“原則出社” それとも“リモートワーク” あなたの働き方は?

“原則出社” それとも“リモートワーク” あなたの働き方は?
いま、あなたの職場ではどのような働き方をしていますか。

毎日出社している人もいれば、リモートワークを続けている人もいると思います。

出社とリモートワーク、それぞれのよさを最大限に生かそうとする企業の動きを取材しました。

(経済部記者 岡谷宏基/野中夕加)
【NHKプラスで配信中】(2024年12月13日(金) 午前7:45 まで)↓↓↓

オフィスに駄菓子屋?

都内にある経理業務などを自動化する会計ソフトを提供しているIT企業のオフィス。

その一角にあるのが「駄菓子屋」です。
実はこれ会議室なんです。なかをのぞいてみると…。
会議室ではお菓子を片手にアイデアを出し合っていました。

オフィスにはキッチンやビリヤード台がついた会議室もあり、社員が顔を合わせて気軽に話し合える環境づくりを目指しています。

完全リモート→原則週5日出社

オフィスがにぎわっているこの会社ですが、実は新型コロナの感染が拡大していた2020年3月、すべての社員を対象に完全リモートワークに切り替えました。
その後、2022年夏に「原則週3日出社」、ことし1月から「原則週5日出社」と徐々に出社に回帰してきました。

その最大の理由は、リモートワークによってコミュニケーション不足が起き、業務のスピードが遅くなっていたことだといいます。

出社していれば立ち話で済むような話でも、オンラインのミーティングを設定。スケジュールが空いていない社員もいて、5分で済む話を1週間後に行うこともあったそうです。
フリー 組織基盤部 笠井康多部長
「実際に新しいことを始める時に、リモートワークではトライの数自体が減ってしまっていた。競争に劣後して1度シェアを奪われてしまうと、なかなか取り返すことが難しくなるので、スピード感は非常に強く意識した」
出社に切り替え、会議の前後の空いた時間などで、すぐにコミュニケーションを取ることができるようになり、意思決定のスピードもあがったといいます。

現場で働く社員も出社のよさを感じています。5人のチームでリーダーを務めるエンジニアの中村潤さんに話を聞きました。
「オフィスを歩けば人がいて、困ったら雑談ベースで相談でき、仕事が前に進むことが起きやすくなった。みんなの意見を集約して意思決定する部分では進みやすくなったし、取りこぼしづらくなった」

対面ならではの価値も

この会社は、この5年で社員が500人から1700人と、3倍以上に増えました。

日々のコミュニケーションを通じて、会社の目指す方向性や事業の価値を、社員に浸透させることができるといいます。
笠井部長
「事業への理解を深めることでモチベーションが高くなり、周りの人の熱気に触れて仕事にまい進できることは、やはり対面のコミュニケーションならではだと思っている。それが自律的な社員の行動を促し、会社の成長につながっていくと考えている」

オフィスを10分の1の広さに

一方、リモートワークに大きくかじを切る企業もあります。

この大手住宅設備機器メーカーはおととし、東京 品川区に本社を移転しました。ビルの1フロアのみで、その広さは以前のおよそ10分の1しかありません。
本社などに所属する従業員はおよそ5000人。取材に訪れた日も、従業員の姿はありましたが、出社率は1割に満たない水準だといいます。

あえてオフィスを全員が入れない規模にしました。

なぜそうしたのか。会社では、子育てや介護をしている人など多様な人材が活躍できるよう、リモートワークが前提の働き方を進める必要があると考えているためです。
LIXIL 瀬戸欣哉社長
「みんなリモートワークが普通ですよっていう状況であれば、会社に来られない人もほかの人と同等に参加している気持ちが持てる。よくDiversity&Inclusion(多様性と受容)というが、大事なのは自分がチームの一員として含まれていると思えるかどうかだ。いろんな条件の人がいろんな働き方ができることで会社に貢献したいと思ってくれればプラスになるし、学生たちにもこの会社を選んでもらえることにつながる」

週4日在宅勤務

実際に社員の働き方を取材させてもらいました。
週4日在宅勤務をする小泉純子さん。営業部門のデジタル化などを進める業務を担当し、若手をまとめる立場です。

在宅勤務だと雑談などがなく、1人で集中して作業ができるといいます。

業務で意識しているのが、細かなスケジュール管理。カレンダーを使い、何時までに何をするのか事前に決めるようにしています。

さらに在宅勤務だと往復3時間の通勤時間がありません。そのぶん仕事のほか、子育てや家事にも充てられるといいます。
住宅設備機器メーカー 小泉純子さん
「オフィスだと会話が気になって、意識や集中が切れてしまうことがあったが、在宅勤務になってからはそういったことがあまりなくなった。時間に余裕が生まれ、自分の生活にも関心が向けられるようになったのはよかった」

出社は週に1度だけ

小泉さんが出社するのは週に1度だけ。

取材した日は、10人ほどのメンバーと顔を合わせ、業務の進め方について意見を交わしました。
小泉さん
「リモートワークは、コミュニケーションがとりにくいとよく言われますが、例えばどんな時ですか」
同僚
「長くこの職場にいる人たちはいいと思うけど、新人は会社になじむのに時間がかかると思う」
新人
「いま話しかけていいのか、目に見えないので不安なことがあった」
小泉さんのチームでは、新人への細かいケアは、なるべく顔をあわせて行うようにしているといいます。
小泉純子さん
「リアルで会う時間が短いからこそ、その時間を有効に使おうとみんな意識していて、毎日出社していた時よりコミュニケーションを大事にするようになった。自分のライフステージと仕事の状況に応じて出社とテレワークをみずから設定できるので働きやすい」

今後の働き方は?

今後の働き方はどうなるのか。

ことし7月、パーソル総合研究所が、全国の正社員およそ2万5000人を対象に行った調査では、リモートワークを実施していると回答した人は22.6%でした。
コロナ禍から減少傾向が続いているものの、リモートワークが定着する動きも見られるということです。

調査を行った小林祐児上席主任研究員は、リモートワークは大手企業、そのなかでも経営企画やマーケティングなどの事務職に集中していて、企業の規模や職種で二極化してきていると分析しています。
小林祐児 上席主任研究員
「リモートワークを経験した人のなかには、継続して行いたいという人が多い。採用活動を有利に進めるためにも、戦略的に進めていくべきだ。出社かリモートワークかという二元論に左右されることなく、うまく混ぜながら、コミュニケーションをどう円滑にするか工夫が必要だ」
そのうえで、働く人たちに意識してほしいことについても聞きました。
「働く側もリモートワークを、うまく使いこなしていってほしい。一方で今までオフィスにいれば自然と耳に入っていた情報や雑談、コミュニケーションが入ってこなくなるので、感度高く、自分で聞きに行ったり、メールを打ったり、会いに行ったりすることで補完してもらいたい」
(12月6日「おはよう日本」で放送)
経済部記者
岡谷 宏基
2013年入局
熊本局、経済部、ネットワーク報道部を経て現所属
経済部記者
野中 夕加
2010年入局
松江局、広島局、首都圏局を経て現所属