アメリカのバイデン大統領は、G7サミット=主要7か国首脳会議が開かれているイタリアでウクライナのゼレンスキー大統領とともに今後10年に渡りウクライナの安全を確保するための2国間の協定に署名し、長期的に支援していく姿勢を強調しました。
アメリカのバイデン大統領は、13日、G7サミットが開かれているイタリアのプーリア州で、ウクライナのゼレンスキー大統領と共同会見しました。
このなかでバイデン大統領は、G7が制裁で凍結したロシアの資産を活用し、およそ500億ドル、日本円にしておよそ7兆8000億円をウクライナへの支援にあてることで合意したことについて「重要な成果だ」と述べ、歓迎しました。
また、中国が軍事転用可能な物資をロシアに輸出し、ロシアの軍需産業を支援しているという懸念についても意見を交わし、G7が一致した対応を取ることで合意したと明らかにしました。
会見にあわせてバイデン大統領は、ゼレンスキー大統領と2国間の安全保障協定に署名しました。
協定の有効期間は10年間で、アメリカはウクライナ軍の強化や兵器生産能力の拡大への支援、それに情報機関の協力などを通じウクライナの防衛力を向上させ、安全を確保していくとしています。
バイデン大統領は「われわれはウクライナがこの戦争を乗り越えるまで共にいる」と述べ、長期的に支援していく姿勢を強調しました。
これに対して、ゼレンスキー大統領は「きょうは本当に歴史的な日だ」などと述べ、アメリカの支援に謝意を示しました。
G7サミット【1日目】米ウクライナ2国間協定に署名 共同会見
G7サミット=主要7か国首脳会議は、イタリアで日本時間の13日夕方から始まりました。
初日はウクライナ情勢などについて意見を交わし、制裁で凍結したロシア中央銀行の資産を活用したウクライナ支援で合意を目指すことにしています。
バイデン大統領 ゼレンスキー大統領 2国間協定に署名 共同会見
ロシア 凍結したロシア資産でのウクライナ支援に「犯罪的」
ロシア外務省のザハロワ報道官はG7が制裁で凍結したロシアの資産を活用してウクライナを支援することについて「ロシアから盗んだ資金をウクライナ政府の軍事的冒険に向けることは犯罪的だ」と批判した上で「報復措置が必ず取られることになる」と警告しました。
岸田首相 ゼレンスキー大統領 2国間会談で新たな協力文書
岸田総理大臣はウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、新たな2国間の協力文書を交わしました。
憲法の制約を踏まえ、殺傷性のない防衛装備の提供を行うほか、地雷の除去などの復旧・復興支援を続けていくことなどが盛り込まれています。
両首脳は日本時間の13日夜遅くから14日未明にかけて会談するとともに、新たな2国間の協力文書を交わしました。
去年5月以来、およそ1年ぶりとなった会談の冒頭、岸田総理大臣は「日本が今後もウクライナとともにあることを示す2国間文書に署名できたことは大変うれしい。G7や同志国と連携し、強力に支援していく」と述べました。
これに対し、ゼレンスキー大統領は「世界への非常に力強いシグナルになる。復興への貢献も非常に力強く思っている」と謝意を示しました。
協力文書では、安全保障分野で、憲法の制約を踏まえ、殺傷性のない防衛装備や物資の提供、負傷したウクライナの兵士の治療といった支援を進めるとしています。
また復旧・復興支援では地雷の除去やがれきの処理、女性や子どもを含む人道状況の改善などを後押ししていくことなどが盛り込まれています。
そして、今の軍事侵攻が終結したあと、ロシアが再びウクライナに武力攻撃を行った場合は、日本とウクライナが24時間以内に協議を行うことも確認しました。
ゼレンスキー大統領 日本との協力文書 “日本の献身に感謝”
ウクライナのゼレンスキー大統領は、日本と交わした2国間の協力文書について、「世界で経済的にも技術的にも最も進んだ国の1つである日本との唯一無二の文書だ」とSNSに投稿し、歓迎しました。
そのうえで日本からの支援には憲法の制約があることを念頭に、「日本にとってこうした合意や支援は、画期的なことだ。私たちはこのことを理解し、日本が私たちの国と国民に揺るぎない連帯を示し、命と国際法を守るために献身してくれたことに感謝する」としています。
岸田首相 ロシアへの厳しい制裁 ウクライナ支援継続の考え示す
岸田総理大臣は日本時間の13日夜、G7サミットのウクライナ情勢をテーマにした討議に臨み、ロシアに対する厳しい制裁と、強力なウクライナ支援を継続していく考えを示しました。
