陸上の男子マラソンには日本から東京大会で6位に入賞した大迫傑選手と、いずれも初出場で26歳の赤崎選手、28歳の小山直城選手の3人が出場しました。
パリオリンピック、陸上の男子マラソンが行われ、オリンピック初出場の赤崎暁選手が2時間7分32秒のタイムで6位に入賞しました。男子マラソンでの日本選手の入賞は、東京大会で6位の大迫傑選手に続いて2大会連続です。
記事後半では、レースの経過を詳しくお伝えしています。
男子マラソン 赤崎 大迫 小山の3人が出場
序盤はウガンダや中国の選手がレースを引っ張る大きな先頭集団に日本の3人の選手がついてレースを進めました。
中盤あたりで小山選手が遅れ始め、赤崎選手と大迫選手がトップの選手を追う第2集団につくと、徐々に前に出た赤崎選手が25キロ地点をトップで通過しました。
レースが動いたのは28キロ過ぎ、エチオピアのタミラト・トラ選手が抜けだして赤崎選手が引き離され、トラ選手が独走します。
赤崎選手は中盤以降、2位を争う集団の中で粘りの走りを見せ、40キロ地点を5番手で通過すると自己ベストを1分29秒更新する2時間7分32秒のタイムでフィニッシュし、6位に入賞しました。
男子マラソンでの日本選手の入賞は、東京大会で6位の大迫傑選手に続いて2大会連続です。大迫選手は2時間9分25秒で13位、小山選手は2時間10分33秒で23位でした。
3連覇を目指したケニアのエリウド・キプチョゲ選手は20キロ手前で遅れ始め、途中棄権となりました。
▽金メダルは2時間6分26秒でオリンピック新記録をマークした、エチオピアのタミラト・トラ選手
▽銀メダルはベルギーのバシル・アブディ選手で2時間6分47秒
▽銅メダルはケニアのベンソン・キプルト選手で、2時間7分でした。
《日本選手 談話》
赤崎暁「超楽しかった 最高」
日本選手トップの6位でフィニッシュした赤崎選手はレース後「超楽しかった、最高だ。今までで一番最高で楽しかった」と笑顔を見せました。
2時間7分32秒の自己ベストをマークしたことについては「2時間5分、6分台が出るぐらいの練習はしてきた。この起伏のあるコースで7分台というのは自分にとってすごくよかった。この3か月間、落ち込むこともあったが練習の成果を出すことができた」と充実感をにじませた様子で話していました。
大迫傑「ロサンゼルス大会に向けて また頑張りたい」
13位でフィニッシュした大迫傑選手は「非常にタフなコースだった。登りで力を使ってしまった部分はあったが、最後までやりきろうと思って走った。納得いく順位ではなかったが、最後まで諦めずに走れたのでよかったと思う」とレースを振り返りました。
その上で「もう少し前にいきたかった。これで終わらずにロサンゼルス大会に向けてまた4年、しっかり準備してパワーアップできるように頑張りたい」とロサンゼルス大会への出場に意欲を見せていました。
小山直城「長く苦しいレースだった」
23位でフィニッシュした小山直城選手は「本当に長い苦しいレースだった。最初の登り、18キロぐらいで先頭から離れてしまったが、たくさんの応援で最後まで走ることができたのはよかった。また、オリンピックや世界選手権に戻ってこられるように練習を頑張りたい」と話していました。
【解説】赤崎 徹底した坂道対策
初めてのオリンピックで自己ベストを大きく更新し、6位入賞を果たした赤崎暁選手は、大会前に行ってきた徹底した坂道対策が実を結びました。
パリオリンピックのマラソンコースはこれまでの大会に比べて起伏が激しく「オリンピック史上最も難しいコース」ともいわれました。19キロすぎからの急な上り坂をはじめ、28キロすぎから続く最大勾配13.5%とされる上り坂、さらにそれをのぼり終えたあとの31キロすぎからの下り坂と、中盤以降の大きなアップダウンが選手たちを苦しめました。
実際、大会2連覇中で今大会も優勝候補と見られたケニアのエリウド・キプチョゲ選手は20キロ手前で脇腹を押さえて失速するなど、有力選手たちが次々とメダル争いから脱落しました。
