“パワハラ疑い”文書 兵庫県知事 物品受け取りルール明確化へ

兵庫県の斎藤知事は、自身にパワハラの疑いがあるなどと告発する、元局長が作成した文書をめぐり、視察先で地元の特産品などを受け取ることについて疑念を抱かれることがないよう、ルールを明確化する考えを明らかにしました。

物品受け取りルール明確化へ

兵庫県の斎藤知事にパワハラの疑いがあるなどと告発する、元・西播磨県民局長が作成して報道機関や県議会の関係者などに送った文書をめぐり、7月19日に開かれた県議会の「百条委員会」では知事が兵庫県上郡町の町長などとの意見交換で、特産のワインについて「まだ飲んだことがない。折を見てお願いします」などと話している音声データが審議の資料として採用されました。

これについて、斎藤知事は24日会見で、町長に向けたものではなく同席していた県議会議員とのやりとりの中で発したものだと述べました。

そのうえで、県内の特産品の魅力について自身が知っておくことが今後、PR施策や産業政策を検討する上で大事だという認識を示しました。

一方で、視察先で地元の特産品などを受け取ることについて「さまざま指摘が出されている」として、今後、疑念を抱かれることがないよう、ルールを明確化する考えを明らかにしました。

斎藤知事は「物品は貸与として受け取るのか寄付として受け取るのか、どのように管理するのかなど一つ一つ明確にしていくことが大事だ」と述べました。

「公益通報」調査前に懲戒処分とした対応について

また元局長は、文書の内容について県に「公益通報」をしていましたが、その調査結果がまとまる前に、内部調査で懲戒処分とした対応は適切だったのかという質問が出されました。

これに対し、斎藤知事は「公益通報の前に文書が配付されたことも踏まえて対応した。文書の内容に核心的なところを含めて事実と異なる部分が多々、含まれるので、虚偽のひぼう中傷性のある文書と捉えて調査し、人事課の判断として手続きを進めて懲戒処分した」と述べ、対応は適切だったという考えを示しました。

また、斎藤知事は、不正などに関する公益通報をしやすい環境を整えようと新たに外部の弁護士が受け付ける窓口を設置することを明らかにしました。

弁護士会からの紹介を受けて年内をめどに設置したい考えで、外部窓口の設置によって通報者の匿名性を高めたいとしています。

優勝パレードの担当課長が死亡 知事 “お悔やみ申し上げる”

兵庫県の元局長が作成した告発文書の中で、業務で体調を崩し休暇中だと記されていた元課長が、その後、死亡していたことがわかりました。

兵庫県の斎藤知事にパワハラの疑いがあるなどと告発する、元・西播磨県民局長が作成した文書では、去年11月のプロ野球の阪神とオリックスのリーグ優勝の記念パレードを担当していた課長が、大阪府との難しい調整などで体調を崩し、病気で休暇中だと記されていました。

斎藤知事は、24日の会見で、担当課長が亡くなったと認め、「パレードへのご対応でご尽力をいただき、お亡くなりになられたことへお悔やみ申し上げたい」と述べました。関係者によりますと、亡くなったのはことし4月で、斎藤知事はこれまで公表しなかったことについて「ご家族の意向だ」と述べました。

“コミュニケーション不足 真摯(しんし)に反省”

斎藤知事はパワハラの疑いが指摘されているこれまでの自身の言動について、「私も知事になる前、20年ほど中央省庁で仕事し、一般的な担当部局での仕事のみならず、総務大臣政務官の秘書官もさせていただいた。中身そしてロジ、動線を含めたところを徹底的に鍛えられた。そこのベースがある中で、地方自治体で勤務する中でも、組織の中の生産性を高めていくということも一つ思いがある。業務をよりよく遂行するためにこういう風にしてほしいということを厳しく指摘させていただくこともあった」と述べました。

その上で「私が求めている業務の水準にはいずれたどりついてほしいという思いがあるが、私は20年ぶりに突然来た知事なので、私の思いを丁寧に伝えていくという、そこが恐らくコミュニケーション不足だったと思う。そこは真摯(しんし)に反省して、職員の皆さんとともに仕事を進めていきたい」と述べました。

問題の経緯

問題の発端は、ことし3月。

兵庫県の当時の西播磨県民局長が斎藤知事にパワハラの疑いがあるなどとする文書を作成し、報道機関や県議会の関係者などに送りました。

県は、局長を解任し、予定していた退職をいったん保留して班長級とする人事を発表しました。

斎藤知事は記者会見で「事実無根の内容が多々含まれている」とか、「うそ八百含めて文書をつくって流す行為は公務員としては失格」などと述べました。

これ対し元局長は「何の根拠もなく事実無根と公言した」などとする文書を発表しました。

その後、県は「文書の核心的な部分が事実ではない」などとして、元局長を停職3か月の懲戒処分にしましたが、県議会は、「県民などから、独立した第三者による調査の必要性を指摘する意見が寄せられている」として、第三者機関を設置し、再調査を行うよう県に要請しました。

これを踏まえ、斎藤知事は、第三者機関を設置する考えを示しました。

こうした中、6月の定例議会では、“文書問題”をめぐって、複数の会派から質問が相次ぎ、斎藤知事が「うそ八百」などのみずからの発言について「表現が行き過ぎた」と陳謝する一幕もありました。

定例議会の最終日、県議会は、強い調査権を持つ「百条委員会」の設置を決め、今月19日の委員会では、元局長を証人として呼び、文書で指摘した内容について質疑を行う予定でした。

また、第三者機関の立ち上げに向けた準備会の初会合も開かれ、来月をめどに複数の弁護士からなる第三者機関を立ち上げ、おおむね6か月で調査するよう求めることが確認されました。

こうした中、今月7日、元局長が姫路市内で死亡しているのが見つかり、警察は状況から自殺した可能性があるとみて調べています。