今月14日の夜、北九州市小倉南区徳力にあるマクドナルドの店舗で、塾帰りに立ち寄った中学3年の2人が刃物で刺され、このうち中島咲彩さん(15歳)が死亡しました。
一緒にいた同級生の15歳の男子生徒も致命傷になりかねない深い傷を負ったということです。
男は刃物を持ったまま逃走しています。
警察が事件のあと、ファストフード店の関係者に聞き取ったところ、事件につながるような店への嫌がらせや客などとのトラブルは確認されていないことが、警察への取材でわかりました。
また、警察によりますと、中島さんから警察に対し、これまでトラブルなどの相談はなかったほか、男子生徒は病院に搬送される際「自分と刺した男は全く面識はない」という趣旨の話をしていたということです。
警察は、店を狙ったものではなく、居合わせた人を無差別に襲った可能性もあるとみて、逃げた男の行方を捜査しています。
北九州 中学生殺傷 店でトラブル確認されず 無差別に襲ったか
北九州市のファストフード店で中学生2人が男に刃物で刺され、15歳の女子生徒が殺害された事件で、現場の店舗では事件につながるような客などとのトラブルは確認されていないことが警察への取材でわかりました。警察は、店を狙ったものではなく居合わせた人を無差別に襲った可能性もあるとみて捜査しています。
福岡県内の複数自治体に犯人名乗る人物から脅迫文
今回の事件のあと、福岡県内の北九州市、飯塚市、中間市など複数の自治体に、犯人を名乗る人物から脅迫文が届いていたことが、自治体への取材でわかりました。
それぞれの教育委員会によりますと、16日夕方、自治体のホームページにある問い合わせフォームなどに、みずからが犯人だと名乗り、今月20日までに県内の小中学生にさらに危害を加えるとして、現金を振り込むよう脅す趣旨の脅迫文が投稿されていたということです。
文面の内容から、同じ人物による投稿とみられるということです。
一部の教育委員会では、パトロールを強化したり、放課後活動や部活動を中止したりするなど、安全確保のための対応をとったということです。
警察は悪質ないたずらの可能性があるとみていますが、投稿された記録を解析するなどして、特定を進めることにしています。
亡くなった中学生 同級生“みんなのムードメーカー”
亡くなった中島咲彩さんは、北九州市内の公立の中学に通う3年生で、部活動にも熱心に取り組んでいたということです。
事件が起きた日、塾の帰りに同級生と一緒にファストフード店に立ち寄り、被害に遭いました。
荷物には勉強道具が入っていて、将来の進学などに向けて努力を続けていたとみられています。
また、同じ学校の生徒によりますと、中島さんは陸上部の部活動にも熱心に取り組み、友だちと学校での日々を楽しんでいたということです。
小学校から同級生だった女子生徒によりますと、中島さんは話がおもしろくてみんなのムードメーカーのような存在で、いつも明るく優しかったということです。
中島さんの同級生の女子生徒は「咲彩さんは明るくて優しく、みんなのムードメーカーでした。事件に巻き込まれてしまい、とても悲しいです。天国に行ってもみんなのことを忘れないでほしいです」と話していました。
別の同級生の父親は「娘は同じ塾に通っているので不安が大きいです。当面は送り迎えをする予定ですが、早く容疑者が捕まってほしいです」と話していました。
現場の店では同じ中学校に通う生徒の姿も
17日も、現場となったファストフード店には献花に訪れる人の姿がみられました。
亡くなった中島咲彩さんと同じ中学校に通う後輩の男子生徒は「中島さんとは何度か話したことがありますが、優しい印象でした。学校生活では陸上部に所属していて、真面目な性格だったと友人たちが話していました。きょうは事件のあと初めて登校しましたが、全体の雰囲気が暗かったです。いまだに事件が起きたことが信じられません」と話していました。
北九州 登校を控えた児童や生徒 2日間で6000人以上
事件を受けて、北九州市教育委員会は登下校中のパトロールの強化を進めるとともに、必要に応じてオンライン授業を行っていますが、教育委員会によりますと、16日、市内にある公立の小中学校や高校などで登校を控えた児童や生徒は4168人にのぼったということです。
さらに、17日も2124人が登校を控えたということです。
被害に遭った生徒2人は同じ中学校に通う同級生で、市教育委員会によりますと、2人が通う中学校は、16日は休校の措置が取られましたが、17日は予定どおり授業を再開しました。
そして、この中学校では、これまでに登校したすべての生徒に対する面談を終え、このうち強く不安を感じている生徒にはスクールカウンセラーによるカウンセリングを行ったということです。
このほかの学校でも、不安を訴える児童や生徒がいる場合には、必要に応じてカウンセリングなどを行う方針です。
逃げた男の特徴は
逃げた男の特徴について、警察が店内の防犯カメラを詳しく解析したところ、履いていたものは黄色っぽい靴ではなく、黄色っぽいサンダルのようなものだと16日発表しました。
警察が16日までに公表している特徴です。
▽年齢は40歳ぐらいで
▽身長が1メートル70センチ程度の中肉
▽灰色の上着と黒のズボンを着用し
▽黄色っぽいサンダルのようなものを履いていたということです。サンダルは、つま先があいていて甲が覆われたかたちだということです。
また、男は刃物を持ったまま逃走しているということです。
事件に関する情報は、小倉南警察署で受け付けています。
電話番号は093-923-0110です。
“軽装”の男 土地勘ある可能性
捜査関係者によりますと、警察は通報を受けた直後から現場周辺に緊急配備を敷き、主要な道路などにパトカーなど20台以上を出して警戒にあたりましたが、有力な手がかりは得られなかったということです。
また、現場から逃走した男はサンダルのようなものを履いた軽装で、これらのことから、警察は土地勘のある人物の可能性もあるとみています。
その一方で、現場は国道に面しているものの、夜になると人通りが減るうえ、周囲の道は入り組み、抜け道もあるということです。
警察は、周辺の防犯カメラの映像を解析するなどして男の行方を捜査しています。
専門家「日常の中で殺傷事件に巻き込まれる状況」
犯罪やテロ対策に詳しい日本大学危機管理学部の福田充教授は、今回の事件について「被害者の1人が『犯人は面識のない人』と答えており、無差別殺傷の可能性がある。無差別の場合は飲食店やショッピングモール、電車や駅といった人目につく場所でも犯行に及ぶことはあり、犯人が捕まってもいいと思っているならば、防犯カメラや人の目が抑止力にならない可能性がある」などと指摘しています。
このところ電車内での切りつけなど無差別に殺傷する事件が相次いでいるとして、「日本は外国と比べて比較的治安の状態ががよいと信じられてきたが、今の社会は日常生活の中で殺傷事件に巻き込まれる状況になっていることを意識する必要がある」としています。
そして、対策は極めて難しいとしたうえで「警察や自治体が防犯パトロールを増やして『見せる警備』を強化していくことや、子どもが日常生活でこういった犯罪に巻き込まれないように家族で対応を話し合うことも求められている」と話しています。