それでも赤崎選手はこのアップダウンでも先頭集団から離されず粘り強い走りを見せ、35キロ過ぎまでメダル争いを続けました。
実は大会前の3か月間は練習のジョギングの段階から意識して坂道を走ったり坂道でのダッシュを繰り返したりと、徹底的にアップダウンへの対策を行ってきたといいます。
競技前にも「しっかりと坂道の対策を練ってきたので、そこで集団から離れないように意識したい」と話していて、まさに描いていたとおりの展開となりました。
最後は終盤まで競ってきた海外勢にやや引き離されて6位とメダルには届きませんでしたが、銅メダルまでは32秒差と、高速化が進み苦戦も予想された中で最後まで食らいつくレースを見せました。
赤崎選手のオリンピック前の自己ベストは2時間9分台。前回の東京大会で入賞し男子マラソン界を引っ張ってきた大迫傑選手や、選考レースのMGCを制した小山直城選手と比べてタイムやこれまでの実績では劣る中、初めてのオリンピックの舞台で集中的に取り組んできた練習の成果を存分に発揮しました。
赤崎選手はレース直後「超楽しかった。今までで一番最高で楽しかった」と満足そうに笑顔で話したあと「ここ3か月間の練習は、やめたくなるほど坂を上ってきた。せっかくそれだけ頑張ってきたものをここでむだにするのはよくないので、自分に活を入れて走りきった」と納得の表情で振り返りました。
そのうえで「このアップダウンのあるコースで2時間7分台を出せたということはもう少し平たんなコースなら日本記録も目指せる。今後はそこに向かってさらに成長していきたい」と話していました。
キプチョゲはまさかの棄権
オリンピックの男子マラソン2連覇中で、今大会も優勝候補とみられていたケニアのエリウド・キプチョゲ選手はまさかの棄権に終わり、史上初の大会3連覇はなりませんでした。
現在、世界歴代2位のタイムを持つ39歳のキプチョゲ選手は2012年にトラック種目からマラソンに転向し、2016年のリオデジャネイロオリンピックの男子マラソンで金メダルを獲得しました。
さらに2018年のベルリンマラソンでは当時の世界記録を1分以上縮めて、史上初めて2時間1分台のタイムをマークしました。
そして東京オリンピックでは男子マラソンで史上3人目となる2大会連続の金メダルを獲得していて、今大会では前人未到の大会3連覇を目指していました。
しかしレースでは序盤から思うようにペースが上がらず、20キロ手前の上り坂では脇腹を手でおさえるようなしぐさも見せて急失速しました。
中間地点では先頭とはおよそ1分20秒差の58位と、この時点で3連覇は絶望的となり、その後もレースを続けましたが30キロすぎで無念の棄権となりました。
エリウド・キプチョゲ選手
「これまでは一度も棄権したことはなかったが、それをせざるを得ない状態だった。お腹の痛みとストレスでレースを続けることができず、自分がいつ棄権したかもあまり覚えていない。もちろんこれからも走り続ける。次のオリンピックももちろん出るつもりだ」。
==レース経過==
日本時間15:00
【スタート】
パリオリンピックの男子マラソンが日本時間の午後3時にパリで始まりました。日本からは大迫傑選手の小山直城選手と赤崎暁選手の3人が出場しています。
【5キロ地点】
男子マラソンは5キロ地点。
ウガンダと中国の選手が引っ張る先頭集団は15分40秒で通過しました。日本の小山選手がすぐ後ろをついていて、大迫選手と赤崎選手が少し離れたところを走っています。
【10キロ地点】
男子マラソンは10キロ地点。
中国の選手が大きな第1集団の先頭で、30分59秒で通過しました。日本勢は小山選手が先頭のすぐ後ろについて13番目、少し後ろを追いかける赤崎選手が52番目、大迫選手が60番目です。
【15キロ地点】
男子マラソンは15キロ地点。
10キロすぎから集団から1人で抜け出したイタリアのエヨブ・ファニエル選手がトップの45分38秒で通過しました。
トップを追う集団は20秒ほど遅れて通過し、日本の赤崎選手が全体の9番目で通過しました。そのすぐ後ろを走る小山選手は24番目、大迫選手は26番目と順位を上げています。
【20キロ地点】
