26日午前8時半ごろ、種子島宇宙センターで行われた固体燃料式の小型ロケット、「イプシロンS」の2段目の燃焼試験で、燃焼中に異常が発生しました。
JAXA=宇宙航空研究開発機構などによりますと、試験はおよそ120秒間行われる計画でしたが、燃焼開始後20秒ほどから燃料を燃やす容器内の圧力が予測より徐々に高くなり、49秒後に爆発したということです。
この爆発で試験場で火災が発生し消火活動が行われましたが、けが人はいませんでした。試験場の周辺には爆発したロケットの部品などが飛び散っているということで、JAXAは部品を回収するとともに、試験で取得した200項目のデータを評価するなどして、爆発の詳しい原因を究明するとしています。
「イプシロンS」は、JAXAなどが開発中の日本の主力ロケットの1つで、去年7月に秋田県の試験場で行われた同じ2段目の燃焼試験では、試験開始からおよそ57秒後に爆発事故が発生しました。
JAXAは前回の爆発の原因を特定し、対策をとった上で、今回の再試験に臨んだとしていますが、今回の爆発と前回の爆発事故に共通するデータの傾向も見られるとして詳しく調べることにしています。
小型ロケット「イプシロンS」燃焼試験で爆発 去年に続き2回目
鹿児島県の種子島宇宙センターで行われた、開発中の日本の新たな主力ロケット「イプシロンS」の燃焼試験で爆発が発生しました。「イプシロンS」は衛星打ち上げビジネスへの参入を目指していますが、燃焼試験での爆発は去年に続いて2回目で、今後の打ち上げ計画への影響は避けられない見通しです。
2段目の燃焼試験で燃焼中に異常発生
JAXA「試験場の復旧には最低限数か月かかる」
JAXAの井元隆行プロジェクトマネージャは「このような事態となり非常に残念だ。試験場の復旧には最低限数か月はかかると見られ、原因究明を進めるとともに年度内の打ち上げへの影響についても並行して検討していく」などと話しています。
燃焼試験で異常は去年7月に続いて2回目
去年7月に秋田県の試験場で行われた同じ2段目の燃焼試験では、試験開始からおよそ57秒後に異常な燃焼による爆発事故が発生しました。
前回の試験での爆発の原因についてJAXAは、点火装置の一部が熱で溶けて飛び散り圧力容器内の断熱材が損傷して異常な燃焼が発生したためだと結論づけ、対策をとった上で、今回、種子島宇宙センターでの再試験に臨んでいました。
今回の燃焼試験 3段式ロケットの2段目の試験
「イプシロンS」は固体燃料を使った3段式のロケットで、打ち上げを前に各段の性能を確認するため燃焼試験が行われてきました。
今年度中の打ち上げに向けて、JAXAはこれまでに1段目と3段目の燃焼試験をすでに終えていて、2段目の試験を残すのみとなっていました。
今回行われた2段目の試験で、燃料への着火や燃焼の特性、それに、断熱材の設計の妥当性などを確認した上で、打ち上げに向けてロケットの組み立てなど本格的な作業に進む計画でした。
専門家「想定外の燃焼 圧力高くなり容器が破裂か」
宇宙工学に詳しい大同大学の澤岡昭名誉学長は、今回の爆発について「固体燃料ロケットは大きなシリンダーの中に火薬が詰め込まれているが、想定外の燃焼が起きて圧力が高くなり、容器が破裂したのではないか。映像を見る限り、前回、秋田の試験場で起きたトラブルと非常に似ている現象だと思う」と指摘しました。
その上で「前回の事故では、点火装置が地上で見つかったため、確実な原因が分かった。今回の原因究明は、ロケットの破片を確実に回収できるかにかかっている」と話していました。
また、今後の影響について「試験場がダメージを受けていれば改修や作り直しが必要となり、全体の進行が遅れて今年度の打ち上げのための試験を行うのは難しくなると思う。イプシロンSは日本の小型ロケットの商業化のために非常に重要だが、国際的なビジネス競争では開発が1年遅れるとかなりのダメージになる」と指摘しました。
【動画24秒】炎のかたまりのようなもの 海の方へ
「イプシロンS」の燃焼試験は午前8時半から、種子島宇宙センター内にある地上燃焼試験場で始まり、報道関係者は、試験場からおよそ900メートル離れた高台から撮影が許可されていました。
開始直後、大量の白い煙が上空へと上がっていきましたが、およそ30秒後、ボンという爆発音が発生し、炎のかたまりのようなものが海の方へ飛んでいく様子が確認できました。
【動画47秒】JAXAが設置したカメラの画像
JAXAが試験場のそばに設置したカメラの画像からは、燃焼試験が始まったあと、白煙とともに炎が広がっていくのが確認され、最初に炎が確認されてからおよそ50秒後に白煙が黒煙に変わった様子も確認できます。
今後の打ち上げ計画への影響も
政府の宇宙基本計画の工程表によりますと、小型ロケット「イプシロンS」は、今回の燃焼試験のあと、発射場のある鹿児島県肝付町の内之浦宇宙観測所から今年度中に打ち上げられる計画となっていて、ベトナムの地球観測衛星が搭載される予定です。
また、来年度以降も「イプシロンS」での衛星の打ち上げが予定されていて、今回の燃焼試験を受けて今後の打ち上げ計画への影響が懸念されています。
日本が展開する衛星打ち上げビジネスへの影響は
「イプシロンS」は、JAXAとIHIエアロスペースが開発中の固体燃料式の小型ロケットです。
2013年から運用されている日本の主力ロケット「イプシロン」を改良した全長およそ27メートルの3段式のロケットで、世界で需要が高まる衛星打ち上げビジネスへの参入を目指しています。
国際競争が激しくなるなか「イプシロンS」は短い準備期間で打ち上げられる固体燃料式ロケットの特性を生かして、小型衛星などを宇宙へ運ぶ手段として開発されてきました。
今回、打ち上げ前の燃焼試験で2回続けて爆発が発生したことで、今後、日本が展開していく衛星打ち上げビジネスへの影響も懸念されています。
林官房長官「基幹ロケット開発 極めて重要」
林官房長官は午前の記者会見で「燃焼試験は、あらかじめ管理された立ち入り規制エリア内で実施され、現時点で人的被害はなかったと報告を受けている。基幹ロケットの開発は、わが国の宇宙開発の自立性などの観点から極めて重要であり、今後、JAXAで原因の調査と対応策の検討をしっかりと実施していくものと承知している」と述べました。