【地震情報】愛媛県と高知県で震度6弱 津波なし

17日夜遅く豊後水道を震源とする地震があり、愛媛県と高知県で震度6弱の揺れを観測しました。気象庁は揺れの強かった地域では今後1週間ほどは最大震度6弱程度の地震に注意するよう呼びかけています。

気象庁によりますと、愛媛県と高知県で震度6弱以上の揺れを観測したのは、現在の震度階級が導入された1996年以降初めてです。

震度6弱 愛媛県愛南町と高知県宿毛市

気象庁によりますと17日午後11時14分ごろ、豊後水道の深さ39キロを震源とするマグニチュード6.6の地震が発生しました。

観測された揺れは次のとおりです。

【震度6弱】
愛媛県愛南町、高知県宿毛市
【震度5強】
愛媛県宇和島市
【震度5弱】
愛媛県八幡浜市、大洲市、西予市、内子町、鬼北町、大分県佐伯市、津久見市

このほか、震度4から1の揺れを西日本と東日本の広い範囲で観測しました。この地震による津波はありませんでした。

この地震のあと18日午後5時までに豊後水道では震度1以上の揺れを観測する地震が30回、発生しています。

前線が西から近づく影響で強い揺れを観測した愛媛県や高知県、大分県では20日以降、断続的に雨が降ると予想されています。

気象庁は揺れの強かった地域では家屋の倒壊のほか、これまでより少ない雨で土砂災害が発生する危険性が高まっているとして、今後の地震活動や雨に十分注意するとともに今後1週間ほどは最大震度6弱程度の地震に注意するよう呼びかけています。

愛媛県と高知県 震度6弱以上を観測したのは初

1996年以降に愛媛県で観測した最も強い揺れは、2014年3月に伊予灘を震源とするマグニチュード6.2の地震で、このときは震度5強でした。

また、高知県では、2022年1月に日向灘を震源とするマグニチュード6.6の地震で最大震度5弱を観測しています。

気象庁 “南海トラフ巨大地震とメカニズムが異なる”

一方、今回の地震は、南海トラフ巨大地震の想定震源域内で起きました。

想定震源域内でマグニチュード6.8以上の地震が発生するなどした場合、気象庁は巨大地震との関連性について調査を始めたことなどを示す「南海トラフ地震臨時情報」を発表しますが、今回の地震の規模は6.6で基準未満だったとしています。

また、想定される南海トラフ巨大地震とメカニズムが異なるなどとして、巨大地震が起きる可能性が急激に高まっているわけではないという見解を示しました。

専門家「悪い条件を想定した避難訓練 非常に重要」

南海トラフ巨大地震に備えて、愛媛県ではこれまでに住民たちが夜間の地震発生を想定した避難訓練を行っていて、17日夜の地震で震度5強の揺れを観測した愛媛県宇和島市の住民の中には高台への避難の準備をした人もいました。

住民の避難行動に詳しい愛媛大学防災情報研究センターの二神透副センター長は「夜間に地震が起きれば住民は真っ暗な中をそれぞれが懐中電灯を持って避難することになる。こうした状況を想定した訓練を行っておくことで、1人では避難できないお年寄りをどうやって支援するのかなど、地域の課題を抽出することもできるため、日頃から悪い条件を想定した避難訓練を積み重ねておくことが非常に重要だ」と指摘しています。

さらに「たとえ避難しなくてよかった状況だったとしても『むだだった』と思うのではなく、『何もなかったけどよかったね』と言い合える地域にしていくことが大切だ」と話していました。そのうえで「発生が懸念される南海トラフ地震が起きれば、公助がなかなか来ないことも想定される。今回の地震を教訓に、1週間分の水や食料などの備蓄や家具の固定、避難経路の確認など一人一人が事前の備えを進めてほしい」と話していました。

愛媛 愛南町 コンビニ 商品棚から落ちる

震度6弱を観測した愛媛県愛南町のコンビニエンスストア、ファミリーマート城辺店の従業員によりますと大きい横揺れが30秒ほど続いたということです。

また、化粧品などの商品が陳列棚から複数落ち、片付けを行ったということです。従業員などにけがはないということです。

高知 宿毛市で複数の被害報告

震度6弱の揺れを観測した高知県宿毛市の危機管理課によりますと、18日午前0時20分時点で、住民から市内各地で▼水道の水漏れや水が濁っているという報告のほか、▼街灯が倒れたり、電線が切れて垂れ下がったりしているという報告が寄せられているということです。宿毛市は引き続き被害の情報収集を続けているということです。

