今年度の補正予算案をめぐり、自民党の森山幹事長、公明党の西田幹事長、国民民主党の榛葉幹事長は、11日午後、国会内で断続的に会談しました。
会談では、国民民主党が、与党との税制協議が進まなければ今年度の補正予算案に賛成しないこともありうるという姿勢を示したことを受けて対応を協議し、3党の幹事長で新たな合意文書を交わしました。
文書では「年収103万円の壁」の見直しの実現に向けた控除額について「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」としています。
また、ガソリン税の暫定税率については、時期は明示していませんが「廃止する」としています。
そして、この2つの項目の具体的な実施方法などについては引き続き、関係者間で誠実に協議を進めるとしています。
これを受けて、国民民主党は新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案に賛成する意向を示し、予算案は衆議院で賛成多数で可決される見通しとなりました。
「年収103万円の壁」国民が補正予算案に賛成意向 可決の見通し
自民・公明両党と国民民主党の幹事長が会談し、国民民主党が求める「年収103万円の壁」の見直しの実現に向けた合意文書を交わしました。
国民民主党は、今年度の補正予算案に賛成する意向を示し、予算案は衆議院で賛成多数で可決される見通しとなりました。
国民 榛葉幹事長「来年から引き上げ 評価したい」
国民民主党の榛葉幹事長は、記者団に対し「合意書の中で『178万円を目指す』という文言や、来年から引き上げるということ、ガソリン税の暫定税率を廃止をすると明言したことは評価したいし、自民党、公明党それぞれの幹事長には感謝申し上げたい」と述べました。その上で「これに基づいて具体的かつ現実的な交渉に入ると思うので、方向性がはっきりするし進展もすると思う。このラインに沿って1日も早く税金を国民に戻し、国民生活を元気にして、国を豊かにしたい」と述べました。
自民 森山幹事長「補正予算案 1日も早い成立を」
自民党の森山幹事長は記者団に対し「補正予算案には物価高で大変な状況を強いられている多くの国民への対応や、能登半島をはじめとする被災地への復旧・復興の予算が計上されていて、1日も早い成立が望まれている。理解をいただいた国民民主党に感謝したい。各野党にも真摯な予算審議を続けてもらい、敬意を表したい。国会として一定の責任を果たせたと思う」と述べました。
また、今回の合意文書について「各項目の具体的な実施方法は、引き続き関係者の間で誠実に協議を進めていくことになる。来年度予算案との関係もあるので、できるだけ早く協議を整えることが大事だ」と述べました。
その上で、178万円を「目指す」とした控除額の扱いについて「1年でやれるわけではないので、税制調査会を中心に誠意を持って協議していく」と述べました。
公明 西田幹事長「税収減考えると難しい 目指すことは大事」
公明党の西田幹事長は記者団に対し「補正予算案の採決を目前に控えて、3党の幹事長の間で、税制改正の大きな方向性を確認した意義は大きい。物価高で生活が大変苦しくなっている声に耳を傾けなければならず、思い切った減税が必要だと伝えた」と述べました。
その上で「来年から178万円まで基礎控除を引き上げるのは、税収減を考えると難しいが、方向性として目指すことは大事だ」と述べました。
自民 宮沢税調会長「釈然としない」
自民党の宮沢税制調査会長は記者団に対し「正直、びっくりしたことは事実だ。3党の税制調査会長の協議は順調とは言わないが、それなりの理性を持ち、一歩一歩、前進していた。そうした中で、このような話が出てくることについて釈然としない感じは正直言ってある」と述べました。
その上で合意内容への評価について問われ「幹事長が判断されたことであり、詳しい解釈も全く聞いていないので、今の段階でコメントしないほうがいいだろう」と述べました。
補正予算案 12日に衆院通過へ
衆議院予算委員会の理事会で今後の日程を協議し、12日午前中に石破総理大臣と関係閣僚が出席し、2時間の集中審議を行うことになりました。
そして集中審議のあと締めくくりの質疑を行い、補正予算案を採決することで合意しました。
また、衆議院議院運営委員会の理事会では、12日の本会議に予算案を緊急上程し、採決することで与野党が合意しました。
今年度の補正予算案は与党と国民民主党などの賛成多数で可決され、参議院に送られる見通しです。
修正可決されれば平成8年度当初予算以来
政府の新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案をめぐり、自民党と立憲民主党の国会対策委員長が会談し、立憲民主党の求めに応じる形で予算案の総則を変更し、修正することで合意しました。
具体的には、予算案の総則に、今年度の当初予算に計上した予備費から1000億円を能登半島の復旧・復興に充てるという趣旨の文言を新たに盛り込むとしています。
そして、こうした内容を反映させるため、自民党が修正案を提出することになりました。
