流通大手のイオンは、3日から順次、傘下の総合スーパーなど全国のおよそ500店舗で、今月末までセールを実施し、テレビや掃除機などの家電のほか、ベッドと枕などのセットを数量限定で通常の価格より2割から4割ほど下げて販売しています。
「ありがたい」「全然足りない」定額減税 4万円…その効果は?
今月から実施される「定額減税」。デパートなどではセールも始まっていますが、街の人たちやSNSの投稿からは…
「無いよりはいいけど、物価高ですぐなくなりそう」
「少しの減税では足りない」
どんな効果があるのか?専門家にも聞きました。
”4万円”セール
定額減税で、1人あたり4万円が減税されることにちなんで、価格はいずれも4万円に設定しているということです。
今後はランドセルやベビーカーなどのほか、野菜などの生鮮食品も通常より安い価格で販売し、来店客数の増加につなげたいとしています。
店を訪れた30代の男性は「減税はありがたいです。子どもがいるのでおもちゃを買ってあげたい」と話していました。
イオンリテール営業企画本部 伊藤竜也本部長
「なるべく安く買いたいという消費者の意識は強く、物価高で消費が冷え込んでいる事実もある。6月は定額減税のほかにボーナスもあるので、セールを通じ消費を盛り上げていきたい」
デパートでも“4”万円にちなんで
東京・台東区のデパート「松屋浅草」でも、価格帯が高めの食品などを対象にセールを行っています。
このうち、黒毛和牛のしゃぶしゃぶ用の肉や和牛を使ったレトルトカレーのセットは、1人あたりの減税額である4万円の「4」にちなんで、通常の2割引きの4000円で販売しています。
このデパートでは物価の上昇が続く中でも定額減税をきっかけに消費を喚起したいとしています。
そもそも定額減税とは?
今回の定額減税では、1人あたり年間で▽所得税が3万円、▽住民税が1万円減税されます。納税者本人だけでなく扶養している子どもや年収103万円以下の親族らも減税の対象となります。
例えば、夫婦と子ども2人の4人家族の場合、世帯全体では▽所得税が12万円▽住民税が4万円のあわせて16万円が減税されます。
一方で、減税の時期や方法は、所得税と住民税で異なるほか、会社員か個人事業主かといった働き方によっても違います。
詳しい内容は下記の記事で解説しています。
「定額減税」6月から実施 所得税と住民税が減税に 対象は?企業には事務負担も【わかりやすく解説】
1人年間4万円 どう受け止める?
今回の定額減税をどう受け止めているのか。街の人たちに聞きました。
「物価が上がっているので少しの減税では足りない。日常の生活品に使ってしまうと思うので、もらえる実感がわかない気がする」(東京・60代女性)
「ありがたいですが、何かを買うのではなく、必要になった時のために減額分は貯金にまわしたい」(東京・30代女性)
「減税するなら電気代の補助金をなくさないでほしかった。ないよりはましかなと思います」(徳島・40代男性)
「全然足りないというか。4万円もらったとてって話ですね。ちょっとは生活費の足しにしようかなって感じですが、それで旅行にいこうとは思えないです」(徳島・30代女性)
旧ツイッターのXでも複雑な受け止めが見られました。
「無いよりいいけど、物価があがってて減税分すぐに無くなりそう」
「月で約3300円。減税の実感すらわかない」
「電気代、上がるんですよね?森林(環境)税1000円、払わされるんですよね?」
減税も…電気料金や食品は値上げ
今月以降、電気料金や食品などでの値上げが予定されています。
7月に請求される電力大手10社の電気料金は、各社とも前の月と比べて値上がりします。
政府が物価高騰対策として続けてきた補助金がいったん終了することが主な要因ですが、燃料価格の上昇などで今後、さらに値上がりするのではという見方も出ています。
また、600品目余りの食品が今月から値上げされ、今後、円安の影響による値上げの影響が拡大する可能性も指摘されています。
さらに、今月から自治体による森林整備などの財源に充てる「森林環境税」の徴収が始まり、1人あたり年間1000円が住民税に上乗せされます。
【7月請求の電気・ガス料金】 大手全社が値上げ 今後の見通しは?
【6月の食品値上げ】 加工食品や菓子など614品目 原材料の高騰で
【森林環境税】1人1000円取られる税金なのに活用されない!?
専門家「消費に回るのは2~3割程度か」
今回の定額減税の効果を、どう捉えているのか。
消費者行動に詳しいニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員に聞きました。
久我尚子上席研究員
「一時的に消費を押し上げる効果はあるが、消費者は将来的に使えるお金が増えていく見通しが立たないと積極的にはならない。減税規模のうち消費に回るのは2割から3割程度ではないか」
その理由について、さらに聞くと。
久我尚子上席研究員
「今回の減税額は去年1年間の物価高で家計負担が増えた分を補うような金額だ。可処分所得を押し上げる効果はあるが、減税のしくみの分かりにくさと可処分所得が減ってきている現状の中、家計にとってプラスというよりマイナスを穴埋めするという印象を受ける人が多いと思うので、どんどんお金を使おうという心理にはなかなかなりにくい。電気代やガス代の負担軽減策が終了するので、その補填にあてるという家庭も多いだろう」
その一方で「扶養家族が多い世帯だとまとまって可処分所得が増えた実感を持ちやすいので、消費に向かいやすい。円安の状況で低迷していた海外旅行や外食の飲み代など、まだ回復しきれていない消費には向かいやすい可能性がある」としています。
そのうえで、定額減税が政府が目指すデフレマインドの払拭や消費の活性化につながるかについては。
「今回の定額減税でデフレマインドを完全に払拭するのは難しいと思う。継続的に賃上げしていく見通しが立つことや円安が改善することで、デフレマインドの状況が改善していくのではないか」