立ち入り検査を受けたのは、アメリカのIT大手、「アマゾン」の日本法人で東京・目黒区に本社がある「アマゾンジャパン」です。
アマゾンジャパンは自社の通販サイト上で同一商品が複数の業者から出品されている場合、商品をカートに入れるボタンなどのある「カートボックス」と呼ばれる目立つ位置に特定の出品業者を表示させるサービスを提供しています。
関係者によりますと、出品業者に対し、商品が「カートボックス」で掲載されるために、販売価格をほかの通販サイトなどと比べて「競争力のある価格」とさせ、引き下げさせていたということです。
また、商品の在庫管理や発送などをアマゾンジャパンが代行する物流サービスを利用すると「カートボックス」の表示で有利な扱いを行い、業者にサービスの利用を強いていたということです。
公正取引委員会はこうした行為は独占禁止法で禁止されている、優越的な地位の乱用や、拘束条件付きの取り引きなどにあたる疑いがあるとして、資料の分析を進めるとともに今後、全国の出品業者から広く情報提供を求め実態の解明を進める方針です。
アマゾンのこうしたサービスをめぐっては、EUの規制当局も自社の物流サービスを利用する業者の不当な優遇にあたるなどと指摘しています。
アマゾンジャパン 出品者に値下げ強いたか 公取委立ち入り検査
ネット通販大手「アマゾンジャパン」が自社の通販サイトに出品する業者に対し、目立つ位置で商品を表示するために価格を引き下げさせたり、自社の物流サービスの使用を強いたりしていたとして、公正取引委員会が26日、独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行ったことが関係者への取材で分かりました。
アマゾンジャパン「調査に全面的に協力」
アマゾンジャパンは「公正取引委員会の調査に全面的に協力してまいります」とコメントしています。
独占禁止法違反疑いでの立ち入り検査は3回目
巨大IT企業が運営する通販サイトで、取り引きする事業者が不利益を受けたとされる問題はこれまでも表面化し公正取引委員会は監視を強めています。
このうち、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いでアマゾンジャパンに立ち入り検査を行うのは今回で3回目です。
アマゾンジャパンは、2016年には他の通販サイトよりも商品の価格を高くしないよう取引業者に求めたなどとして、2018年には、利用者に販売した商品の値引き分を補填(ほてん)させたなどとして、公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。
いずれもアマゾンジャパンは違反とされた行為をやめ、2018年のケースでは取引業者に対しおよそ20億円を返金することになりました。
「カートボックス」が売り上げ増大の鍵
アマゾンジャパンは、通販サイト「マーケットプレイス」を運営し、外部の小売業者が商品を出品し販売する場を提供しています。
関係者によりますと、「マーケットプレイス」では、「カートボックス」と呼ばれる目立つ位置に特定の出品業者を表示させるサービスが売り上げ増大の鍵を握るといいます。
「カートボックス」には、商品の価格や配送についての説明などが表示されていて、そのまま「カートに入れる」ボタンで選択すれば購入手続きに進めます。
同一商品が複数の業者から出品されている場合、「カートボックス」に大きく表示されるのは一つの業者の商品だけで、それ以外の業者の商品はリンクで示されていて、アクセスして表示する手間がかかります。
目につきやすい「カートボックス」の商品のほうが購入につながりやすいことから、出品業者などの間では、有利な表示は「カートボックスを獲得する」と表現されているといいます。
「カートボックスを獲得する」ため出品業者はアマゾン側から「競争力のある価格」を求められると、不合理な価格の引き下げに従わざるをえなかったとみられます。
「競争力のある価格」で具体的にどの通販サイトより安くすればよいかは、出品業者側には示されていなかったということです。
中には、「価格を引き下げないとカートボックスを剥奪する」という連絡を受けた業者がいるほか、要求に応じなかった場合、カートボックスに表示されなくなった事例もあったということです。
今回、問題とされた「カートボックス」の獲得を有利にするもう一つの条件が、出品業者がアマゾンジャパンの物流サービスを利用することでした。
「フルフィルメント」と呼ばれる物流サービスで、商品の受注や在庫管理、それにこん包や発送、代金回収などをアマゾンジャパンが出品業者に代わって一元的に行います。
出品業者は、「カートボックス」を獲得するため、費用を負担し「フルフィルメント」の利用を強いられていた疑いがあるということです。
公正取引委員会は、アマゾンジャパンがこうした要求で自社の通販サイトの競争力を上げていたとみて、アメリカの「アマゾン」の関与についても調査することにしています。