衆議院の事務局によりますと、政府が国会に提出した予算案が衆議院予算委員会の審議の過程で修正されて可決されれば、第1次橋本内閣の平成8年度当初予算以来のことになるということです。
【この日午前の議論は…】
「103万円の壁」 与党“130万円相当に引き上げ”提案
来年度の税制改正に向けて、自民党の宮沢税制調査会長、公明党の赤羽税制調査会長、国民民主党の古川税制調査会長らは、11日午前、4回目となる税制協議を行いました。
この中で、与党は「年収103万円の壁」の見直しに関連し、先週、大学生などを扶養する世帯の所得税を軽減する「特定扶養控除」について、対象となる学生がアルバイトなどで得る年収要件の引き上げで合意したことを踏まえ、引き上げ幅の案を示しました。
具体的には、新たな特別控除を創設する形で、再来年1月以降、年収要件を現在の103万円から130万円相当に引き上げるとしています。
これに対し、国民民主党は、「配偶者特別控除」を念頭に、150万円以上に引き上げ、実施時期も来年1月からにすることなど、さらなる対応を求めました。
また、国民民主党は、政府・与党が縮小の方針を示し、ことしの年末に結論を得るとしている高校生などを扶養する場合の扶養控除の扱いについて、先送りを求め、与党は重く受け止める考えを示しました。
自民 宮沢税調会長「30万円くらいの上乗せで十分」
自民党の宮沢税制調査会長は記者団に対し「働く大学生が103万円を超えてはいけないということで『働き止め』を始めるのが10月くらいからと言われている。1か月で10万円くらいの収入ということなら、残りの10月から12月までの3か月で、30万円くらいの上乗せであれば十分だろうということで提案した」と述べました。
その上で「次回はあさって協議をする。おそらく、いわゆる『年収103万円の壁』自体についての議論をすることになるだろう」と述べました。
公明 赤羽税調会長 “高校生控除”結論先送り求める
公明党の赤羽税制調査会長は記者団に対し「次回は『特定扶養控除』の見直しについて、きょうの与党案をもとに議論する。また『103万円の壁』自体の見直しにかかる基礎控除についても、基本的な考え方を与党として示すことになる」と述べました。
また、赤羽氏は、公明党としても、高校生などを扶養する場合の扶養控除の扱いについて、結論を先送りするよう求めたことを明らかにした上で「高校生を持つ世帯の教育費用は大変高い。賃上げや基礎控除を引き上げる話がある中、扶養控除の額の引き下げについては、1年間は手をつけずに、有識者会議で検討し、成案を得るべきだと伝えた」と述べました。
国民 古川税調会長「130万円は低い」
国民民主党の古川税制調査会長は記者団に対し「『特定扶養控除』の年収要件の130万円までの引き上げというのは、ちょっと低いのではないかと思っており、『配偶者特別控除』の150万円に最低でも合わせるべきだと伝えた。経済状況がデフレに逆戻りするか、好循環に転じるかという分岐点にあるからこそ、いま国民の懐を温め、手取りを増やさなければならない」と述べました。
国民 「103万円の壁」見直し ガソリン減税など要望
政府が編成作業を進める来年度予算案をめぐり、自民党の小野寺政務調査会長、公明党の岡本政務調査会長、国民民主党の浜口政務調査会長が会談しました。
この中で、国民民主党は、先の衆議院選挙の党の公約をもとに、11の分野について要望事項を示しました。
手取りを増やす経済対策では、「年収103万円の壁」を見直し、所得税の基礎控除などを178万円に引き上げることや、ガソリン税の暫定税率の廃止によるガソリン減税を求めています。
また、教育支援では5兆円分の「教育国債」を発行し、高校卒業までの授業料や給食費などの無償化を実施することや、エネルギー対策で、原発の早期再稼働などを要望しています。
その上で、浜口氏は「年収103万円の壁」の見直しをめぐる3党の税制協議の結果、対応が不十分だった場合も想定し追加の支援策を予算を通じて行うよう口頭で伝えました。
これに対し、自民・公明両党は持ち帰って検討する考えを伝え、来週改めて協議することになりました。
自民 小野寺政調会長「国民民主の考え 来年度予算案にも反映」
自民党の小野寺政務調査会長は記者団に対し「今年度の補正予算案と来年度の本予算案は、一体のものだと受け止めており、国民民主党の考えを来年度予算案にも反映させるべく意見交換をした。来年度予算案についてもしっかり意見をすり合わせていきたい」と述べました。
国民 浜口政調会長「来年度予算案も3党で協議を」
国民民主党の浜口政務調査会長は記者団に対し「『年収103万円の壁』の見直しは、税でカバーできない状況も想定しながら、予算も含めて対応することを要望として盛り込んだ。経済を力強く回していくためには、プライマリーバランスの黒字化にこだわることなく対応すべきだ。経済あっての財政という考え方を基本に来年度予算案も3党で協議していきたい」と述べました。
一方、補正予算案の採決での対応を記者団に問われ「まだ決めていない。今後、党内で意見を聞きながら、最終的な賛否を判断していきたい」と述べました。