高知 宿毛市水道課 水道管破裂の情報

震度6弱を観測した高知県宿毛市の水道課によりますと、市内の西町と長田町の2か所で、水道管が破裂したという情報が入っているということです。

高知 宿毛 市役所前に給水車 多くの人が訪れる

宿毛市では各地で水道管が破裂する被害が出て一時、断水したほか、現在も水が濁っている状態が続いています。このため、市役所前の駐車場に給水車3台が設置され、高知市水道局や国土交通省などの職員が対応にあたり、午後5時の時点で30組余りが給水に訪れたということです。給水車の設置は夕方以降も続けるということです。

およそ40リットルの水を給水したビジネスホテルの従業員は「ホテルではまだ水の濁りが続いています。宿泊客が10人ほどいるので、給水した水は調理や食器洗いなどに使おうと思います」と話していました。

愛媛 伊方原発 発電機の出力約2%低下も運転に影響なし

四国電力によりますと、震度4の揺れを観測した愛媛県伊方町にある伊方原子力発電所では、運転中の3号機で、放射性物質を含まない蒸気を水に変えて集めるタンクの水位を制御する設備がバックアップ用の系統に切り替わった影響で、発電機の出力がおよそ2%低下しているものの運転に影響はないということです。

また、昨夜から廃炉作業中の1号機と2号機を含め点検した結果、このほかの設備には異常がないことが確認されたということです。

高知 宿毛市 全10か所の避難所を閉鎖(8:10)

高知県宿毛市は、市内に開設していた避難所10か所すべてを午前8時10分に閉鎖しました。

愛媛 避難所はすべて閉鎖(午前8時)

愛媛県などによりますと、地震の影響で県内で開設されていた鬼北町と大洲市の指定避難所のほか、西予市の自主避難所は午前8時現在で避難者が帰宅し、すべて閉鎖されました。

愛媛 南予地方の公立小・中学校 休校や始業遅らせる措置

最大で震度6弱の揺れを観測した愛媛県南予地方の公立の小・中学校では、校舎の一部が壊れるなどの被害が出たことから、児童や生徒の安全を確保するために臨時休校や始業時間を遅らせる措置をとりました。

震度5強の揺れを観測した宇和島市では、番城小学校で校舎の貯水槽が破損して水漏れしているほか、天井の一部が破損したため18日は臨時休校にしたということです。また、下灘小学校では、校舎や通学路の安全を確認するため、始業時間を通常より1時間遅らせたということです。
宇和島市内では、通常どおり始業したものの、北灘小学校で水道の水が濁って調理場が使えず給食が提供できなくなったほか和霊小学校では地震による児童たちの心身への影響を考えて、いずれも授業を午前中で切り上げる措置をとったということです。

震度5弱を観測した西予市では、宇和中学校で始業時間を2時間遅らせる措置をとったということです。

一方、震度6弱を観測した愛南町では、通常どおり授業を行ったということです。

このほか、NHKが午後4時の時点で南予地方の市や町の教育委員会に取材したところ、西予市や八幡浜市、愛南町、内子町、鬼北町では、臨時休校などの措置をとらなかった学校でも体育館のガラスが割れるなどの被害が確認されていて、児童や生徒がけがをしないよう応急措置をとったということです。

愛媛 宇和島 小学校で天井破損や貯水槽の水漏れ 18日は休校に

震度5強を観測した愛媛県宇和島市の番城小学校では、校舎の4階の2か所で天井が破損したり校舎裏の貯水槽が壊れて水が漏れたりする被害が出ています。

小学校では、きょうの午前中から6年生が全国学力テストを受ける予定でしたが、施設の被害を受けて、すべての学年できょう、臨時休校にすることを決めました。

高知 宿毛市内すべての小中学校で臨時休校

高知県宿毛市は、17日夜の地震の影響で、18日は市内すべての小中学校あわせて12校で臨時休校にすることを決めました。

18日は、校舎内を点検して被害の確認を行うということです。

今のところ19日は、通常どおり授業を行うことにしています。

県立宿毛高校 18日は臨時休校も19日は通常どおり授業

およそ200人の生徒が通う県立宿毛高校では、17日夜の地震の影響で、1階の渡り廊下やふだん生徒が出はいりする昇降口の階段で、コンクリートの床にひびが入り一部が剥がれる被害が出ました。また、校舎の2階では天井の一部が落下したほか、柱に取り付けられた金属製のカバーが外れかけています。

18日は臨時休校にして校舎の点検を行い、1年生が18日から1泊2日で行う予定だった愛媛県大洲市での合宿も中止したということです。

県立宿毛高校の浦田賀洋校長は、「県内では宿毛市が最も強い揺れでしたが学校に大きな被害がなく安心しています。安全が確認できたのであすからは通常どおり再開します」と話していました。

“マグニチュード7程度 繰り返し発生の地域”

政府の地震調査研究推進本部によりますと、今回の震源地を含む、安芸灘から伊予灘それに豊後水道にかけての地域では、沈み込んでいるフィリピン海プレートの内部で、マグニチュード7前後の地震が繰り返し発生しているということです。

