1986年に中学3年の女子生徒が福井市の自宅で殺害された事件で殺人の罪で懲役7年の判決が確定して服役した前川彰司さん(59)について、名古屋高等裁判所金沢支部はことし10月、再審を認める決定を出し、やり直しの裁判が開かれることになりました。
決定では、有罪の決め手とされた目撃証言について、新たに検察から開示された証拠などをふまえ、「捜査機関が関係者に誘導などの不当な働きかけを行って証言が形成された疑いが払拭できず、信用できない」などと判断していました。
再審に向けて、11日、裁判所と弁護団、検察による初めての3者協議が名古屋高裁金沢支部で開かれ、弁護団によりますと、この中で検察は、新たな証拠を提出しないことを明らかにしたということです。
また、再審の初公判は来年3月に開かれ、その日のうちに、審理が終結する見通しだということです。
検察が新しい証拠を提出しないまま、再審開始決定で示された裁判所の判断を覆すことは難しいとみられ、前川さんは無罪となる公算が大きくなっています。
38年前の中学生殺害事件で服役した男性 再審無罪の公算大
38年前、福井市で女子中学生が殺害された事件で、殺人の罪で服役した59歳の男性の再審=やり直しの裁判に向けて、裁判所と弁護団、検察による初めての協議が開かれ、検察は新たな証拠を提出しないことを明らかにしました。再審の初公判は来年3月に開かれ、1日で審理が終わる見通しで、男性は無罪となる公算が大きくなっています。
前川彰司さん「えん罪であったと認め 相応の謝罪を」
再審に向けた初めての3者協議のあと、前川彰司さんと弁護団は金沢市内で会見を開きました。
この中で前川さんは「来年3月に結審することに関しては納得している。袴田さんの再審が長くかかっているのを見ていたので、それより早く終結するのはありがたい」と話しました。
その上で「検察が証拠を隠していたのは事実なので、この事件はえん罪であったと認め、相応の謝罪をしてほしい」と訴えました。
吉村悟弁護士「大きな前進 来年の春までには判決を」
弁護団長の吉村悟弁護士は「再審の公判が1回で終結することと、こちらが提出する証拠について検察が同意することを目標に臨んだので、どちらも達成したのは大きな前進だ」と述べました。
そして、再審の判決については「提出する証拠が変わらなければ、内容も再審開始決定の時と方向性としては同じになると思う。年度内に結審し、来年の春までには判決が出てほしい」と話していました。
名古屋高検 刑事部長「回答は差し控える」
名古屋高等検察庁の石島正貴刑事部長は、「3者協議は非公開で、初公判前でもあり、回答は差し控える」と述べました。
また、今後の主張や立証の方針、スケジュールなどについては、「初公判前のためお答えを差し控える」などと繰り返した上で、「対応方針については上級庁と協議を進めている。再審公判に適正に対処していく」と述べました。