ウクライナ情勢をテーマにした討議は、日本時間の13日夜10時すぎから、ゼレンスキー大統領も参加して行われました。
この中で岸田総理大臣は、ロシアに対する厳しい制裁と、強力なウクライナ支援を継続していく考えを示しました。
そして、中国がロシアに軍事転用可能な物資を提供しているという懸念が出ていることを受けて、中国国内の企業も含め、提供に関与した疑いのある団体に対し、新たな制裁を科す方針を表明しました。
また、ウクライナ支援の一環として、地雷の除去を支援する国際会議を来年日本で開催することも明らかにしました。
岸田総理大臣は、これに先だって開かれた中東情勢に関する討議では、アメリカが公表したガザ地区での6週間の停戦と人質解放を含む新たな提案を支持し、日本も外交努力を続けていく方針を示しました。
このほか、アフリカなどをテーマにした討議にも出席し、欧州各国で課題となっている移民の増加の背景には、アフリカの貧困や気候変動問題があるとの指摘も念頭に、日本も30年以上続けてきたTICAD=アフリカ開発会議などを通じ、開発支援に貢献していく意向を伝えました。
ウクライナ支援 凍結のロシア中央銀行資産を活用で合意
アメリカ政府の高官は、G7各国の首脳が制裁で凍結したロシア中央銀行の資産から得られる収益を活用しておよそ500億ドル、日本円にしておよそ7兆8000億円の支援をウクライナに行うことで合意したと明らかにしました。
ウクライナへの支援は今年中に始まり、軍事や、人道支援、復興などの分野にあてられるということです。
また、G7各国の首脳はロシアがウクライナに賠償するまで資産の凍結を続けるとしています。
ゼレンスキー大統領がG7会場に到着
ウクライナのゼレンスキー大統領が、日本時間の13日午後9時50分ごろ、イタリア南部のプーリア州で開かれているG7サミットの会場に到着しました。
ゼレンスキー大統領は議長国イタリアのメローニ首相に出迎えられました。
このあとウクライナ情勢についてのセッションに出席します。
ゼレンスキー大統領がG7サミットに対面で参加するのはロシアによる軍事侵攻以降、去年の広島サミットに続いて2回目になります。
ウクライナ支援に年内約500億ドル融資へ
イタリアで開幕したG7サミットの首脳宣言の案が明らかになりました。
ウクライナ支援のため、G7として年末までにおよそ500億ドルの追加の融資を行うとした上で、その返済に、凍結したロシア資産の運用益を充てる方向性などが明記されています。
イタリア南部プーリア州で開幕したG7サミットは、14日までの実質的な討議の成果を首脳宣言としてとりまとめる予定で、その案の全容が明らかになりました。
《ウクライナ》
この中では、長期化するロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、ウクライナに対するゆるぎない支援を続けていく方針を再確認し、G7として年末までにおよそ500億ドルの追加の融資を行うとしています。
そして融資の返済に、制裁で凍結したロシア中央銀行の資産から得られる運用益を充てる方向性が明記されています。
さらに、中国がロシアに軍事転用可能な物資を提供しているとの懸念が出ていることも踏まえ、中国を含め、ロシアを実質的に支援する第三国の団体に、必要な措置を講じるとしているほか、ロシア産石油を代替輸送するなど、いわゆる「制裁逃れ」への関与が疑われる人物に対し、追加制裁を科す方針も盛り込まれました。
《中東》
中東情勢をめぐっては、アメリカのバイデン大統領が公表した、ガザ地区での6週間の停戦と人質解放を含む3段階からなる、新たな提案を全面的に支持する姿勢を示しています。
一方、イスラエル政府に対し、南部ラファでの軍事作戦を控えるよう求めているほか、イスラエルと自立可能なパレスチナ国家が共存する「2国家解決」への揺るぎない支持を表明しています。
《インド太平洋》
そしてインド太平洋情勢について中国による南シナ海や東シナ海での海洋進出に対する深刻な憂慮を示すとともに、武力や威圧による一方的な現状変更の試みへの強い反対を示しています。
さらに中国には、ロシアがウクライナへの侵攻を停止し、撤退するよう圧力をかけることや、ロシアへの軍民両用物資の移転を停止することを求めています。
一方、台湾海峡の平和と安定の維持が国際社会の安全と繁栄に不可欠なことを再確認するとしています。
また北朝鮮について、ロシアとの軍事協力を可能な限り、強いことばで非難すると明記するとともに、核・ミサイル計画を放棄し、拉致問題をただちに解決することも要求しています。
