自民党 収支報告書の不記載議員 有権者の判断は?

自民党の政治とカネの問題が争点となった今回の選挙。政治資金収支報告書に不記載があった議員ら46人が立候補しました。有権者の判断はどうだったのでしょうか。

不記載議員 46人の選挙結果は

【当選18人】
▽平沢勝栄氏(東京17区)
▽萩生田光一氏(東京24区)
▽西村康稔氏(兵庫9区)
▽簗和生氏(栃木3区)
▽福田達夫氏(群馬4区)
▽柴山昌彦氏(埼玉8区)
▽松野博一氏(千葉3区)
▽宮下一郎氏(長野5区)
▽田畑裕明氏(富山1区)
▽小森卓郎氏(石川1区)

▽佐々木紀氏(石川2区)
▽稲田朋美氏(福井1区)
▽根本幸典氏(愛知15区)
▽鈴木英敬氏(三重4区)
▽関芳弘氏(兵庫3区)
▽宮内秀樹氏(福岡4区)
▽加藤竜祥氏(長崎2区)

▽世耕弘成氏(和歌山2区)

【落選28人】
▽上杉謙太郎氏(福島3区)
▽中根一幸氏(埼玉6区)
▽三ツ林裕己氏(埼玉13区)

▽下村博文氏(東京11区)
▽小田原潔氏(東京21区)

▽細田健一氏(新潟2区)
▽高木毅氏(福井2区)
▽和田義明氏(北海道5区)
▽木村次郎氏(青森3区)
▽藤原崇氏(岩手3区)
▽西村明宏氏(宮城3区)
▽亀岡偉民氏(福島1区)
▽大塚拓氏(埼玉9区)
▽山田美樹氏(東京1区)

▽丸川珠代氏(東京7区)
▽義家弘介氏(神奈川16区)
▽高鳥修一氏(新潟5区)
▽若林健太氏(長野1区)
▽鈴木淳司氏(愛知7区)
▽青山周平氏(愛知12区)
▽元議員の中山泰秀氏(大阪4区)
▽新人の加納陽之助氏(大阪10区)
▽宗清皇一氏(大阪13区)
▽谷川とむ氏(大阪19区)

▽井原巧氏(愛媛2区)
▽武田良太氏(福岡11区)

▽衛藤征士郎氏(大分2区)
▽宮沢博行氏(静岡3区)

▼比例重複なし 東京7区 丸川氏 落選

東京7区で、自民党新人の丸川珠代・元オリンピック・パラリンピック担当大臣が落選しました。

丸川氏は53歳。2007年の参議院選挙で初当選し、これまでに環境大臣やオリンピック・パラリンピック担当大臣を務めました。参議院議員3期目の途中で東京7区から衆議院選挙に立候補することになりました。収支報告書への不記載で、自民党から戒告処分を受け、比例代表の重複立候補は認められませんでしたが、党の公認を得て戦いました。丸川氏は、一連の問題を反省し政治改革に取り組む姿勢を強調するとともに、災害やテロに負けない都市づくりなどを訴えましたが、十分支持が広がらず、落選しました。

丸川氏は「しっかりと皆様にご信任いただくことができず、誠に申し訳ございませんでした。この問題が起きてから今に至るまでの我が党の対応に対して、国民の皆様、地域の皆様の理解が得られるような状況になかったということだと思います。地域の有権者のみなさまが選んだ結果でございますので、しっかり受け止めて私たちは前に進んでいかなければいけないと思います」と述べました。

▼非公認 東京11区 下村氏 落選

東京11区で、無所属の前議員で元自民党政務調査会長の下村博文氏が落選しました。

下村氏は70歳。東京都議会議員を経て1996年の衆議院選挙で初当選し、文部科学大臣や党の政務調査会長などを務めました。下村氏は、収支報告書への不記載で党員資格停止の処分を受けたため、今回は自民党の公認を得られず、無所属で臨みました。一連の問題を反省し、政治資金の流れを透明化していく姿勢を強調するとともに、物価高対策や少子化対策などを訴えて10回目の当選を目指しましたが十分支持が広がらず、落選しました。

下村氏は「1年間の党員資格停止を受けた中での無所属の戦いで、当初から大変厳しい戦いでありました。お力をいただいたにもかかわらず、私の不徳のいたすところで今回のような結果になってしまったことを、今回の選挙で皆様に恩返しをできなかったことを申し訳なく思います」と話していました。

