ニジマスにサケの卵繰り返し産ませることに成功 東京海洋大学

サケは一生に1度しか産卵しませんが、ニジマスにサケの細胞を移植することで、サケの卵を繰り返し産ませることに成功したと東京海洋大学の研究グループが発表しました。サケの養殖の効率化や資源の保護などに役立つと期待されています。

サケは数年間、海を回遊した後、生まれた川に戻って一生に1度の産卵を終えると死んでしまいますが、ニジマスは成熟したあとは死ぬまで毎年、産卵を続けます。

東京海洋大学の吉崎悟朗教授の研究グループはキングサーモンなどから精子や卵のもとになる「生殖幹細胞」を取り出して、ふ化したばかりのニジマスに移植しました。

実験施設の水槽で飼育を続けたところ、2年ほどでニジマスは成熟してオスはサケの精子、メスはサケの卵を持つようになり、双方を人工的に授精させるとサケになりました。

さらに、これらのニジマスはその後も毎年、サケの精子と卵をそれぞれ持つようになり、メスは卵を産み続けました。

研究グループによりますとキングサーモンは成熟するまで3年から7年ほどかかるのに対しニジマスは2年ほどで成熟することから、養殖されているニジマスにサケの卵を産ませることでサケの養殖の効率化や品種改良、それに資源の保護などに役立つことが期待されるということです。

吉崎教授は「養殖の果たす役割が今後ますます大きくなる中で、ニジマスを親にして別の魚を産み出すという新たな養殖スタイルがうまれるかもしれない」と話していました。

ヤマメにニジマスの卵 アジやサバ、コイなどでも

この技術はほかの魚にも適用することが可能です。

研究グループは2007年にヤマメにニジマスの卵を産ませたことをきっかけにアジやサバ、コイなどでもそれぞれ遺伝的に近い仲間同士だと適用できることを確認したほか、クサフグという小型のフグに高級魚で知られる大型のトラフグを産ませることにも成功しているということです。

絶滅危惧種の保全にも

研究グループは、5年程度、冷凍保存していたニジマスの「生殖幹細胞」をヤマメに移植して次の世代のニジマスをつくることにも成功していて、これらの技術を組み合わせることで、将来的には絶滅が危惧される魚の「生殖幹細胞」を保存し、別の魚に卵を産ませることで種を保全していくことにも役立つと考えています。

吉崎教授は今後、より多くの種類の魚での適用を検討しているほか、産卵のメカニズムを左右する「生殖幹細胞」についてさらに詳しく調べることにしています。