生活保護費の引き下げ 取り消す判決 岡山地裁

生活保護費が2013年から段階的に引き下げられたことについて、岡山県内の受給者が国や自治体を訴えた裁判で、岡山地方裁判所は国の対応を違法だと判断し、引き下げを取り消す判決を言い渡しました。

生活保護費のうち、食費や光熱費など生活費部分の基準額について、国は物価の下落などを反映させる形で2013年から2015年にかけて最大で10%引き下げました。

これについて、岡山県内の受給者38人は「憲法で保障された『健康で文化的な最低限度の生活』を下回る生活を強いられた」として、自治体が行った引き下げの取り消しなどを求めていました。

28日の判決で、岡山地方裁判所の上田賀代裁判長は、引き下げにあたって国が行った物価の下落に関する調整について「生活保護の基準額が一般の低所得世帯の消費水準と均衡したものかどうか、適切な検討や検証が行われていない」と指摘しました。

そのうえで「厚生労働大臣の判断には裁量権の逸脱があり、引き下げた処分は違法だ」として、原告のうちすでに亡くなった人などを除く28人について引き下げを取り消しました。

一方、国に対して賠償を求める訴えは退けました。

原告の弁護団によりますと、全国で1000人余りが同様の裁判を起こしていて、国の判断の違法性を指摘した判決は今回で19件目になるということです。

一方、ほかの14件では訴えが退けられています。

弁護団 “大いに評価 控訴せず判決確定を ”

判決後の記者会見で、原告の弁護団の森岡佑貴事務局長は「生活保護制度は、新型コロナの感染拡大や記録的な物価高により、改めて重要性が見直されていて、今回の判決は司法の持つ少数者の人権の擁護という使命を果たした点で大いに評価できる。国や自治体側はこの判決の意義を重く受け止め、控訴せず確定させることを求めたい」と述べました。

また、原告の代表を務める岡山市の74歳の男性は「物価高もあり生活は苦しいです。勝訴してうれしいですが、国側は控訴すると思うので、まだまだ闘いは続きます。体に気をつけて頑張りたい」と話していました。

厚労省 “適切に対応したい”

判決について厚生労働省は「判決内容の詳細を精査し、関係省庁や自治体と協議したうえ、今後、適切に対応したい」とコメントしています。