埼玉 川口 マンション爆発 住民「ガス栓開け換気後 タバコ」

18日夜、埼玉県川口市のマンションの1室で起きた爆発でこの部屋の40代の住民が「自殺しようとしてガス栓を開けたが断念し、換気したあとタバコを吸おうとしたら爆発した」という趣旨の説明をしていることが捜査関係者への取材でわかりました。

この爆発でこれまでに8人がけがをしていて、警察は当時の状況を詳しく調べています。

18日午後8時半ごろ、川口市並木にある15階建てのマンションの3階の1室で爆発が起き、室内の壁や天井などが壊れたほかベランダやマンションの階段部分なども大きく崩れました。

これまでに爆発が起きた部屋に住む40代の男性とマンションの別の住民など8人がけがをしましたが、警察によりますと全員意識はあり命に別状はないということです。

当時の状況について爆発が起きた部屋の住民は「自殺しようとしてガス栓を開けたが断念した。換気したあとタバコを吸おうと火をつけたら爆発した」という趣旨の説明をしていることが捜査関係者への取材でわかりました。

この住民は病院に搬送された際に警察官に暴行したとして公務執行妨害の疑いでその場で逮捕され、警察は爆発が起きた当時の状況をさらに詳しく調べています。

爆発の瞬間 せん光や火花 大きな爆発音も

この爆発の瞬間を捉えたみられる映像が旧ツイッターのXに投稿されています。

映像にはマンションの部屋からせん光や火花が吹き出し大きな爆発音も記録されています。

爆発は一瞬ですぐに周辺は暗くなり、白っぽい煙が漂う様子も写っています。

防犯カメラに突然光ったあと大量の煙のようなものが広がる映像

現場近くに設置された防犯カメラには爆発の瞬間を捉えたとみられる映像が記録されていました。

爆発が起きたマンションの前を通る陸橋をはさんで南に50メートルほど離れた住宅兼事業所に設置された防犯カメラには、18日夜8時半前に、陸橋の右側の部分が突然、光ったあと大量の煙のようなものが広がる映像が残されていました。

その後、十数秒にわたって砂ぼこりや破片のようなものが大量に飛び散る様子も記録されていました。

映像には近くの人たちが集まって来たり消防車や救急車が次々に到着したりする様子も残されていました。

爆発が起きたマンションの住民「今後を考えるととても不安」

爆発が起きた埼玉県川口市のマンションの住民からは今後の生活への不安の声が聞かれました。

爆発が起きた部屋とは別の階に住んでいる40代の女性は「昨夜、警察や管理会社から避難するよう言われたため公民館に避難しましたが、なかなか情報が入らず不安な夜を過ごしました。朝になってようやくマンションに戻れましたが、爆発による影響からか部屋の給湯器が使えません。真夏なのにシャワーをあびることができず困っています。今回の件でマンションの資産価値に影響が出るかもしれないし、今後のことを考えるとどうしたらいいのか分からずとても不安です」と話していました。

現場周辺 約60メートル離れた場所でも被害

爆発で飛び散った大量のガラスなどが散乱した現場近くの道路では川口市の職員が散水車を使用して細かいガラス片を洗い流す作業などに当たっていました。

現場の目の前を通る陸橋では側面に設置されたパネルの多くに穴が開く被害などが確認され、市の職員が応急的な補修作業を行っていました。

さらに現場から南東に60メートルほど離れたタクシー会社でも3階建ての建物の1階と3階の窓ガラスが割れたり、窓枠が外れたりする被害が出ました。

室内では棚に置いてあった車両の部品や工具などが床に散乱していて、爆発に伴う揺れで落ちたとみられるということです。

タクシー会社で整備士を務める50代の男性は「けさ出勤するとガラスなどが散乱していたので人が通る部分を中心に急いで補修しました。本当に驚いています」と話していました。

マンション住民 一時 148人が避難

今回の爆発では、現場のマンションに住む148人が一時、避難を余儀なくされました。

警察は爆発が起きたあと安全が確認されるまでマンションの住民に対し避難するよう要請し、マンションに住む74世帯148人が避難しました。

これを受けて埼玉県川口市は、18日夜遅く現場近くの公民館を避難所として開設し、避難した89人が一夜を明かしました。

避難の要請は爆発から8時間余りたった19日午前5時に解除され、公民館に避難した全員がマンションに戻ったということです。

市によりますと体調不良を訴えた人などはいませんでした。

マンション管理会社 被害状況の確認進める

爆発が起きたマンションを管理している会社は、被害の詳しい状況について警察や消防とともに確認を進めています。

このマンションは、販売した会社によりますと、15年前に分譲マンションとして完成しました。

管理会社では、被害の詳しい状況について警察や消防とともに確認を進めていて、調査の結果をもとに住民への対応を検討していくことにしています。

マンションの11階に住む50代の男性によりますと、ベランダ側の窓ガラスがすべて割れて室内に散乱しているということです。

男性は「被害が大きかったので、きょうは片づけのために仕事を休みました。爆発が起きたので資産価値が下がることも考えられますが、まだローンが残っているのでなんとかこの場所で生活を続けられるようにしたいです」と話していました。

車が破損した男性「仕事で使っているので困る」

爆発が起きたマンションの近くのコインパーキングに車をとめていたという中国人の男性は、飛び散ったコンクリート片などで車のドアなどが破損したということです。

男性は「仕事で使っている車なので使えないと本当に困ります。警察に来てもらって被害届を出そうと思いますが、通常の交通事故と異なるのでどのように修理を依頼すればいいか分からず不安です」と話していました。

専門家「換気しても部屋の中に一定以上ガスが存在したか」

今回の爆発について、安全工学が専門の横浜国立大学の三宅淳巳上席特別教授は「都市ガスのメタンガスが室内に充満して空気と混ざることで、可燃性のガスが形成され、そこに、たばこの火のような着火源が存在したことで爆発に至ったとみられる。ガラス窓は圧力にはそこまで強くないので、そこから爆風が出て行ったとみられる」と指摘しました。

また、今回60メートルほど離れたところでも被害が確認されていることについて、「密集した住宅街や構造物どうしが近い場所では、爆風が減衰せず、被害が大きくなることもある。今回は一定の強さの爆発だった」と話しています。

そのうえで、住民が「換気したあとタバコを吸おうとしたら爆発した」という趣旨の説明をしていることについて、「ガスがいったん充満した状態であれば、換気したとしても、短時間でガスが残っていれば爆発は起こりうる。今回は、少なくともガスが部屋の中に一定以上、存在していたとみられる」と指摘しました。

専門家「壊れ方を見ると相当な量のガスが漏れたと思う」

火災や爆発のメカニズムに詳しい東京理科大学の土橋律教授は「壊れ方を見ると相当な量のガスが漏れたと思う。部屋の内側の圧力が上がると外との圧力差ができて、部屋のまわりの部分が変形していき、一番弱いところから壊れる。壊れる時の圧力が高い方がより強い爆風が生じ、周囲の建物のガラスや扉に被害が出ることがある」と指摘しました。

そのうえで、マンションの被害については、「瞬間的には燃えるので、温度は上がるが熱の影響は建物の表面部分にとどまるのではないか」と述べたうえで爆発した際にかかる圧力について、「天井は床に比べて、強い力がかかることは想定されておらず、変形することもある。建築の専門家などが影響を確認することになると思う」と話しています。