重に保管し、残さないものについてはどのように廃棄をするのか、しっかりと検討する必要がある。そのためには、元患者や専門家などで議論し、統一的な基準を作っていくことが今後求められる」と話していました。