男子マラソンは20キロ地点。
15キロをすぎてからは上り坂が続くエリアに入りました。イタリアのエヨブ・ファニエル選手がトップの1時間1分32秒で通過しました。
トップを追う第2集団は10秒ほど遅れて通過し、日本の赤崎選手が6番目、大迫選手が8番目につけています。小山選手は30秒ほど遅れて全体の27番目です。3連覇を目指すケニアのエリウド・キプチョゲ選手は48番目と遅れています。
【25キロ地点】
男子マラソンは25キロ地点。
日本の赤崎選手が1時間16分8秒でトップで通過しました。
トップ集団には大迫選手が入っていて、赤崎選手から2秒遅れて全体の10番目で通過しました。小山直城選手はトップから1分ほど遅れて全体の34番目を走っています。3連覇を目指すケニアのエリウド・キプチョゲ選手はトップから2分ほど遅れて通過しました。
【30キロ地点】
男子マラソンは30キロ地点。
28キロ付近からは激しいアップダウンが続いています。
トップはエチオピアのタミラト・トラ選手で1時間31分12秒で通過しました。日本勢は赤崎選手がおよそ20秒差で5番目につけています。大迫選手は全体の15番目、小山選手は30番目を走っています。
【35キロ地点】
男子マラソンは35キロ地点。
エチオピアのタミラト・トラ選手が1時間45分14秒でトップで通過しました。
トップに続く第2集団には日本勢の赤崎選手が入っていて、トップから19秒遅れて5番目につけています。大迫選手は全体の15番目、小山選手は28番目を走っています。
【40キロ地点】
男子マラソンは40キロ地点。
トップはエチオピアのタミラト・トラ選手が独走していて2位と22秒差の2時間0分2秒で通過しました。
日本勢は赤崎選手がトップから42秒差の5番目です。日本の男子マラソンでは1992年のバルセロナ大会以来となるメダル獲得を目指し、ラストスパートをかけます。
【フィニッシュ】
赤崎選手が日本選手トップの6位でフィニッシュしました。速報タイムで2時間7分32秒となっています。
《男子マラソン 見どころ》
東京大会で6位入賞した33歳の大迫傑選手は2大会連続の出場です。
さらに、マラソン歴わずか2年で急成長を遂げた28歳の小山直城選手と26歳の赤崎暁選手がともに初めてのオリンピックのレースを走ります。
前人未踏のオリンピック男子マラソン3連覇を目指すケニアの39歳、エリウド・キプチョゲ選手の走りにも注目が集まります。2022年に2時間1分9秒のタイムをマークし、39歳で臨むパリ大会でも記録更新をねらいます。
【詳しくはこちら】代表選考レース MGC(2023年10月)
◇マラソン会場 最大高低差は156m 起伏多いのが特徴
陸上、マラソンの会場には、パリ市庁舎をスタートし、パリやその近郊の数多くの名所を巡りナポレオンのひつぎが安置されていることで知られるアンバリッドでフィニッシュする42.195キロのコースが採用されました。
市庁舎の前をスタートしたあとは、セーヌ川に沿ってルーブル美術館やコンコルド広場の前を通り、23キロ地点のベルサイユ宮殿近くが折り返し地点となっています。そして後半は、再びセーヌ川沿いに戻り、パリの中心部に向かってエッフェル塔の前を通過し、アンバリッドでフィニッシュするコースです。
沿道では無料で観戦することができますが、フィニッシュ地点は、有料で観客を入れる計画です。
コースの最大の特徴は、起伏の多さで最大高低差は156メートルにも達し、特に中盤の20キロから30キロ地点にかけては過酷なアップダウンが待っています。
パリオリンピックの組織委員会によりますと、このコースは1789年に食糧難に苦しむ市民たちがパリ市庁舎からヴェルサイユ宮殿まで歩いて国王や議会に対する抗議の意志を示した「ベルサイユ行進」に着想を得たということです。
この行進が女性を中心に行われたことにちなんで、今大会では、1984年のロサンゼルス大会で女子マラソンが採用されて以来、初めて、男女の日程が入れ替わり、女子のレースが陸上競技全体の最後の種目として行われるスケジュールとなっています。