さらに経済安全保障に関連し、中国による過剰生産も念頭に、市場のルールに基づかない経済慣行が経済の強じん性や安全保障を弱体化させかねないとして懸念を示しています。
このほか中国による重要鉱物の輸出管理について、世界的なサプライチェーンの重大な混乱につながりかねないと指摘し、控えるよう求めるなどとしています。
G7サミット 開幕
G7サミットは、イタリア南部プーリア州で、現地時間の13日午前11時半ごろ日本時間の13日午後6時半ごろから始まりました。
最初のセッションはアフリカや気候変動などを議論し、そのあとは中東やウクライナ情勢について意見を交わす予定で、ウクライナをめぐる議論には、ゼレンスキー大統領も一部参加します。
G7は、今回のサミットでウクライナへの新たな支援策として、制裁で凍結したロシア中央銀行の資産の活用で合意を目指しています。
資産の活用を巡っては、アメリカが利子から得られる将来の収益も含め最大500億ドル、日本円にして7兆8000億円以上を支援にあてたいとしていますが、12日、フランス大統領府は、ことし末までにウクライナに500億ドルを支援することでG7の方針が固まったと明らかにしました。
また、今回のサミットでは、中国が軍事転用可能な物資をロシアに輸出し、ロシアの軍需産業を支援しているという懸念についても協議する見通しです。
ロシアの侵攻が長期化し、欧米側で支援疲れも指摘される中、G7として、引き続きウクライナを一致して支援する姿勢を打ち出せるかが焦点となっています。
岸田首相 ゼレンスキー大統領と個別会談を予定
岸田総理大臣は、日本時間の午後5時半ごろ、議長国イタリアのメローニ首相の出迎えを受けてG7プーリア・サミットの会場に入り、先ほどから、アフリカ開発や気候変動などをテーマにした討議に出席しています。
そして、このあと日本時間の午後9時過ぎから、ゼレンスキー大統領も出席するウクライナ情勢の討議に臨みます。
岸田総理大臣は、ウクライナの永続的な平和を早期に実現することが重要だと強調するとともに、ウクライナへの強力な支援と、ロシアに対する厳しい制裁を継続していく日本の立場を改めて伝えることにしています。
そして具体的な取り組みの1つとして、中国がロシアに軍事転用可能な物資を提供しているという懸念が出ていることを受けて、中国国内の企業も含め、提供に関与した疑いのある団体に対し、新たな制裁を科す方針を説明するものとみられます。
また焦点となっている制裁で凍結したロシアの資産の扱いについても、日本の考え方を伝えることにしています。
岸田総理大臣は、今夜遅くには、ゼレンスキー大統領と個別に会談する予定で、殺傷性のない装備の提供など憲法の範囲内での防衛協力に加え、地雷除去やエネルギーの基盤整備といった復旧・復興支援を続けていくことなどを盛り込んだ2国間の協力文書を締結することにしています。
<G7サミット 議論の焦点は>
ロシアの凍結資産の活用
2022年2月にロシアがウクライナを軍事侵攻したことを受け、欧米や日本などはそれぞれの国内にあるロシアの個人や企業の資産を凍結する経済制裁を科してきました。
このうち個人についてはプーチン政権に近い「オリガルヒ」と呼ばれる富豪などが抱える預金や別荘、それに豪華船などが対象となり、資産凍結などの総額は、2023年3月の時点でおよそ580億ドル、日本円にして9兆1000億円以上に上っています。
今回、焦点となっているのは欧米や日本がそれぞれの国内で凍結したロシア中央銀行が保有する2850億ドル、日本円にして44兆円規模の資産です。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアによってウクライナは破壊された。ロシアが代償を払わなければならない」などとして凍結した資産をウクライナ支援にあてるよう、くりかえし欧米側に求めてきました。
G7は凍結資産の扱いについて協議を続け、先月開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議では資産そのものではなく、利子から得られる収益を活用することについて集中的な議論が行われました。
アメリカの提案や思惑
アメリカ議会によりますとロシアの凍結資産およそ2850億ドルのうち、アメリカの管轄下には40億ドルから50億ドルがあるとみられています。
軍事侵攻が長引き「支援疲れ」も指摘される中、アメリカではことし4月、ロシアの資産を没収してウクライナ支援に活用することを可能にする法律が成立しました。
法律では「ロシアの資産の没収や転用を行うアメリカ政府の取り組みは同盟国や友好国とともに行われるべきだ」としてG7やEUなどと連携して行うべきだとしています。