平成13年(2001年)3月に発生した「芸予地震」は瀬戸内海の安芸灘を震源として起きたマグニチュード6.7の地震で、広島県で震度6弱の揺れを、また、愛媛県や山口県などで震度5強の揺れを観測しました。

また、安芸灘では明治38年(1905年)にもマグニチュード7.2の地震が起きています。

この地域では、17世紀以降のおよそ400年間に、マグニチュード7前後の地震が7回発生していることから、地震調査研究推進本部は、マグニチュード6.7から7.4程度の地震が、およそ60年間隔で繰り返し発生しているとしています。今後30年以内の発生確率は40%程度と評価しています。

高知 長周期地震動「階級2」を観測

愛媛県と高知県で震度6弱の揺れを観測した地震で、高知県では長くゆっくりとした揺れ、長周期地震動の「階級2」を観測しました。

「階級2」の揺れを観測したのは、高知県の宿毛市と土佐清水市で4つの階級のうち上から3番目です。

また、「階級1」の揺れを高知県、愛媛県、鳥取県、熊本県、大分県、宮崎県、それに鹿児島県の各地で観測しました。

長周期地震動は、規模の大きな地震で発生する周期が2秒を超えるような大きくゆっくりとした揺れで、特に高層ビルなどで影響が出ます。

気象庁は「階級2」は室内で大きな揺れを感じ、物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じるとしています。

夜間の地震 注意点

震度6弱や5強の強い揺れを観測した地域では、建物の中や周辺で被害が起きている可能性があります。暗い時間帯で周囲の状況がわかりにくくなっているため、思わぬけがをするおそれがあります。無理に移動したり作業したりはせず、片づけは明るくなってから行うなど、安全に気をつけてください。

【家具の倒壊に注意】
気象庁によりますと、震度6弱の強い揺れでは屋内では固定していない家具の大半が移動して倒れるものがあるほか、ドアが開かなくなることもあります。また、屋外では、壁のタイルや窓ガラスが破損し、落下することがあるということです。不安な場合は、自治体が開設する避難所や近くの頑丈な建物で過ごしてください。周囲が暗く、状況が把握しにくいため、移動する際にはほかの建物やブロック塀などに注意してください。

【夜間の片づけは危険】
地震の影響で、停電が発生しているおそれもあります。暗い中での片づけは、割れた食器やガラスなどでけがをする危険があります。今後も地震が発生する可能性があり、急いで片づけをする必要はありません。また、停電中に室内を歩くときは懐中電灯などを使い、スリッパや靴をはくようにしてください。また、自宅で睡眠をとる方は、ものが落ちない安全な場所で過ごすようにしてください。

断水時の注意点

地震で断水したときは、水道の元栓をすぐに閉めることが重要です。元栓を閉めることで泥や濁った水が家の水道管に入ってくるのを防ぐことができます。

過去の災害では、濁った水がトイレや給湯器の中に入って故障したケースがあります。トイレや給湯器、洗濯機の止水栓もあわせて確認し閉めるようにしてください。

また、トイレには水を流さないようにしてください。排水管が壊れると、水を流した時に汚水が逆流するおそれがあります。トイレが使えるか不安な時は、排水管に問題がないか業者やマンションの管理組合に確認するようにしてください。

揺れの大きかった地域 大雨警報の基準など引き下げ

今回の地震で揺れの大きかった愛媛県愛南町と宇和島市、それに高知県宿毛市について、気象庁は地盤が緩んでいる可能性が高く土砂災害の危険性が通常より高まっているとして、大雨注意報と大雨警報、それに土砂災害警戒情報の基準を当面引き下げると発表しました。

このうち愛南町と宿毛市は通常の7割に、宇和島市は8割にそれぞれ引き下げられ、気象庁は揺れが強かった地域では雨の降り方に十分注意するよう呼びかけています。

岸田首相「被災自治体と緊密に連携し必要な対応進める」

岸田総理大臣は衆議院本会議で「政府としてはすでに被災自治体に関係省庁の職員の派遣などを行った。引き続き緊密に連携し、必要な対応を進めていく」と述べました。

林官房長官「家屋倒壊などの被害 引き続き確認中」

林官房長官は午前の記者会見で「人的被害は愛媛県内で軽傷で救急搬送された人が6人いるという報告を受けている。また家屋倒壊などの被害は現時点で報告はなく、引き続き確認中だ」と述べました。

松本総務相「自治体と連絡取り合い復旧に全力」

松本総務大臣は衆議院総務委員会で「総務省としては地元の消防と連絡を取り合って、緊急消防援助隊の出動が必要となる場合に備えている。通信は今のところ大きな被害の報告は聞いていないが、水道などライフラインで、すでに損害が出ていると聞いている。被災自治体と連絡を取り合い、復旧を急いで進められるように全力を挙げていく」と述べました。