旧安倍派「5人衆」の状況は

自民党旧安倍派の有力議員「5人衆」の状況を見ていきます。

▼離党 和歌山2区 世耕氏 当選

和歌山2区では、自民党の参議院幹事長などを務め、今回、無所属で立候補した世耕弘成氏が初めての当選を果たしました。

世耕氏は61歳。1998年の参議院和歌山選挙区の補欠選挙で初当選し、安倍政権では経済産業大臣や官房副長官などを歴任しました。2019年から自民党の参議院幹事長を務めていましたが、政治とカネの問題をめぐって党から離党勧告の処分を受けてことし4月に離党し、今回の選挙には無所属で臨みました。和歌山2区には二階・元幹事長の政界引退を受けて三男の二階伸康氏が自民党の公認を得て立候補し、世耕氏との間で保守分裂の激しい争いとなりました。世耕氏は政治資金問題について謝罪するとともに、少子化対策や雇用対策を通じ、地域の活性化に取り組むなどと訴えて、二階氏を破り、初めての当選を果たしました。

▼非公認 東京24区 萩生田氏 当選

東京24区は無所属の前議員で、自民党の政務調査会長を務めた萩生田光一氏が7回目の当選を果たしました。

萩生田氏は61歳。安倍元総理大臣に近かったことで知られ、経済産業大臣や文部科学大臣などを歴任しました。自民党の政務調査会長も務めましたが、収支報告書に不記載があった問題をめぐり、去年12月に辞任しました。その後、自民党から1年間の「党の役職停止」の処分を受け、今回の選挙には自民党から公認を得られず、無所属で臨みました。選挙戦では一連の問題を反省し、政治の信頼回復に努めていく姿勢を強調するとともに、憲法改正の実現や食料自給率の拡大などを訴えて自民党や公明党の支持層を固め、7回目の当選を果たしました。

▼比例重複なし 千葉3区 松野氏 当選

千葉3区は、自民党の前議員で公明党が推薦する松野博一・元官房長官が9回目の当選を果たしました。

松野氏は62歳。2000年の衆議院選挙で初当選し、文部科学大臣などを歴任したあと2021年10月の岸田内閣の発足以来、官房長官を務めました。派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で去年12月に不信任決議案が提出され、決議案は否決されましたが、2日後に「国政に遅滞を生じさせたくない」などとして辞任しました。松野氏は収支報告書に不記載があり、1年間の「党の役職停止」の処分を受けました。政治倫理審査会で説明したことで党の公認を得て選挙に臨みましたが、比例代表への重複立候補は認められませんでした。選挙戦では一連の問題をおわび、政治改革を徹底する姿勢を強調するとともに、官房長官として内政から外交安全保障まで幅広く取り組んだ経験などを訴えて自民党や公明党の支持層などを固め、9回目の当選を果たしました。

▼非公認 兵庫9区 西村氏 当選

兵庫9区は、無所属で立候補した西村康稔・元経済産業大臣が8回目の当選を果たしました。

西村氏は62歳。旧通産省を経て、2003年の衆議院選挙で初当選し、経済再生担当大臣や官房副長官などを歴任しました。岸田政権では、経済産業大臣を務めましたが、政治とカネの問題をめぐって去年12月に辞任しました。その後、西村氏は、自民党から党員資格停止の処分を受けたため、今回の選挙には党の公認を得ずに無所属で臨みました。選挙戦では、政治資金問題について謝罪するとともに、経済対策や地域活性化などに力を尽くしていくと訴えて与党の支持層などを固め、8回目の当選を果たしました。

▼非公認 福井2区 高木氏 落選

福井2区は、無所属の前議員で元自民党国会対策委員長の高木毅氏が落選しました。

高木氏は68歳。2000年の衆議院選挙で初当選し、これまでに復興大臣や自民党の国会対策委員長などを歴任してきました。高木氏は収支報告書への不記載で自民党から党員資格停止の処分を受けたため、今回は党の公認を得られず、無所属で臨みました。また福井2区では、自民党の元衆議院議員の山本拓氏も無所属で立候補し、保守分裂となった上、立憲民主党や日本維新の会などの候補も加わる形で激しい選挙戦となりました。高木氏は、不記載問題を謝罪し、信頼回復に努める姿勢を示すとともに防災対策の強化やインフラ整備の推進などを訴えましたが、十分支持が広がらず、落選しました。

そのほかの選挙区では

▼比例重複なし 福岡11区 武田氏 落選

福岡11区で、自民党の前議員で公明党の推薦を受けた武田良太・元総務大臣が落選しました。

武田氏は56歳。衆議院議員の秘書を経て、2003年の衆議院選挙で初当選し、総務大臣や国家公安委員長を歴任したほか、自民党の旧二階派では事務総長を務めました。武田氏は収支報告書に不記載があり、自民党から1年間の「党の役職停止」の処分を受けました。政治倫理審査会で説明したことで党の公認は得られましたが、比例代表への重複立候補は認められませんでした。選挙戦で武田氏は、一連の問題をおわびし、政治改革に取り組む姿勢を示すとともに、誰もが実感できる経済成長の実現や地方の活性化などを訴え、8回目の当選を目指しましたが、支持は十分に広がらず、落選しました。