ブリンケン国務長官は先月ウクライナを訪問した際に「プーチン大統領が破壊したものについては、ロシアが費用を負担しなければならない」と述べ、凍結資産を支援にあてる必要性を強調しました。
一方でヨーロッパの一部の国からは、資産そのものを没収することへの懸念の声があがっています。
このためアメリカは新たな案として、制裁で凍結したロシア中央銀行の資産の利子から得られる将来の収益も活用してウクライナの支援にあてることをG7各国に提案しました。
アメリカはこの案により世界全体で最大500億ドル、日本円にして7兆8000億円以上を調達してウクライナの支援に充てたいとしています。
資産そのものを支援にあてることに比べ、額は小さくなりますが、ウクライナに対してできるだけ早く支援することを優先させ、ヨーロッパに歩み寄った形です。
凍結資産 大半はEUに
EUによりますと、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後に欧米や日本などで凍結されたロシアの中央銀行の資産は、2600億ユーロ、日本円にして44兆円規模に上ります。
このうち3分の2以上の2100億ユーロ、日本円にして35兆円規模がEUにあり、ベルギーにある決済機関「ユーロクリア」などで管理されています。
EUは凍結された資産の利子から1年ごとに得られる収益は多くて30億ユーロ、日本円にして5000億円あまりに上ると見込んでいて、先月、収益の90%をウクライナへの軍事支援にあてることなどで合意しています。
G7の議長国でもあるイタリア政府関係者は、EUが資産の凍結を続けるには半年ごとにすべての加盟国の合意が必要なことから長期にわたって収益を活用する支援策を実現するためには、解決すべき点も少なくないと指摘しています。
イタリアが差し押さえた資産
欧米が凍結したロシアの資産の中には今回のG7サミットの議題になっている中央銀行の資産のほかにも、プーチン政権に近い「オリガルヒ」と呼ばれる富豪などが抱えている不動産や高級ヨットなどの資産も含まれます。
このうちイタリアでは財務警察がおととし3月、北東部のトリエステでロシアの富豪に関係があるとみられる世界最大級の高級ヨットを差し押さえたと発表しました。
また、おととし4月には別のロシアの富豪が所有する西部のサルデーニャ島にある豪邸を差し押さえました。
資産価値は1億ユーロ以上、日本円で169億円以上にのぼるとしています。
ロシアの凍結資産 専門家の見解は
フランスの経営大学院の教授で3年前までドイツ財務省で金融政策などを担当していたアーミン・シュタインバッハ氏は制裁で凍結しているロシアの中央銀行の資産そのものを没収してウクライナへの支援に使うことは、法的に認められない可能性が高いと指摘します。
一方、資産の利子から得られる収益は、資産を管理する決済機関のものとみなされるため法的なリスクが低く、活用が可能だとの見解を示しています。
そして一連の議論の背景について「アメリカとEUが置かれた厳しい状況を示していると言える。アメリカやEUは国内でウクライナ支援への支持が十分にないなか、ウクライナが死活的に必要としている資金を探している」と話し、アメリカやEUがウクライナ支援に政府の財源以外の利用を迫られていることのあらわれだと指摘します。
また、アメリカが凍結した資産から将来得られる収益も含め最大で500億ドル、日本円で7兆8000億円を融資したい考えを示していることについて「ウクライナにかなりの金額を生み出せるため、よい解決策かもしれないが、戦争がいつ終わるかわからないというリスクが伴う。近く戦争が終わって、収益が無くなったときに、EUやアメリカは自分たちで融資を保証する必要がある」として、戦争が終わった場合には凍結した資産の解除を迫られ、G7は財政負担を強いられるおそれがあるという見方を示しています。
中国メーカーの過剰生産
今回のサミットでは、懸念が強まっている中国メーカーによる電気自動車などの過剰生産問題について、G7で結束し、中国をけん制する姿勢をどう打ち出すかも焦点です。
中国の過剰生産をめぐっては、アメリカが先月、中国製の電気自動車への関税をことし中に現在の4倍の100%に引き上げるほか、太陽光発電の設備は25%から50%に、半導体は来年までに25%から50%にそれぞれ引き上げると発表しています。
また、EU=ヨーロッパ連合も、中国から輸入されるEV=電気自動車について、暫定的に最大で38.1%の関税を上乗せする方針を発表しています。
