中部電力の子会社が岐阜県内で計画していた風力発電施設の建設をめぐり、反対していた岐阜県大垣市の住民など4人は、大垣警察署の警察官に活動歴や病歴などの個人情報を集められ、2013年から翌年にかけて会社側に伝えられたのは違法だとして、県などに対し、収集した個人情報の抹消や損害賠償を求める訴えを起こしました。
1審の岐阜地方裁判所は、個人情報の抹消については訴えを退けた一方、警察が会社側に個人情報を伝えたことについて違法だと判断し、県に220万円を支払うよう命じていました。
13日の2審の判決で名古屋高等裁判所の長谷川恭弘裁判長は「原告らの活動は、何ら犯罪性や公共の安全や秩序に対する危険性も認められない。市民運動やそのほう芽の段階にあるものを際限なく危険視して情報収集し監視を続けることが、憲法による集会や結社、表現の自由の保障に反することは明らかだ」と指摘しました。
そのうえで原告の個人情報を収集したことや会社側に提供したことをいずれも違法だと判断して、県に対し、警察が集めた個人情報の一部を抹消して、440万円を支払うよう命じました。
判決では、警察の情報収集活動について「どのような場合に許されないのかなどを明確に規定する、具体的な法律上の根拠があることが望ましいことは明らかだ。『公共の安全と秩序の維持』を名目として、フリーハンドで活動することは許されない」などと述べ、法整備の必要性にも言及しました。
原告の弁護団によりますと、警察の情報収集活動の違法性を認めて集めた個人情報の抹消を命じる判決は、初めてとみられるということです。
警察収集個人情報 一部抹消命じる 施設建設めぐり 名古屋高裁
中部電力の子会社が岐阜県内で計画した風力発電施設の建設に反対していた住民などが警察に個人情報を収集され、会社側に提供されたのは違法だと訴えた裁判で、2審の名古屋高等裁判所は「市民運動を危険視して情報収集することが憲法に反することは明らかだ」と指摘し、県に対し警察が集めた個人情報の一部を抹消して440万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
弁護団「画期的な判決」
判決後の会見で、原告の1人の近藤ゆり子(75)さんは「裁判を通して『何かやると警察に見張られてしまう』ということは、この民主主義社会であってはならないのではないかと思っていました。自分の生き方を裁判所が認めていただいたと思っています。いい判決が出てうれしいです」と話していました。
また、弁護団長の山田秀樹弁護士は「警察が今も保有していると認められた会社側との議事録について抹消を命じ、警察による収集・保有・提供も違法だと認めた。まさに画期的な判決と言っていいと思う」と評価しました。
専門家「重要な判決で憲法上も評価できる」
憲法が専門の日本大学法学部の玉蟲由樹教授は「公安警察の情報収集活動に憲法上のコントロールが及ぶべきだという判決で、踏み込んだ内容だ。公安警察に限らず、公権力が市民の情報を集めることには様々なメリットもあるが、プライバシーに非常に強く介入してしまうというデメリットもある。そこの線引きがあいまいなまま『警察だからいいだろう』という部分がこれまではあったが、それに対して、プライバシーに配慮した活動をしないといけないといっている点で重要な判決で、憲法上も評価できる」と述べました。
その上で「情報が収集されることによって、人々のさまざまな表現活動や集会が阻害されてしまうという問題についても明確に認めている部分も重要で、広く市民に関わる判決だ」と話していました。
岐阜県警「判決内容を検討し今後の対応を決めたい」
判決について岐阜県警察本部監察課は「判決内容を検討した上で、今後の対応を決めさせていただきます」とコメントしています。