▼比例重複なし 東京1区 山田氏 落選

東京1区は自民党の前議員で、公明党が推薦する山田美樹氏が落選しました。

山田氏は50歳。経済産業省の職員などを経て2012年の衆議院選挙で初当選し、これまでに環境副大臣などを務めました。山田氏は収支報告書への不記載があり、今回の選挙で比例代表への重複立候補が認められませんでしたが、自民党の公認は得て戦いました。選挙戦で政治とカネの問題への反省を踏まえ、政治改革に全力を挙げる姿勢を示すとともに子育て支援や教育施策などの充実を図っていくとアピールし支持を呼びかけましたが及ばず、落選しました。

▼比例重複なし 大分2区 衛藤氏 落選

大分2区で、自民党の前議員で公明党の推薦を受けた衛藤征士郎・元衆議院副議長が落選しました。

衛藤氏は83歳。参議院議員を経て1983年の衆議院選挙で初当選して以降13回連続で当選し、防衛庁長官や衆議院副議長などを歴任しました。衛藤氏は収支報告書の不記載で、自民党から半年間の「党の役職停止」の処分を受け、比例代表への重複立候補は認められませんでしたが、党の公認は得て選挙戦に臨みました。選挙戦で衛藤氏は、不記載を謝罪し、政治改革に取り組み続ける決意などを訴え、14回目の当選を目指しましたが、支持が広がらずに落選しました。

▼非公認 東京17区 平沢氏 当選

東京17区は、自民党が公認しなかった無所属の前議員、平沢勝栄さんが10回目の当選を果たしました。

不記載議員の46人は

非公認10人

党から公認されず無所属で立候補したのは10人です。

◆党から「党員資格停止」の処分を受けた
▽下村博文氏(東京11区)
▽西村康稔氏(兵庫9区)
▽高木毅氏(福井2区)

◆1年間の「党の役職停止」の処分が継続していて、政治倫理審査会で説明していない
▽萩生田光一氏(東京24区)
▽平沢勝栄氏(東京17区)
▽三ツ林裕己氏(埼玉13区)

◆半年間の「党の役職停止」の処分を受け、その期間が終わった
▽中根一幸氏(埼玉6区)
▽小田原潔氏(東京21区)

◆「戒告」の処分を受けた
▽細田健一氏(新潟2区)
処分は受けていないものの不記載があり、比例代表単独での立候補を辞退した
▽上杉謙太郎氏(福島3区)

公認 比例重複なし34人

公認されたものの、比例代表への重複立候補が認められなかったのは34人です。

◆1年間の「党の役職停止」の処分を受け、政治倫理審査会で説明した
▽松野博一氏(千葉3区)
▽武田良太氏(福岡11区)

◆半年間の「党の役職停止」の処分を受け、その期間が終わった
▽簗和生氏(栃木3区)
▽宗清皇一氏(大阪13区)
▽衛藤征士郎氏(大分2区)

◆「戒告」の処分を受けた
▽和田義明氏(北海道5区)
▽西村明宏氏(宮城3区)
▽柴山昌彦氏(埼玉8区)
▽大塚拓氏(埼玉9区)
▽丸川珠代氏(東京7区)
▽高鳥修一氏(新潟5区)
▽関芳弘氏(兵庫3区)
▽元議員の中山泰秀氏(大阪4区)

◆処分は受けていないものの不記載があった
▽木村次郎氏(青森3区)
▽藤原崇氏(岩手3区)
▽亀岡偉民氏(福島1区)
▽福田達夫氏(群馬4区)
▽山田美樹氏(東京1区)
▽義家弘介氏(神奈川16区)
▽田畑裕明氏(富山1区)
▽小森卓郎氏(石川1区)
▽佐々木紀氏(石川2区)
▽稲田朋美氏(福井1区)
▽若林健太氏(長野1区)
▽宮下一郎氏(長野5区)
▽鈴木淳司氏(愛知7区)
▽青山周平氏(愛知12区)
▽根本幸典氏(愛知15区)
▽鈴木英敬氏(三重4区)
▽谷川とむ氏(大阪19区)
▽井原巧氏(愛媛2区)
▽宮内秀樹氏(福岡4区)
▽加藤竜祥氏(長崎2区)
▽新人の加納陽之助氏(大阪10区)

離党し無所属2人

離党し無所属で立候補したのは2人です。

◆離党勧告の処分を受け離党した
▽世耕弘成氏(和歌山2区)

◆不記載があり、女性との不適切な関係を報じられて議員を辞職した
▽宮沢博行氏(静岡3区)