金剛山は標高1125メートル。
大阪の中心部から車で1時間ほどと比較的近いうえに、登山道も整備されていて登りやすく人気の山です。
身近な山で「道迷い」の危険 “勝手道”には踏み込まないで!
本格的な登山シーズンを迎え、大型連休に、日帰りで楽しめる身近な山に登ろうと計画している方も多いと思います。
大阪府と奈良県にまたがる金剛山も、こうした身近な山のひとつ。
しかし、山で道に迷う人も増え、遭難し消防や警察が出動するケースも出ています。
専門家は、多くの人が集まる身近な山だからこそ「道迷い」の危険がより高くなると指摘します。
(NHK山岳班 カメラマン 大阪放送局 竹和亮 / 高伽耶)
金剛山 身近で人気の山にも危険が
山を登る人たちに話を聞くと、身近な山を楽しむために来たという声が聞かれました。
親子
「近場の登りやすい山を目指して、ここに来ました」
男性
「初めて来ました。眺めもいいですね」
一方で、道に迷った経験があるという声も。
男性
「ちょっと外れたところを下りてしまったことがありました。もうちょっと奥で下りなきゃ行けないところを、手前の分岐に行ってしまって」
女性
「歩いているうちに、急に崖のほうとか、沢のほうに出たりして、怖かったことがあります」
金剛山では、消防や警察が出動する遭難が、2022年は16件ありました。
“勝手道” 登山道と見分けがつかない道も
金剛山に詳しい、大阪府山岳連盟の田中昭男さんによると、道に迷う登山者は増えてきているということです。
金剛山の登山道は、階段などが整備された歩きやすいルートや、分岐が多く狭い山道を歩くルートなど、さまざまな道があります。
中でも、登山者が特に注意をしなければならないのが、地図には載っていない道です。
田中さんたちの間で“勝手道(かってみち)”と呼んでいる道。この道が、登山者が迷う原因となっているといいます。
“勝手道”は、もともと道でないところを、一部の登山者が、近道をしたり、好奇心のために歩いたりして、できてしまったものです。
多くの人が歩けば歩くほど、踏みならされ、より間違いやすい道に変わっていくといいます。
田中さん
「ここを登山道と思って進んでいくと、山頂とは全く違う方向に出てしまう。『道迷い』が発生するということです」
どちらが“勝手道”?
こちらの画像は、過去に道に迷った人が歩いた場所です。
道が2本に分かれている分岐に見えます。
しかし、どちらか一方は地図に載っていない“勝手道”。
どちらが地図に載っている登山道でしょうか?
地図に載っているのは左側の道のみです。
見た目だけでは判断できません。
地図にない右側を行くと、かなり急な滑りやすい坂道に進み、初心者には登りにくく転倒の危険が高い場所を通ることになります。
田中さん
「一見歩きやすいため、特に初心者の方は分からずに、どんどん入っていっちゃうと思います。危険性がはらんでいるところなので、気をつけてほしい」
登山者が道に迷うと、滑落や転倒などの山岳事故につながりかねません。
大阪府山岳連盟は、地元自治体と協力して看板を立てるなど注意喚起をしています。
“勝手道”に入り込まないためには
山岳での遭難事故に詳しい、国際山岳連盟の青山千彰さんに、“勝手道”に入り込まないためのポイントを聞きました。
青山さんは、登山用の紙の地図を持っておくことが必要だと指摘しました。
青山さん
「登山道が分岐する。川にクロスする。送電線とクロスする。そういう情報が地図にあるので、それを確実につかんで前に進むことが、道に迷わない最大のポイントです」
地図の中の目印となる場所を、あらかじめ決めておいて、その場所を通過したかどうか確認しながら進むことが大切だと言います。
これは登山をする上で、地図を読む大切なポイントです。登山教室や熟練者から地図の読み方を学んでおくことも、「道迷い」を防ぐ有効な方法だと話しています。
身近な山でも油断大敵
実際に取材で金剛山を歩いてみると、“勝手道”は想像以上に多くありました。
疲れがたまってきた時に、地図の確認を忘れたり、道の分岐を見落としたりして、うっかり“勝手道”に足を踏み入れてしまう可能性があると感じました。
青山さんによると、山岳事故は、厳しい条件の山で起きることもありますが、実は、金剛山のような身近な山で起きることも多いといいます。
登山をするときには、どんな山でも、油断をせずにしっかり準備をして楽しみましょう。
(4月18日「ほっと関西」で放送)