先月下旬に行われたG7財務相・中央銀行総裁会議では、共同声明のなかに過剰生産問題について「G7各国の労働者や産業、経済的な強じん性を損なう中国の非市場的な政策や慣行について懸念を表明する」といった内容が盛り込まれました。
今回のサミットでは、G7で結束し、中国をけん制する姿勢をどう打ち出すかが焦点で、調整が進められています。
また、ウクライナ支援に向けて、ロシアの凍結資産から得られる利子などの利益をどう活用するかについても議論される予定で具体策を示せるかも注目されます。
経済安全保障
G7プーリアサミットでは、「経済安全保障」をテーマにした議論も行われ、中国を念頭に、特定の国や地域の製品に過度に依存しないサプライチェーン=供給網の構築などをめぐって、一致できるかが注目されます。
太陽光パネルや半導体などの分野では、中国を念頭に、特定の国や地域の製品が不当に安い価格で輸出され、競争上、優位になっているとして、その対応策が課題となっています。
今回のサミットで、日本は、特定の国や地域に過度に依存しないサプライチェーンを構築するため、製品の調達にあたっては、環境対策や人権上の配慮など価格以外の面も重視するよう訴える方針で、G7として一致できるかが注目されます。
また、禁輸などの措置で相手国に圧力をかけるいわゆる「経済的威圧」に対抗するメッセージも打ち出せないか、調整が進められています。
一方、貿易をめぐる紛争解決の制度で機能不全が続いているWTO=世界貿易機関の改革については、「年内に完全に機能する制度の実現」を目指すことを改めて確認する見通しです。
生成AI
G7サミットでは、開発や利用が急拡大する生成AIをめぐっても議論が交わされる見通しです。
会議で採択される予定の首脳宣言には、G7各国がAIの安全性に関する認証制度の創設に取り組むことを盛り込む方向で、調整が進められていることがわかりました。
生成AIをめぐっては、文書や画像の作成などさまざまな業務の省力化につながることが期待される一方で、著作権の侵害や偽情報を拡散するリスクなどが指摘されています。
G7では、去年の広島サミットで共通のルール作りを目指す枠組みとなる、「広島AIプロセス」の立ち上げに合意したほか、開発者を対象に、AIの能力や限界を明確にすることや、AIが作成したコンテンツかどうかを利用者が見分けられる手段の開発・導入などを求める「行動規範」をとりまとめています。
こうした中で、関係者によりますと、今回のG7サミットの首脳宣言では、「行動規範」を守ってAIの開発に取り組む組織を認証する新たな制度の創設に各国が取り組むことを盛り込む方向で調整が進められていることがわかりました。
日本としては、「広島AIプロセス」を主導してきた立場から、議長国のイタリアなど各国とも連携しながら、今後、具体的な仕組みの詳細を議論していくことにしています。
温室効果ガスの削減対策
今回のサミットでは、温室効果ガスの削減対策も主要な議題となります。
脱炭素の実現とエネルギーの安定供給を両立させる観点から、石炭火力発電の削減などをめぐってどのようなメッセージを打ち出せるかが注目されます。
脱炭素に向けた課題の1つとなっている石炭火力発電の削減をめぐっては、廃止を急ぎたいヨーロッパの国々と、排出削減の対策を講じたうえで、一定の活用は必要だとする日本との間で、意見の隔たりがあります。
ことし4月に行われたG7気候・エネルギー・環境相会合では、温室効果ガスの削減対策が講じられていない石炭火力発電について、「2030年代前半か、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるための目標に沿う形で段階的に廃止する」ことで合意していて、今回も意見が交わされるものとみられます。
また、太陽光や風力などの再生可能エネルギーでは、2030年までに世界全体の発電容量を3倍に引き上げる目標を達成するための取り組みについて、議論が行われる見通しです。
原子力については、原発を活用していくとする日本やアメリカ、フランスと“脱原発”を実現するドイツとの間で政策の違いがあり、日本としては、原発を推進する国々との間で、原子力の活用や技術開発などで協力を確認したい考えです。
このほか、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化するなか、エネルギーのロシア依存の低減をどう進めるかについても議論される見通しです。
今回のサミットでは、脱炭素の実現とエネルギーの安定供給を両立させる観点から、これらのテーマをめぐって、どのようなメッセージを打ち出せるかが注目されます。