トランプ前大統領の刑事責任 米連邦最高裁 “審理を差し戻し”

アメリカで3年前に起きた議会乱入事件をめぐり、起訴されたトランプ前大統領の刑事責任について、連邦最高裁判所は「大統領在任中の公務としての行動は免責される」とした上で、起訴の対象となった行動が公務にあたるかどうかを下級審で判断すべきだとして審理を差し戻しました。

これによって議会乱入事件をめぐる裁判の初公判は11月の大統領選挙の前には開かれない可能性が高くなりました。

アメリカで3年前に起きた連邦議会への乱入事件を巡り、トランプ前大統領はその前の年に行われた大統領選挙の結果を覆そうとしたなどとして起訴されています。

この起訴について、トランプ氏は「在任中の大統領としての行動は刑事責任に問われない」と主張し、1審と2審はそれぞれトランプ氏側の訴えを退けて連邦最高裁判所で審理が行われていました。

連邦最高裁は1日、「公務としての行動は免責されるが、公務でないものには免責は適用されない」としたうえで、起訴の対象となったトランプ氏の行動が公務にあたるかどうかを下級審で判断すべきだとして審理を差し戻しました。

9人の判事のうち、保守派とされる判事6人全員が判断を支持し、リベラル派とされる判事3人が反対しました。

今後、免責特権をめぐる審理はあらためて連邦地方裁判所で行われる見通しです。

これによって議会乱入事件をめぐる裁判の初公判はさらに遅れる見通しとなり、11月の大統領選挙の前には開かれない可能性が高くなりました。

トランプ氏 SNSに「大きな勝利だ」と投稿

連邦最高裁判所の判断が示されたことを受け、トランプ前大統領は1日、SNSに「われわれの憲法と民主主義にとって大きな勝利だ。アメリカ国民であることを誇りに思う」と投稿しました。また「連邦最高裁判所の歴史的な判断を受け、ジョー・バイデン氏による私に対する魔女狩りはすべて終わるべきだ」と主張しました。

バイデン大統領の陣営「事実を変えるものではない」

バイデン大統領の陣営は連邦最高裁判所の判断について「今回の判断は事実を変えるものではなく、トランプは2020年の選挙に敗れたあと激怒し、自由で公正な選挙結果を覆そうと暴徒をあおった」という声明を発表しました。

裁判所前には支持者や反対する人たちが集まる

首都ワシントンにある連邦最高裁判所の前には、メディア関係者のほか、トランプ前大統領の支持者やトランプ氏に反対する人たちが集まりました。

連邦最高裁の判断が出ると、スマートフォンなどでその内容について情報を集めていました。

このうちトランプ氏を支持しているという男性は「大統領は厳しい決断が求められるため免責特権が必要だ。それがなければどの大統領も退任後に追及される可能性がある」と述べてトランプ氏に免責特権が適用されるべきだと訴えました。

一方、トランプ氏に反対する立場だという男性は「トランプ氏がクーデターを企てた人物であると確信できずに11月にアメリカ国民が投票に行くことになるなんて言語道断だ」と述べて、議会乱入事件をめぐる裁判の初公判がさらに遅れる見通しとなったことに反発しました。